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ベトナムの「ドラえもん」キャラまん、ジャイアンだけで2種類も…
ファミリーマートがベトナムだけで展開する、「ドラえもん」のキャラクターの中華まんがあります。これまでの2年あまりで16種類が売り出されてきました。あれ、ドラえもんのキャラクターって16もあったっけ? 実はかなりの脇役もラインアップに入っているんです。さて、8月29日に発売された新商品は?(朝日新聞ハノイ支局長・鈴木暁子)
「ドラえもんまん」は2015年4月から、ほぼ1~3カ月の間隔で新しい商品が世に出されてきました。
最初はもちろんドラえもん。その後はジャイアン、ドラミ、スネ夫と主要キャラクターから売り出され、のび太のママ、パパ、ジャイ子と続いていきました。現地の報道によると、順番は以下の通り。
ここまで、ドラえもんと並ぶ主人公格、のび太はナシ。先生出てるのに。
そして年が明け、2017年になります。「いよいよ次はのび太が来るか」と、ベトナムのドラえもんファンは正座待機。ところが3月に発売されたのはなんと、「きれいなジャイアン」でした。
これは、金と銀のオノが出てくるイソップ物語をモチーフにした「きこりの泉」というお話にでてくる、泉に落ちてハンサムになったジャイアン。意外なチョイスに愛好家たちは騒然となりました。
しかし、ドラえもんをよく知らない人はついていけないのでは?
ファミリーマートベトナムの商品・マーケティング部長、山内弘久さんに聞くと、「キャラクターものが少なかったベトナムではドラえもんが広く浸透していて、どの登場人物も多くの人がよく知っているんです」と自信まんまんでした。
ちなみにチョコレート味。あんがいスタンダードです。
「きれいなジャイアン」の次、2017年5月に売り出されたのは、出木杉くん。のび太より先に、しずかちゃんを巡る恋のライバルが先に登場してしまいました。カスタード味。
そして、ついに8月1日、「のび太まん」が発売されました。のび太の誕生日(8月7日)にあわせたという粋なはからい。
味はバナナクリーム。山内さんによると、ベトナムではバナナを食べると「試験にすべる」と信じられており、「成績の悪いのび太くんにぴったり」とオチも完璧です。
よっしゃ食べるぜと気合いを入れたんですが、私が住む首都ハノイには、ファミマがなーい!
コンビニはベトナムでも珍しくありません。ファミマの他にミニストップ、サークルKなどがあり、この6月にはセブンイレブンがホーチミンに初出店しました。
ただ、賃料が高いこともあり、コンビニはまだ利益があげにくいようです。物をかごにいれて売り歩いている女性たちもたくさんおり、歩くコンビニのような役割を果たしています。
ファミマは2013年からベトナム南部で店舗を積極的に展開しており、ホーチミン市、ビンズオン省、ブンタウ省に計約140店があるそうです。が、ハノイなど北部にはありません。
ハノイからホーチミンまでは直線距離で1100キロあまり。札幌-大阪間(約1068キロ)より遠く、飛行機で約2時間かかります。行けない間に、「のび太まん」はわずか1週間で完売してしまいました。
次はかならずと誓った直後、今度は8月29日に、16種類目となる新商品が発売されると言います。
私は売り出し当日、朝6時起きでハノイをたち、飛行機でホーチミンへ駆けつけました。
ファミマのレジ脇のケースでほかほかに温められていた新商品は、どうやら黄色いキャラクターのもよう。むむ、ドラミちゃんはもう発売済みでは?
なんと黄色いドラえもん。しかも耳がある!
保温器の上にベトナム語で、こう紹介されていました。
「ドラえもんといえば青いイメージがありますね。多くの人は知りませんが、彼がロボット工場で生まれたとき、全身に金のめっきが施されていたのです。ねずみにかじられた悲しみから、三日三晩泣き続け、めっきが全部はげおちてしまい、青くなってしまいました」
そうなんだ! ……勉強になります。
この「ドラえもんはもともと黄色で、耳もあった」という姿の由来については諸説あるようですが、ファミマの中華まんは、9月3日のドラえもんの誕生日を祝おうと、ケーキ代わりに打ち出した商品だということでした。
店内で眺めていると、13歳の少女が一つ買い、立ったまま、黙々とちぎって食べています。続いて購入したのは大学生のハオさん(19)。別のキャラクターの中華まんも食べたことのあるリピーターです。「ドラえもんは青のほうが好きです。でもおいしいです」。
店員のフオンさん(24)は、「特に人気があったのはドラえもん、のび太、しずか(ちゃん)でした」。あら、やはり人気なのは王道キャラのようです。黄色いドラえもんというキャラクターについては、「うーん、ほとんどの人が知らないと思います」
1個13000ドン(約62円)。わたしも食べてみました。
日本のコンビニのあんまんより、ひと回り小さめ。かじると、皮はふわふわ。中のカスタードチーズクリームは甘みが強すぎず、ベトナムではなかなか手に入らない日本のクリームパンのような味わい。
ドラえもんの中華まんシリーズを発売するきっかけをつくったのは、現在マレーシアでファミリーマート事業に関わる菊川昌彦さん。
昔はベトナムで朝食によく食べられていた中華まんが、街角から姿を消しつつあることに気がつき、「中華まん文化をベトナムに残そう」と着手したのだそうです。
ドラえもんは他の東南アジアの国でも人気ですが、キャラを中華まんで精巧につくるには技術が必要で、ファミマ関係者は「他の国では絶対できません」。
私にとってドラえもんと言えば、ありがちなのですが、コミック第6巻の「さようならドラえもん」です。
埼玉・浦和の祖父母の家になぜかこの第6巻だけがあり、行くたびに読んでいました。ドラえもんが安心していなくなれるように、のび太ががんばってジャイアンに立ち向かい、それに胸を打たれたドラえもんが川のような涙を流して寝顔をみている。この場面を思い出すだけで泣けてきます。ベトナムの書店にもベトナム語版が置いてあります。
ドラえもん中華まんのネタが尽きる前に……この「川のような涙ドラえもん」中華まん(塩味)をぜひ売り出していただきたい、というのが私の希望です。
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