マンボウを探して
マンボウを中身まで知りたい! 動物研究部・脊椎動物研究グループの研究主幹、篠原現人先生に、マンボウの骨格の謎について伺いました。

日本や世界の幅広い地域に生息しており、水族館でも人気の魚なのですが、食べることもできます。以前、三重県の道の駅でマンボウの串焼きを食べたことがあるのですが、白身魚より弾力があって、鶏肉に近い感じがしました。
衝撃の骨格はこちら

いわゆる一般的な魚が持つ、後方に長細く伸びた「尾びれ」がないことも、不思議さをふくらまします。
一体どうしてこんな姿になったのでしょうか。
マンボウの進化、フグから影響
マンボウはマンボウ科マンボウ属と紹介しましたが、これは「フグ目」という上位の分類単位に属しています。マンボウは実はフグの仲間で、その中でも進化している魚なのです。
簡単にいうとマンボウは「進化したフグ」。マンボウの骨格は、祖先であるフグの進化に大きく影響を受けていました。

体の小さな魚は、口の大きな魚に「丸のみ」という形で捕食されてしまいます。
丸のみされないために、フグは捕食者の口よりも大きくなれるように進化を遂げます。そう、水を吸い込んで自分の体をふくらます能力を得たのです。
この時、ポイントになるのは骨です。骨があるとふくらむ時に邪魔なため、フグには腹びれやそれを支える骨など、お腹まわりには骨がありません。

マンボウのお腹には内臓、背中には筋肉が詰まっているのですが、骨がないとその部位がなんだか弱そうです。
「マンボウは皮膚が強くはありません。特別硬いウロコやトゲなど、武器を持っている訳ではないので、かじられたりするのには弱いかもしれません。ただし、生き残るため、丸のみされないように進化したことの方が重要だとみています」
マンボウの骨格「かなり変わっている」
いわゆる普通の魚は尾びれの付け根をくねらせることで泳ぎますが、マンボウの祖先にあたるフグは、尾びれだけではなく、背びれと臀(しり)びれも使って泳ぐことができます。これらのひれを使って、ヘリコプターのホバリングのように、方向転換ができるようになりました。
マンボウで、尾びれのように見える部分は「舵(かじ)びれ」と呼ばれ、最近の研究で、背びれと臀びれが延長した構造であることがわかってきたそうです。マンボウが前に進むために使っているのは背びれと臀びれで、「舵びれ」は方向転換するために使用します。

言えることは、背びれと臀びれで泳げるのはフグの子孫ゆえ。篠原先生は「尾びれがなくなっても泳ぐことができる、という進化を遂げたと考えた方が自然」と話します。

ジャンプする理由も…
マンボウと言えば、海面からジャンプするという特技を持つことが有名です。体の寄生虫を落とすためという見方が強いそうですが、ジャンプする理由はよくわかっていません。
今年7月には、日本とオーストラリアなどの国際共同研究チームによって新種のマンボウが発見されました。DNA分析で新種の存在が示唆されていたものの、実物を探し出すのにおよそ10年かかったそうです。
見た目と中身にギャップがあるマンボウですが、より進化した魚だったとは驚きでした。謎の多い生き物の世界、更なる発見が楽しみです。