コラム
疲弊する「イクメン」が増えて… 〝30秒で泣ける漫画〟の作者が描く
漫画家・吉谷光平さんが「パタニティーブルー」について描きました。

「パタニティーブルー」を知っていますか? ツイッターに投稿した漫画「男ってやつは」が〝30秒で泣ける〟と話題になった漫画家・吉谷光平さんが描きました。


長男が0歳のころ、東京都北区の会社員男性の携帯には、仕事中に妻から電話やメールが来た。実家が遠く、ママ友もいない妻が頼れるのは自分だけ。産後うつを疑った。
職場で相談しても「子どもが小さいうちはみんな大変」と受け流された。日々膨大な仕事をこなし、毎日、終電で帰宅。妻の悩みや不満を聞き、洗濯や皿洗いもして、翌朝6時に起きる毎日。「自分もうつになりそうだった。今思えば、夫婦共にいっぱいいっぱいだったんです」

国立成育医療研究センターなどの16年の研究でも、父親215人の16.7%に、生後3カ月までに少なくとも一度はうつのリスクが見られた。こうした父親は、そうでない父親に比べ、「大声でしかる」など、赤ちゃんへの接し方が悪くなるリスクが4.6倍あった。
センターの竹原健二・政策開発研究室長は「男性も子育てしようという意識が高まったのに、長時間労働で実際には育児をするゆとりがないことも父親のストレスを高めているのではないか」と指摘。「長時間労働を社会全体でなくし、夫婦でゆとりを持って子育てを出来るようにする必要がある」

娘が1歳のころ、一日中、一人きりで娘の相手をし、隙間時間に仕事をする生活にストレスがたまった。実家は遠く、パパ友はいない。気持ちをはき出せる相手は妻だけだが、当時は妻も仕事で疲れ切っていて、言い出せなかった。夫婦の会話は減り、「この日は出かける」などの「業務連絡」が中心に。男性は次第に、娘が泣いても放っておく時間が増え、「虐待する人の気持ちがわかった」という。一時は薬も飲んだ。
変わったきっかけは、妻が数日間の休みを取り、お互いの状況や気持ちをゆっくりと伝えあえたこと。「大変やったなあ」。妻の一言に、気持ちがすっと軽くなった。「一番近い人が、自分の状況を分かってくれているという実感が、夫にも妻にも大切だと思います」

【よしたに・こうへい】 漫画家。サラリーマン生活や漫画家アシスタントなどを経て、月刊スピリッツの「サカナマン」でデビュー。漫画アクションで「あきたこまちにひとめぼれ」を連載中、月刊ヤングマガジンの連載「ナナメにナナミちゃん」の単行本1巻が発売中。ツイッターで公開した2ページ5コマの漫画「男ってやつは」が〝30秒で泣ける〟と話題に。