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女子十二楽坊、日本で9年ぶり単独公演 試練乗り越え「戻ってきた」
2003年に日本デビューを果たし、初アルバムが200万枚近くの大ヒット。さらに日本武道館の公演や紅白歌合戦の出場を果たし、一世を風靡した中国の女子楽団「女子十二楽坊」。2008年以降は日本の音楽業界から姿を消していましたが、来月から9年ぶりの日本単独公演を開催します。2008年以降、日本での公演はどうしてなくなったのか。その間の女子十二楽坊の活動は? 日本への思いも含め、団長で、自らは琵琶を演奏する石娟(シー・ジュエン)さんに聞きました。
そもそも楽団の名前「女子十二楽坊」には、どんな意味があるのでしょうか。
石さんの紹介によると、「十二」という数字は中国で縁起のよい数字です。十二カ月、十二の干支、十二の星座・・・。また中国の古典『紅楼夢』にも十二人の美女が登場したことから、十二という数字に決まりました。
「楽坊」は、唐王朝時代の王宮にあった音楽を教育する「教坊」の名にちなんだものです。
「女子十二楽坊」は2001年に北京で結成し、初期はメンバーが13人だった時期もありました(現在は12人)。道具は琵琶、笛、古箏、楊琴、二胡など、中国の民族楽器を使っています。
日本では活動を始めると、すぐに人気を獲得しました。その理由について、「『新しさ』が一つのキーワードではないか」と石さんは分析します。
伝統楽器を演奏する女子十二楽坊ですが、メロディーは現代風にアレンジされています。創立者である王暁京(ワン・シャオジン、2015年に死去)氏は、「ビジュアル系音楽」(視覚音楽)を強調したそうです。
伝統楽器は座ったまま演奏する形が一般的ですが、「女子十二楽坊」では琵琶など一部の楽器を除き、ほとんど立って演奏しています。
また10数人以上の楽団になると、指揮も必要になってきますが、「女子十二楽坊」では指揮も楽譜もなく、メンバーのチームワークで演奏をします。
こうした伝統文化と斬新なスタイルの融合は、「癒やしの音楽」として日本でもファンの心をつかみました。「疲れた時に十二楽坊の音楽を聴くと、リラックスできる」。石さんは、日本のファンからのこうした感想が印象に残っているそうです。
日本での活動を順調に続けていた女子十二楽坊。しかし2008年以降、その姿を日本でほとんど見なくなりました。その理由について、マネジメント会社の倒産を石さんは挙げました。
来日して以来、日本でマネジメントをしていたレコード会社が、多額な宣伝費用を投入したことなどによって倒産したのです。
「女子十二楽坊としてはどうしようもない事態になったので、日本での活動は中断せざるを得ませんでした」
さらに追い打ちをかけたのは、楽団の生みの親である王暁京氏の健康状態です。楽団の創立者で活動方針にも大きく関わっていた王氏の病気がこの頃から悪化。日本での活動を継続する余裕はありませんでした。
ただし、中国では活動を続けていた女子十二楽坊。王氏の死後は、石さんが演奏のリーダーと楽団のマネジメントを兼任し、女子十二楽坊の責任を背負うようになりました。
「『女子十二楽坊』は中国民族音楽の一つのシンボルであり、ブランドでもあります。私は10数年間、青春を捧げてきた深い感情を持っています。この楽坊を守っていき、伝承していきたい」と、強い決意を話す石さん。
近年は東南アジアやインドで公演する機会も増えており、来年は全米公演と、再び活動の幅を広げています。
激動の道を乗り越えてきた女子十二楽坊。この10数年間の楽団についても聞きました。
「変わったものは主にメンバーですね」と石さんが話しました。
当時のメンバーは石さんを含めて3人のみ、残りの9人は入れ替わりました。ただし、メンバーの選抜は依然として厳しいものです。
「メンバーになるには、三つの条件を揃わないといけない。『専門性』『人柄』『態度』が大事です」
メンバーのほとんどは音楽の名門大学出身。全国大会でグランプリを獲得するほどの実力者たちが、「専門性」を支えています。
専門性のほか、チームワークを大事にする「人柄」と、ポジティブで真面目な「態度」も大事だと石さんは話しました。
現在の楽団はジュニアの「練習生」も十数人抱えており、常に刺激を入れることで新たな「女子十二楽坊」を目指しています。
しかし、メンバーの入れ替わりがあっても、「音楽への態度は変わっていない」と石さんが強調しました。
今回は9年ぶりの日本単独公演。11月には東京で公演し、12月には千葉公演があります。公演では「自由」「奇跡」などヒット曲も演奏する予定です。
日中国交正常化45年という節目の年に、多くの日中友好団体での支援で開催が実現しました。
しかし、石さんは「正直に言うと、気持ちがかなり複雑です」と話します。
14年前の日本デビューを思い出し、「かつては日本で栄光を手に入れました。美しい記憶がいっぱいあります。日本のファンも中国に来て公演を応援してくれ、いつも感動をもらっています」と喜ぶ一方、当時を知らない若い人たちに受け入れてもらえるか不安もあると言います。
「今年は9年ぶりの日本単独公演です。期待・不安・興奮・感動・・・いろいろな感情が沸き上がっています。」
それでも、「私はずっと日本に『戻り』、公演を待ち望んできました」と話す石さん。最後に日本のファンにメッセージをくれました。
「いつも応援ありがとうございます。今回の公演を成功させ、来年も、再来年も、また来日して公演を開催したいです」
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