では、スピーチをはじめます。
今日は「バカー!ハゲー!」という罵詈雑言について。
テレビで連日流したおかげで、すっかり有名になった罵詈雑言。
この言葉に関して、「あまりにお下劣。品性のかけらもない」と切り捨てる人が大半ですが、中には、「ミスする方も悪い」「私も心の中でいつも叫んでいる」「あんなの甘い、甘い」と密かに支持する人も多いようです。
人間、いつも聖人君子ではいられません。
ストレスが溜まれば自分の一線を超えて、罵詈雑言を叫びたくなるものです。
少し時代をさかのぼれば「ケンカは、江戸の華」。
市中のあちこちで、「おとといきやがれ」だの「すっとこどっこい」だのやっていたわけですね。
しかし、ここには一定のルールがありました。
口ゲンカを始めたら、ケンカの内容には触れない。
いや、むしろ声を荒らげてケンカをするときには、勝敗がついていて、あとはお互い丸く収めるために声を荒らげているようなものでした。
「なんだとは、なんだ、このやろう!」
「おまえが、なんだって言うから、俺もなんだっていってやったんだ、このすっとこどっこいが!」
「なんだと、このとーへんぼく!」と全く内容がない。
こうなるとどこか楽しそうなので、周囲に人が集ってくる。
江戸の昔、ケンカは庶民のエンターテイメントだったんですね。
罵倒は、罵倒にあらず。
罵倒は、話芸。
これを心得ていれば、声を荒らげたところで、人を大して傷つけない。
周囲を笑いのうずに巻き込む口ゲンカができれば、あなたはむしろ尊敬されるかもしれません。
しかしこの話芸を身につけるには、相当の修行と相手をおもんばかる器量が必要なのは容易に想像つくでしょう。
罵倒は話芸と心得る。
どこにマイクが仕込まれているかわからない時代の「ちょい知恵」です。
お試しなきように。