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芸人・酒井藍の「後輩力」 30歳で座長「先輩を気持ちよくする」極意
吉本新喜劇に7月、初の女性座長が誕生しました。酒井藍さんです。芸歴10年、30歳での大抜擢。先輩座員が圧倒的に多い中で、座員をまとめる立場になりました。時には大先輩のセリフをカットすることも…。そんな時は「気持ちよくなっていただいてポーン」。普通の会社でも先輩が部下になるかもしれない時代。芸歴の長さがものを言う世界で「上司」になってしまった酒井さんに「後輩力」のいかし方を聞きました。
座長としての意気込みを尋ねると、真っ先に帰ってきたのが「永遠の後輩でいたい」。
「後輩って先輩から学ぶことばかりですが、一番上となると見えへんようになることがあると思うんです。だから、ずっと気持ちは後輩で。まだまだ、みなさんに教えていただきたい」
驚くほど謙虚な姿勢です。先輩に対する言葉遣いにも気を配ります。
「えらそうに言うほど、損すると思うんですよ、どの会社でも」。先輩にお願いするときに大事なのは、「気持ちよくなっていただいてポーン」だそうです。
たとえば、先輩のせりふを短くしてもらう場合。新喜劇はテレビで放映されているので、決められた放送時間内に収めなければいけません。たとえ大先輩であっても、せりふを削ってもらわないといけないことがあります。
そんな時酒井さんはこう言います。
「あのぉ、最高なんです! けど、もうちょっとだけ短くしてもらえたら……。すみません、全体的に私が長くやりすぎて」
「最高なんです」と否定をせず、むしろほめる。先輩に気持ちよくなってもらったところで、「ちょっとだけ短くしてもらえたら」と本題を「ポーン」。「全体的に私が長くやりすぎて」と、最後に自分を下げるのは酒井さんならではの謙虚さの表れ。
新喜劇の座長は、酒井さんを含めて6人います。先輩座長からアドバイスをもらいました。
川畑泰史座長は「先輩の方が多いけど、気を遣いすぎたらしんどくなる」。
小籔千豊座長からは「天狗にはならへんと思うけど、いま以上に礼儀もしっかりしないといけない」と言われたそうです。
酒井さんは保育園のころにテレビで見た吉本新喜劇に感銘を受け、新喜劇に入ることだけを目標にしてきました。座長を目指したのも、「ずっと新喜劇にいたいから」だったそうです。
でも一度だけ、夢がブレかけたときがありました。その理由は、アイドルグループ「モーニング娘。」でした。
中学生のときにオーディションを受けようとしましたが、そのころ同じ奈良出身で、名前も同じ「あい」の加護亜依さんが加入。「かぶってるやん」と諦めました。さらに、加護さんのあとに加入したのは高橋愛さん。酒井さんと同い年で、またも「あい」。「身ぐるみはがされた感じでした」
その後は新喜劇へ一直線、と思いきや、両親が反対。親を安心させるため、奈良県警橿原署の交通課で働きました。
1年半後に新喜劇が座員を募集していると父に話したところ、「まだ諦めてなかったんか! そんなに言うなら受けてみろ。絶対受からんから」。そのオーディションに合格し、2007年に入団しました。
新喜劇への愛があふれる酒井さん。小さいころ、「悲しい話やと思ってたら最後にガーンと笑う」新喜劇の奥深さに魅了されました。
いま目指すのは「あったかい、いいお話の新喜劇」。「2週間後も3週間後も頭にお話が残る新喜劇を作りたいです」
今後の酒井藍さんに注目です。
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