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【動画】逃げられない!箸がバキバキ、悪魔的設計の装置ができたワケ

ベルトへの巻き込まれ事故を疑似体感する装置=明電舎提供
ベルトへの巻き込まれ事故を疑似体感する装置=明電舎提供

目次

 回転するベルトと円盤に割り箸が挟まれると、引き抜くことができずバキバキに――。労災事故を疑似体感できる装置が、「悪魔的設計」とツイートされ話題です。年間約11万人の死傷者が出ている労働災害。防ぐためには、一人一人の安全意識が大切ですが、こうした事故を疑似体感することによって、意識を高めようという取り組みがあります。

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東大の稲見昌彦教授がツイッターに投稿した動画 出典: 稲見昌彦教授のツイッター

「本当に逃げられない」「悪魔的設計」

 話題のツイートは、「はこだて国際科学祭」(北海道函館市などが会場)で20日に展示された「回転体巻き込まれ体感装置」を紹介したものです。電気機器メーカーの明電舎(本社・東京)が企画した安全体感教育の一つ。実験に使われた大小二つの円盤(プーリー)にベルトをかけた仕組み自体は、様々な設備に組み込まれています。


 円盤やベルトは高速で回転しているので、手で触るのはもちろん危険です。どれほど危ないのかを、この装置で体感することができます。

 「本当に逃げられない」とつぶやかれた動画では、保護パネルの穴に割り箸を入れると、あっという間にベルトと円盤の間に巻き込まれ、そのままぐしゃり。投稿した東京大先端科学技術研究センターの稲見昌彦教授(人間拡張工学)は「数千人体験して割り箸生還率ゼロという悪魔的設計。みんなバキバキに粉砕されます」と伝え、動画は15万回再生されています。


「痛い思い」を疑似体感

 この装置を開発したのは、愛知県豊川市のアジアクリエイト社。工場の生産ラインなどを製作するのが本業ですが、こうした体感装置を50種類以上手がけています。「『痛い思い』をしないと伝わらない部分を、疑似体感してもらうのが目的」と担当者は話します。

巻き込まれの衝撃を動画で説明 出典: アジアクリエイト社のホームページ

 元々は2005年、取引先のメーカーから「社員の安全教育のために、事故を体感できる装置を作ってほしい」と依頼されたことがきっかけでした。今回の巻き込まれ装置など数種類を製作したところ、評判が口コミで広がり、2008年ごろから本格的に製作・販売を始めたそうです。

 企業ごとの細かな注文にも対応しているため、装置の種類はどんどん増えており、これまでに約800台(今年8月時点)を製作しています。

様々な体感装置を手がけているアジアクリエイト社=同社提供
様々な体感装置を手がけているアジアクリエイト社=同社提供

疑似体感、VR技術も活用

 明電舎もその一つです。昨年12月に社外向けの安全体感教育事業を始める際に、巻き込まれ装置のほか複数の機器を導入しました。

 厚生労働省によると、労働災害による死傷者数(休業4日以上)はここ数年、11万人台を推移。明電舎では、労災がゼロにならない原因を「危険予知能力の低下」と「ヒューマンエラー」と分析し、「危険の感受性に訴える教育」として2008年から社内や協力会社で安全体感教育を行っています。

 明電舎によると、現在あるプログラムは26種類。「感電」など自社で過去に発生した労災を基にしています。「墜落」や「転落」など実際に体感できない事故も、VR技術を活用するなど工夫を凝らしています。

地上から63mのビルの足場をVRで体感=明電舎提供
地上から63mのビルの足場をVRで体感=明電舎提供
VR体感者が見ている63m上空のビルの足場=明電舎提供
VR体感者が見ている63m上空のビルの足場=明電舎提供

 今回話題になった巻き込まれ体感も「回転体に限らず、動いている機器に巻き込まれてしまうと逃げることは出来ない。だから、機器に触れる場合は必ず停止をさせてから。それを理解してもらいたい」とその狙いを説明します。

 明電舎によると、受講した作業員の中で、労災を発生させた人はこれまでいないそうです。こうした取り組みについて、稲見教授は「失敗体験は忘れがたい。それを安全に体感できるという点で意義が大きい」と評価しています。

「はこだて国際科学祭」で開いた明電舎の安全体感教育=明電舎提供
「はこだて国際科学祭」で開いた明電舎の安全体感教育=明電舎提供

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