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2017年10月04日

AV強要「一通の告発メール」アメとムチ 歓待後、社長と「練習」も

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昨年起きたAV出演強要被害を語る20歳の女子学生。今も平和な日常生活を取り戻せていない

昨年起きたAV出演強要被害を語る20歳の女子学生。今も平和な日常生活を取り戻せていない

 政府が取り組みを進めているAV出演強要問題。「twitterで記事を見つけ連絡しました」。同僚記者の元にそんな「一通の告発メール」が届いたのは1月のことだった。今は20歳になった女子学生は、接点を持ったプロダクションからアメとムチを巧みに使い分けられ、取り込まれていった。豪華な食事にエステというアメ、事務所での「練習」というムチ。「マインドコントロールされたみたい」になった女子学生は、複数の作品に出演せざるを得ない状況になっていったという。(朝日新聞記者・高野真吾)


20歳の女子学生が出演したDVD。現在も流通している(画像の一部を加工しています)

20歳の女子学生が出演したDVD。現在も流通している(画像の一部を加工しています)

届いたメール「逃げるも逃げられませんでした」

 記者へのメールはこんな文面で始まっていた。

「twitterで記事を見つけ連絡しました。私は現在大学1年の19歳女です。わたしも話をしたく集まりに参加させていただきたかったのですが時間と日程が合わず行くことができません」

 2017年2月、朝日新聞のニュースサイト「withnews」は、AV出演強要の被害者を支援しているNPO法人「人身取引被害者サポートセンター ライトハウス」と一緒にイベントを開催した。私たちはメディアの立場から、AV出演強要問題を報じた記事の反響などを報告した。

 そのイベントに来られないことを伝えるメールには、女子学生の生々しい体験談が記されていた。

「私は高校三年の時に(AV男優)さんのファンでした。年頃でただファンでいただけでtwitterをフォローしていました。(AV男優)さんは以前中学生と問題をおこしていたばかりでしたのでダイレクトメッセージが来た時は本人だと思っていました。しかし、内容はエッチなものでドキドキしてしまいました。ファンでしたので返信はしていました。すると個人的にあって話がしたいと(東京・山手線の主要駅名)に呼ばれました」

 「個人的に会う」。その言葉は、すぐにうそだったことがわかる。

「行った先にはもうマネージャーと(AV男優)さんがいて行く先はもう事務所になっていました。AVは見るが出る気はないとゆって(原文ママ)いましたが事務所に連れていかれ逃げるも逃げられませんでした。事務所へ着くと社長、(AV男優)、マネージャーと男三人。もう逃げられなかったのです。高校3年でまだ18でしたが、社長は卒業式がおわったらすぐに話を進めようと契約書をわたしにかかせました」

「ズルズルと辞めさせてもらえませんでした」

 事務所側の動きは強引だった。

「そこから(出演作品本数)本(初撮影の)月から(最後の撮影の)月にかけて撮りました。途中辞めたいと言ったのですがバレない。給料はみんなよりも高いなどと言葉を掛けてズルズルと辞めさせてもらえませんでした。撮る日程が決まったらキャンセルに倍の値段がかかる。そう言われてる間に撮影は決まり、お金がないためキャンセルも出来ず」

 女子学生はメールで自分の体験を世の中に広く伝えたいと訴えていた。

「連絡内容などすべて残っています。出会った女の子も残っています。この問題を取り上げ、(AV男優)やそのように騙している男を問題にするべきだと私は思います。長い文章失礼しました。よろしかったら連絡いただけると嬉しいです」

2月3日に開いたイベントでは、AV出演強要被害者でユーチューバーのくるみんアロマさんが女子大生と対談した

2月3日に開いたイベントでは、AV出演強要被害者でユーチューバーのくるみんアロマさんが女子大生と対談した

記録はA4版150ページ超に

 メールをもらった後、女子学生に連絡をとり、関東圏のある街で2回、合計7時間程度、話を聞いた。

 記憶は鮮明だった。女子学生がファンだったAV男優、所属したプロダクションの社長とマネジャー役をしていた男性2人とのLINEの記録も全て残っていた。

 その記録を送ってもらい印字すると、A4版で150ページを超す文書となった。関係者と写った写真も共有した。出演した作品のDVDは全て、AVメーカーなどでつくる知的財産振興協会(IPPA)とつながりのある審査団体の「審査済証」を得て、流通、販売されていた。

A4版で150ページ超になった関係者とのLINEなどの記録(画像の一部を加工しています)

A4版で150ページ超になった関係者とのLINEなどの記録(画像の一部を加工しています)

