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女子高生「くしゅくしゅ」靴下が流行 スカート丈の攻防、足長効果?
女子高生の制服コーデの定番、紺のハイソックス(紺ハイ)に変化が!? いま、全国の女子高生(JK)の間で、紺ハイをふくらはぎの下まで下げて「プチルーズソックス」状態にしてはくのが流行しているようです。さらには、こちらも定番と思われていたスクールバッグ(スクバ)に対抗する人気のアイテムも登場しています。女子高生の必須アイテムに何が起きているのでしょうか。
「紺ハイ」の変化に気付いたきっかけは、先日、朝日新聞が全国14都道府県で行った「高校生スカート丈調査」です。「女子高生がおしゃれだと思うスカート丈には地域差があるのでは」という仮説を検証するべく、全国一斉街角調査を決行しました。
その際、名古屋で調査した鈴木春香記者(27)から「自分の高校(東京郊外)では三つ折り靴下が嫌で伸ばしてはいていたのに、調査では逆に、長い靴下を短く縮めている子がいた。これは地域性?」という疑問が上がりました。
名古屋の高校生の中で、紺ハイを「くしゅくしゅ」とたるませてはく姿が見られたのです。高校生に話を聞くと、「靴下は本当は長いが、短い方がおしゃれだと思うのでくしゅくしゅと縮めている」(私立3年)という意見や、兵隊のゲートルをイメージしているのか、「ハイソックスは戦時中みたいでダサい」(私立1年)という声が出ました。
この「靴下くしゅくしゅ現象」を含む短め靴下のブームは、名古屋だけではありませんでした。北から南まで、全国の記者から報告があったのです。
1990年代のルーズソックスブーム、紺ハイの台頭、ヒザ上まで靴下がくるニーハイのブームなどを経て、今は「くしゅくしゅ」の時代なのでしょうか?
福岡・博多駅周辺で小原智恵記者(27)が目視調査した所、104人中、「くしゅくしゅ」と短い靴下の合計が82人と、「短め」が主流でした。
愛媛の堀江麻友記者(26)も「声を聞いた子はだいたいが、ハイソックスをわざわざ下げて『プチルーズソックス』のようにはいていた」といい、「私が高校生の時(三重県)は、短い靴下は足が太く見えてダサいとされていた。調査をしてスカートが長くて、靴下が短いのに衝撃を受けた」と驚きを隠しきれません。
東京・渋谷でも、「くしゅくしゅ」が「今どき」との声が。
「紺ハイを伸ばすのは恥ずかしい。1年生の時は伸ばしていた。今どきを分かっていなかった」(私立3年)、「靴下を伸ばすと優等生みたい。先輩を見て、短い方がかわいいと思った」(私立3年)。
中には、紺ハイのつま先部分をひっぱって、足の裏側に折り込んで短く見せている人も。「こうすると、穴があかないから」(私立3年)と話していました。こ、これは、おしゃれというか、しっかり者?
全国の高校生に聞いていると、「靴下を短くはくのは、先輩を見て学んだ」(愛媛・私立1年)と、先輩や周りをまねしたという声が複数あり、近年はこの「くしゅくしゅ」文化が受け継がれているようです。
スカート丈とのバランスから「くしゅくしゅ」を選んでいるという声もありました。
くしゅくしゅ靴下の秋田の生徒は「ソックスが長いとスカートとの隙間が小さくなってダサい」(公立3年)と話します。
紺ハイをくしゅくしゅにするのではなく、そもそも短い靴下をはく高校生もいました。
スカート丈調査で、全国で最もミニが多かった横浜では、「くしゅくしゅ」のほかに、くるぶしが隠れる程度の長さの靴下も多くいて、紺地にラインが入ったものや灰色の靴下の人も。
スカート丈調査で全国最長だった大阪では、「ミニスカートやったら長めの靴下でもいいけど、ひざくらいの長さやったら短い靴下やないとバランス悪いしダサい」(公立3年)という意見があり、くるぶしが見える靴下をはく人の姿もありました。
長年制服を観察している人は、こうした靴下の変化に気付いていたのでしょうか。
各地の制服をイラストにしている「さといも屋」さんに聞くと、2013年に出した同人誌「全国JK制服着こなし・萌えポイント解説」(電子書籍で販売中)の新潟の女子高生のイラストで、靴下をふくらはぎの真ん中あたりまでの短めに描いたそうです。「そのイラストに『この短い靴下、最近は他地域でも見かけるようになりました』と解説を添えた」と話し、この頃には見かけていたそうです。
ひょっとすると、靴下とスカート丈の変化が連動している可能性もあります。
スカート丈調査に参加した20代後半を中心とする記者からは「自分の頃よりスカートが長くなっている」という声が複数上がり、学生服メーカーへの取材でも最新の制服スカートは短くできないような工夫がされていることが分かりました。
福岡の小原記者は「長いスカートしかはけない中で、靴下を短くして生足を見せることで足を長く見せている?」と分析します。
ほかにも、私服でヒザが隠れる丈のスカートや、短め靴下と相性のいいスニーカー、ヒール靴に短め靴下をはくことなどが流行したのが影響しているのかもしれません。
自身が高校時代を過ごした岡山県津山市で調査した国米あなんだ記者(27)は、自身の高校時代も、くるぶしより少し長い程度の靴下や、ふくらはぎの真ん中程度までくる短めの紺の靴下がはやっていたといい、「肌の露出を増やして足を長く見せる目的だったような」と振り返ります。学生服メーカーが集中する〝制服先端地〟の岡山は、時代を先取っているのかもしれません。
もちろん、紺ハイ派がいなくなったわけではありません。
「靴下が長い方が、足が細く長く見えると思う。靴下が短いと短足に見えてしまう。絶対に長い方がいい」(群馬・私立3年)、「短い靴下はダサいのでハイソックスを選ぶ」(札幌・私立2年)という声もあり、紺ハイ派も健在です。
「長い紺ハイが好き」(東京・私立3年)と話す彼女と一緒にいた男子高生(私立3年)は「人それぞれだけど、靴下をたるましてんのは『ちょっと……』と思う」と話していました。このカップルを取材した戸田政考記者(31)は「靴下は伸ばした方がかわいく見えるのになあ」と、男子生徒の意見に賛同していました。
「足を出すのは苦手」(名古屋・私立1年)という理由でハイソックスを選ぶ高校生もいました。
また、変化しているのはスカート丈や靴下だけではありません。カバンもです。
女子高生のカバンといえば、ナイロン製や合皮のスクバと思いきや、黒いリュックのコーディネートも全国で見られました。
7月に都内であった学生服メーカー「トンボ」(岡山市)の展示会場でも、ずらりとリュックが並んでいました。
トンボ営業統括本部副本部長の恵谷栄一さん(55)によると、リュックは3~4年前から急激に人気が出たそうです。混雑した電車の中でリュックを体の前面に回して抱えることができ、背負ったまま自転車に乗れるという機能面が評価されているのだといいます。
私服でもリュックが流行していることも関係があるのかもしれません。
靴下やカバンという細かい所にも、女子高生たちのこだわりや工夫が詰まっていました。
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