では、スピーチを始めます。
これは友だちのSさんから聞いた話です。
子育て中の彼女は、最近の「ほめるだけの教育法」に疑問をもっています。
「褒めるってさぁ、結局こっちが評価しているわけでしょ。『これ、いいね』って褒めるけど、それって、やっぱり上から目線よね」
言われてみればその通り。
「褒めてつかわす」というニュアンスがどうしても残ります。
「だから私は、『好き!』っていうことにしているの。子どもの絵を見て、『これいいね』じゃなくて『これ、好き!』って言う。『いい子ね』じゃなくて、『ママ、好きよ!』と言うの」
なるほど、「いいね」に比べると「好き」はもっと主観的。
上から目線よりも熱い気持ちが伝わります。
これはビジネスにも応用できそうです。
部下の上げてきた複数の企画案に対して、「こっちの方が、いいね、よくできている」と答えるのではなく、「こっちの方が、好きだなぁ。しっくりくる」みたいに答える。
ビジネスを「個人的な意見」で話すのはおすすめできませんが、時には「好き」のような愛情表現が入ってくると、組織が潤滑に回るように思えるのです。
「好き」という感情が見えることで、組織の体温が少し上がるのではないでしょうか。
詩人の谷川俊太郎さんは、好きな日本語を問われて「好き」と答え、「好き」は「愛」のもとと言っています。
ビジネス書も、「正しい」とか「データ上はこれがおすすめ」とか堅苦しい話に終始するのではなく、みんなの「好き」を集めたらこんな企画書にできあがった、というような愛にあふれたものを作る。
それがつまり「情熱の伝わる企画書」だと思うのです。
Sさんの話を聞いてから、私は会話の中に意識して「好き」を混ぜるようにしました。
Facebookで「いいね」を押す時も、「好き!」と思えるものを中心に選ぶようにしました。
たったこれだけのことですが、ちょっと恋でもしているような、素敵な気分になるものです。
世をあげてのAI時代。なんでもデータで判断される世の中です。
人間に最後に残された判断基準はきっと「好き!」という感情のモノサシにしたい。
今の時代だからこそ、大いにつかっていい。
冷たい評価の代わりに「好き!」と言いたい。
今日の言葉のちょい知恵をお試しあれ。