AV男優に連れられ、いきなり事務所へ

 女子学生は高校生時代、BSの番組に出演経験がある30代のAV男優のツイッターをフォローしていた。

 「芸能人みたいな感じでファンになり、本当に好きだった」

 高校3年生だった2016年2月からツイッターのダイレクトメッセージを交わすようになり、2016年3月1日からLINEにやりとりが移行した。

 男優は「AVわ興味ありだよね?」と撮影に誘うような文句も送ってきた。女子学生はAVには出たくなかったが、男優と会いたいという気持ちもあり、「知り合いに見られたらなぁって」「母親が知ったら、悲しむかなって」とやんわりと断っていた。

 男優はどんどん面会日時を決めていき、2016年3月4日に都内主要駅で待ち合わせることになった。当日会うと、男優は女子学生の肩を抱き、一緒に来ていた若い男性を従え、すぐに駅近くの雑居ビルに向かった。そこには多数のAV女優が在籍するプロダクション社長が待ち構えていた。

「ちょっと待って下さいと言える感じでなかった」

 事務所の面談ブースに座ると、男優は女子学生の手を握ってきた。男優と会えたうれしさと急な展開についていけない混乱の中、社長と男優がAV出演に向けた話を進めていった。

 「バイトしてるの?AVの方が稼げるよ」「ばれる? プロがメイクして、プロが写真を撮るから別人になるよ」「AVに出れば、もっと明るくきれいになれるよ」「とりあえず登録だけしておきなよ」
 
 女子学生によると、その場の雰囲気は「ちょっと待って下さいと言える感じではなかった」という。仮に席を立ったとしても、「『落ち着いて、落ち着いて』と言われ、逃げられはしない」と振り返る。

 仮に男優、社長、駅に来ていた若い男性マネジャーが「怖い人」だったら、「『話がちげえじゃねえかよ』とすごまれることになるのでは…」と内心でおびえていた。

女子学生は事務所で男優とツーショットの写真を撮った。この時点では、男優を「騙している男」とは認識していなかったという(画像の一部を加工しています)

女子学生は事務所で男優とツーショットの写真を撮った。この時点では、男優を「騙している男」とは認識していなかったという(画像の一部を加工しています)

「ダメもとでいい」まだ逃れられる

 社長に全裸の写真を撮られた。免許証のコピーで本名と住所を知られた。プロダクションへ所属契約するしかなく、契約書には親の職場の名前も書いたと記憶している。

 撮影が決まってから出演のキャンセルをすると、違約金が発生するとの説明も受けた。

 AV女優名のツイッターアカウントもつくらされた。わずか30分ほどの間に全てが進んでいった。翌日には「平成10年生まれの新人ちゃんです!本日誕生日で解禁になりましたのでツイッター始めました」とプロダクションのツイッターで彼女のアカウントが告知された。

 この時点ではAV出演を逃れられると考えていた。男性マネジャーからは「やりたくないなら、やらなくていいから」と言われたこともあったからだ。また、「ダメもとでいいからメーカーの面接に行ってみよう」と話されていて、面接に落ちると考えていた。

うなぎ、しゃぶしゃぶ、海鮮、温泉・・・毒アメ次々

 初撮影前の「新人ちゃん」を逃すまいと、プロダクション社長らは、連日のように女子学生にアメを用意した。

 2016年3月4日の契約後にナポリタンがおいしい店に連れていっただけでなく、うなぎや高級ホテルでのビュッフェをごちそうされ、4月8日には牛肉とカニのしゃぶしゃぶを振る舞われた。この時、社長は「お酒飲むでしょ。頼みなよ」と当時は未成年だった女子学生に飲酒を勧めた。女子学生はハイボールを飲んだ。
 
 さらに3月と4月に2回ずつ、社長が知っている針治療のお店にも連れていかれた。一時的だが肌がきれいになった。4月2日は都内のスパに行き、23日には静岡・沼津への日帰りドライブツアーまで用意された。海鮮と温泉を楽しむためだ。

 全てプロダクションのおごりだった。本名や実家などの個人情報を握られていることから、むげに断れなかった。おごられる度に「AVに出ないと言ったら、ご飯代や針治療代、温泉代などを請求されるのではないか」と精神的に追い込まれていった。単なるアメでなく「毒アメ」だった。

女子学生はプロダクション社長と静岡・沼津へドライブに行ったこともあった ※写真と記事は直接、関係ありません

女子学生はプロダクション社長と静岡・沼津へドライブに行ったこともあった ※写真と記事は直接、関係ありません

出典:https://pixta.jp/

社長と「練習」も

 露骨なムチは、プロダクションに所属した1週間後にあった「練習」だった。

 2016年3月4日に初めてプロダクションに行った時、社長は「そのうち楽しいことを教えてあげる」と言った。

 約束していた3月11日に事務所に向かうと、社長のほか、事務所に出入りする関係者の男性が1人いた。この男性が所持している性的な道具をプロダクションが借りている別室で見せてもらうことになった。その部屋に行くと、同じような道具や多数の衣装が並んでいた。

