話題
東大に留学「中国人エリート」が見た日本 学食に絶句…恋愛に驚き
中国のエリート大学、北京大から東京大に来た留学生。なぜ日本を選び、キャンパスではどんなことを感じているのでしょう? 社会人の学生の多さに驚き、恋愛を隠す学生を不思議に思う日々。そして学食は「圧倒的に北京大がうまい」。中国人エリートが見た東大について聞きました。
話を聞いたのは、呉さん(24歳=新疆ウイグル自治区出身)と蘇さん(24歳=天津出身)です。
呉さんは北京大の新聞学院(ジャーナリズム・スクール)で広告学を学び、現在は東大の新領域創成科学研究科・国際協力学専攻の修士課程にいます。
蘇さんは北京大で薬学を勉強し修士の学位を取り、現在は東大の薬学系研究科の博士課程にいます。
中国のエリート校である北京大。人気の留学先はアメリカです。そんな中、2人はなぜ日本を選んだのでしょう?
呉さんは、中学校の時から日本が好きで、『ドラゴン桜』『ごくせん』などのTVドラマに親しんできたそうです。
北京大に入ると日本語の授業を選択科目で履修。中国にいる間に日本語能力検定で最も難しい「N1」にも合格しました。そんなつながりから、留学先も日本を選んだそうです。
同じく、留学前に「N1」に合格した蘇さん。薬学でもアメリカやドイツが留学先に選ばれることが多いですが、学部時代に選択科目では日本語を選択しました。
蘇さんは、学部3年生の時、大学のプログラムで、アメリカのバークリー大学のサマースクールに参加しました。しかし「想像したものと違いました」。文化の違いを感じ、孤独感にも包まれたそうです。
一方、学部4年生の夏休みに日本に旅行をした時は「コンビ二」や「鉄道」などに触れ、日本の文化や生活の便利さなどに感心したそうです。
この時の経験から、日本が大好きになり、東大留学を決めたそうです。
二人は、東大と北京大には共通点が多いと言います。
まず、その歴史。東大の本郷キャンパスの敷地はかつて加賀前田藩の上屋敷でした。東大のシンボルである「赤門」も前田家に将軍家の溶姫が嫁ぐ時に使われた門です。
北京大の敷地の一部もかつては「王府」と呼ばれた王族の邸宅でした。東大と同じくシンボルの門があります。「西の門」は北京大の前身である「燕京大学」の正門で、頤和園の正門である「東宮門」を彷彿させます。門の前に鎮座する二頭の石獅子はかつての王朝の栄光を今に伝えています。
また、両大学とも名物の池(湖)があります。東大は夏目漱石の小説でも有名な「三四郎池」。北京大には中国の歴史学者・銭穆が命名した「未名湖」があり、湖畔の博雅塔と一緒に北京大の名物になっています。
人気の観光スポットになっている点でも共通しています。キャンパス内には、散歩を楽しむ人、絵を描いている人を多く見かけます。
学生の雰囲気はどうなのでしょう?
まず、北京大は「キャンパス=生活そのもの」という特徴があります。ほとんどの学生が寮に住んでいて、大学で過ごす時間が長いのが特徴です。
そのため、学生同士のカップルが生まれやすくなるそうです。キャンパス内では手をつないで歩く光景が日常茶飯事です。午後11時の寮の門限が近づくと、女子寮の下で抱き合うカップルが続出し、寮母が「帰寮」させる風景をよく見ます。
一方、東大では「ほとんどカップルは見なくて驚いた」(呉さん)そうです。
学生同士でカップルになったとしても「秘密主義」だと言います。
呉さんは、大学院の先輩が卒業の際にカップルだったという話を聞き、「しかし普段は全く気付きませんでした」と話しました。
蘇さんも「『地下恋愛事情』が多いですね。日本人の控えめな性格とも関連していると思いますが、ほかの人に迷惑をかけたくないことが理由なのでしょうか」と話します。
学食にも違いがあるようです。
「キャンパス=生活そのもの」という北京大は、東大よりも学食のメニューが圧倒的に多く、おいしいそうです。
東大の学食が日替わりの定食とカレーやラーメンなど「定番もの」だけなのが多いのに対して、北京大は中華料理のほか、「マーラー火鍋」や「刀削麺」から「ザリガニ料理」まで用意されています。イスラム教徒の教師や学生のための、ハラール食堂(清真食堂)もあります。
学食やカップルで違いがある両大学。北京大は「衣食住がすべてそろっている状態。大学自体が一つの生態系です」(蘇さん)。これは北京大だけでなく中国の大学全般に共通しており、教室だけでなく、寮での生活、娯楽まですべてが大学内で完結しています。
一方、東大の特に本郷キャンパスは「いかにも研究という雰囲気」(呉さん)。「北京大には多い自転車に乗る人も少なく、とにかく物静かな感じです」と蘇さんは言います。
現在、大学院に通う2人。東大の大学院には社会人が多いことに驚いたそうです。
呉さんは「日本には、仕事をしならがらも、問題意識を持って大学院に通い研究する社会人がいます。中国では、まだ就職のために大学院に行く人が多いですね」と話します。
蘇さんは、教授がベテランになっても自分で実験をするなど、研究の第一線にいることに驚いたそうです。
「私の指導教員の教授も研究が好きで、ほかのことには無欲無求という感じです。もう60歳近いですが、現在も気になるところがあれば、自分でよく実験をします。北京大の教授で同じくらいの年齢になると、管理職という役割が大きくなって、実験などをする時間はないでしょう……」
「いくつになっても純粋に研究ができることが素晴らしいです」
呉さんは、日本かヨーロッパでの就職を考えています。「でも一番やりたいのは新疆料理のレストランかも(笑)」
蘇さんは、国際交流に興味があるそうで「日本と中国の間の『紐帯(ちゅうたい)』になりそうな仕事をしたいです」と話してくれました。
1/9枚