IT・科学
小池知事「核武装容認」サイトから削除? 検証ツールで確認すると…
新党「希望の党」を立ち上げた小池百合子都知事が、自らのサイトから「核武装」の容認を含む過去の主張を削除した…?! そんな情報が9月末、ネットを駆け巡りました。果たしてそれ、本当ですか? 全世界のウェブページの過去を探ることができるWayback Machineで検証しました。
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新党「希望の党」を立ち上げた小池百合子都知事が、自らのサイトから「核武装」の容認を含む過去の主張を削除した…?! そんな情報が9月末、ネットを駆け巡りました。果たしてそれ、本当ですか? 全世界のウェブページの過去を探ることができるWayback Machineで検証しました。
小池百合子・東京都知事が、希望の党の立ち上げのタイミングで、公式サイトから核武装の容認論を含む過去の主張を削除した、と先月末、ネットで話題になりました。一部ネットメディアは「選挙に向けて過去の主張をリセット」と疑い、「 #希望の党 を反原発に見せかけるため」というツイートを紹介した記事もありました。でも、そもそもこれ、本当ですか? コアなネットユーザーに人気のツール「Wayback Machine」で検証しました。
10月5日現在、確かにサイトにはほとんど情報がありません。トップページからリンクされている先はほぼ、外部サイトです。でも、「2016.10.11ホームページを公開いたしました」と書いてあります。
え、去年じゃん。「希望の党立ち上げとともに一新し、過去の主張を削除」の一部ネットメディア情報はウソでしょうか? いやいや、日付を書くだけなら後からでもできますから… まずは、小池さんのサイトの過去の姿を見てみます。
「Wayback Machine」の検索欄に、小池さんサイトのURL「https://www.yuriko.or.jp/」を入力し、「BROWSE HISTORY」(なんか格好いいですね)ボタンをクリック! すると、何やら年代ごとのグラフのようなものが出てきました。
これ、「Wayback Machine」が過去、小池さんのサイトをアーカイブした回数の1カ月ごとのグラフです。遅くとも1999年から、小池さんはサイトを持っていたようですね。さらに下にあるカレンダーで「○」の付いた日をクリックすると、その日にアーカイブされたサイトの姿が表示されます。
今年の3月14日をクリックすると…いや、今日(10月5日)とほとんど変わりません。フェイスブックの更新情報が少し、入っているだけですね。
ここで、「希望の党立ち上げとともに削除」という一部ネットメディアの情報は、間違いだと分かりました。いやはやです。
試しに昨年10月26日のアーカイブを見ると、今とは別の写真と自民党公式ページへのリンクはあるものの、ほかは今と変わりません。その前にアーカイブされた10月2日は「リニューアル中、乞うご期待」とのみ、書かれていました。
アーカイブされた日付のサイトの姿しか分かりませんが、昨年10月11日にリニューアルオープンした、という現在のサイトの記述は、「Wayback Machine」に残る記録とは矛盾していませんでした。
さて、今度は「核武装」です。本当に小池さんは昔、そんな主張を自分のサイトに載せていたのでしょうか?
ネットメディア掲載の情報によれば、これは「日本有事3つのシナリオ」と題され、雑誌掲載された小池さんの対談記事のようです。掲載は2003年3月号。では、当時の小池さんサイトに行ってみます。
今度は… あ、ありますね。「日本有事3つのシナリオ」。このリンクをクリックすると… きちんと中身が表示されます。
お、ちゃんと「核武装」語っておられました! 過去にアーカイブされたページでリンクをクリックすれば、ちゃんと当時のままのリンク先に飛べるのも、「Wayback Machine」の便利なところです。
さて、そろそろ「Wayback Machine」の操作の一挙一動をお読み頂くのは申し訳ないので、結論だけお伝えします。
この「日本有事3つのシナリオ」の掲載ページはその後、URLが多少変わりながらも存続し、最後に私が小池さんのサイト上で確認できたのは、昨年7月でした。少なくとも、その後の都知事当選、サイトのリニューアルを経て、削除されたということが分かりました。
削除の理由を聞こうとここ数日、小池さんの事務所に何度か、電話を入れたのですが、誰も出ません。と、いうわけで、「なぜ削除したのか」は聞けませんでした。
とはいえ、10月22日投開票を控えた衆院選の台風の目になっている「希望の党」代表もつとめる都知事が、1年前とはいえ、「核武装容認」を含む過去の主張をサイトから消していた、というのは気になりますよね。これだけでも議論のタネにはなりそうです。
が、その前に、「そのWayback Machineというのは、本当に信頼できるのか?」とおっしゃる方もいるかもしれません。
そこで、ネット情報の保存を社会的観点から研究する元愛知大教授、東京大学高等客員研究員の時実象一さんに伺いました。時実さんは「Wayback Machine」を運営する米国の非営利団体「Internet Archive」創設者にインタビューし、専門誌に報告するなど、このサイトにはかなり前から注目しています。
さて、信頼性はどうなのでしょうか?
「Wayback Machineは、過去のウェブページが検索できる世界で唯一のサイトです。米国ではすでに、検索した過去のサイト情報が、裁判の証拠としても使われています」
「Internet Archive」のサイト内の記述によれば、1996年の設立以来、各年代の計約3千億ページを保存してきました。
時実さんによると、データベース収容情報を都度、呼び出して作成されるページや、パスワードロックされたページ、ロボットによる情報収集を拒む設定をしているサイトを除けば、「Wayback Machine」はほぼすべてのネット情報にアクセス。ロボットとの相性で保存できてないページもありますが、Twitterなど一部を除く世界中の全ウェブ情報が、「Wayback Machine」で検索できる状況になっているそうです。
「Internet Archive」の創設者、ブリュースター・ケールさんは事業に成功し、私財を投じてこの仕組みを作りました。ケールさんは学生時代から、紀元前エジプトにあった世界の全図書を収集するアレキサンドリア図書館にあこがれ、デジタル世界に第二アレキサンドリア図書館を作りたかった、と時実さんに話したそうです。
「紙や映像の記録と違い、21世紀のネットでは、サイトを削除するだけで簡単に記録が失われてしまいます。ネット上の記録も、この時代を様々な人が生きた証しであり、失うわけにはいかないという危機感が、ケールさんにはあったようですね」と時実さんは語ります。
簡単に情報の「原本」が失われるネット時代の強い味方、「Wayback Machine」。都知事のサイトにまつわる不確実な情報も、原本で確認できました。元々はURLを入力して過去ページを検索する方法だけでしたが、最近は日本語キーワード検索も発展途上ながら、可能です。
衆院選も近づき多様な言論が飛び交う今、疑問を「Wayback Machine」で検証してみるのも面白いかもしれません。
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