 社長はいきなり、「1回、やってみよう」と言い始めた。「人に見せるなんて恥ずかしい」と女子学生は断ったが、社長は「やれば楽しさが分かるよ」「みんなやっていることだから」と引き下がらない。別の男性がいたこともあり、社長に恥をかかせられないとも考えた。1時間程度、その部屋で「練習」をした。

 当時は分からなかったが、社長は人前での「行為」に慣れさせる意図があったのだと、今では思っている。また、女子学生がどれほど押しに弱いか、従順な性格なのかを見極めようとしていたと考えている。

実家把握され、プレッシャーに

 別の形のムチもあった。沼津への海鮮と温泉ツアーは、社長が運転する車で向かった。帰りに社長は女子学生が住む関東圏の実家まで送ると言った。社長は彼女の実家をみると「家、大きいじゃん。金持ちなんだね」「せっかくだから、お母さんに会いたいな」などと話してきた。

 女子学生はプロダクションと接点を持ったことを両親に知られたくなかった。実家の場所を正確に把握されたことは、女子学生にとって大きなプレッシャーになった。社長らの指示に従わないと、彼らは実家に押しかけてくると強く意識するようになった。
 
 社長らは言葉巧みで、女子学生は「マインドコントロールされたみたい」になった。「言うことをきかないと、マイナスなことが生じ、家族にまで及ぶのではないか」。こう考えるようになった。2016年5月から始まった撮影を拒否し、関係を断ち切って逃げることはできなくなっていった。

女子学生がAV男優に連れて行かれた事務所の玄関。プロダクション社長は「この部屋で女子学生と面会した」と認めた(画像の一部を加工しています)

女子学生がAV男優に連れて行かれた事務所の玄関。プロダクション社長は「この部屋で女子学生と面会した」と認めた(画像の一部を加工しています)

プロダクション側の見解

 女子学生の「告発」について、プロダクションの社長、マネジャーに話を聞いた。

――プロダクションに所属するまでの経緯は?

社長「AVに興味があるということで来ました」

マネジャー「僕が男優さんと仲良くて、その方から紹介を受け、本人が興味があるということで、事務所に来た。年齢も18歳以上であると確認して(連れてきた)」


――AV出演の意思確認は?

マネジャー「喫茶店かどこかで話をしましたね。場所までは分からないのですけど、(プロダクションがある都内主要駅)西口のどこかの喫茶店で、(女子学生、マネジャー、男優の)3人で話しました。喫茶店名は覚えてないですね。結構、モデルさんはいっぱいいますし」


――プロダクションに所属するには契約をするはずだが

社長「それは全部、彼(マネジャー役)が(契約書を)読ませて、そういうことですよと読ませて、納得してもらって書いたと思います」

マネジャー「(出演する作品を撮る)メーカーの方でも、どういうメーカーか話を聞き、本人たちもAVというのを承知しているという契約書と、内容の細かい部分の再度の確認しています」


――女子学生とトラブルになったことは

マネジャー「出演に対しては前向きで、僕の方にも仕事を欲しいと言われていたので、営業をして、仕事を取ってきていた。最後は、いきなりころっと、辞めますということになった」

社長「あれぐらいノリノリで来ている子が、そんな風になるとは思えない」


――2016年4月、女子学生と食事に行きましたか?

社長「日にちは覚えていませんが、連れて行ったことはたぶんあると思います。はい」


――その時に女子学生はお酒を勧められたと言っています。当時は未成年です。

社長「僕はお酒を飲みませんから。何(のお酒)を(女子学生が)頼んだかは、覚えていませんよ。ただ、僕がお酒を飲めとはいいませんよ。好きなものを頼みなさいとはいいますけど」


――女子学生はマネジャーにLINEで騙されたと伝えています。

マネジャー「一番終盤ですよね。辞めてから、がーっと来ましたけど。がーっと言ったのは一番終盤じゃないですか。逆にそれで騙されたと言われても、困るのですけど」

社長「撮影するまでは、結構な時間空いたと思いますよ。どのぐらい空いたかは覚えていないのですけど。その間、考える時間はあると思いますし、辞めるのは自由だし、やりたくない子を撮れるわけない」

女子学生の反論

 プロダクション側の見解について、再び女子学生に聞いた。

――出演までの経緯について

「男優、マネジャーと駅で待ち合わせ、そのまま事務所に行きました。途中、喫茶店に寄ったということは絶対にありません。ファンだった男優と会えて、うれしい思いは強く持っていました。一方で、内心では怖かったです。もう逃げられないと、話をあわせるしかありませんでした」


――食事について

「社長はお酒を飲む人です。2016年4月時点では、私は未成年でしたが、勧められて『ハイボール』を飲みました」

情報提供、お待ちしています

     ◇

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