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バイク事故で急逝した息子へ 母が贈った石のバイク 制作者の思いは

まるで本物のバイクのようにみえる石のモニュメント。昨年まで近くの霊園で墓前に設置されていたものです。

kawasaki「ZXR」を再現した石のモニュメント。昨年まで霊園で墓前に設置されていた
kawasaki「ZXR」を再現した石のモニュメント。昨年まで霊園で墓前に設置されていた 出典: 大阪石材提供

目次

【ネットの話題、ファクトチェック】

 まるで本物のバイクのようにみえる石のモニュメント。kawasaki「ZXR」を再現したもので、その精巧さがツイッターで話題になっています。実は、このモニュメントには、大好きなバイクで事故死した息子に対する母親の思いがこめられていました。

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kawasaki「ZXR」を再現した石のモニュメント
kawasaki「ZXR」を再現した石のモニュメント 出典: 大阪石材提供

kawasaki「ZXR」を再現


 先月下旬、「近所の墓石屋が本気の出し方を間違えてます」という文言とともにツイッター投稿された1枚の画像。

 写っているのは、黒光りするバイクのモニュメントです。バイク本体は「大黒石」、ホイール部分は「中国カパオ」という石が使われています。

 ベースになっているのはkawasaki「ZXR」。ハンドルからホイール、メーター類に至るまで作り込まれていて、オリジナルのステッカーも彫って再現してあります。

 この投稿に対するリツイートは3万を超えていて、「墓石の概念を破壊してますね」「石材屋さんの気迫を感じます」といったコメントが寄せられています。

 そんな中で目にとまったのが、「この墓石は走り屋だった方の実際のお墓に使われてたモノ。墓じまいで引き上げられたハズ」というコメントでした。

ステッカーなど細部まで再現
ステッカーなど細部まで再現 出典: 大阪石材提供

現在は石材店に設置


 現在、このモニュメントは大阪石材の南大阪店(大阪府富田林市)に設置されています。

 店長の安達裕樹さん(34)に設置の経緯を聞くと、こんな答えが返ってきました。

 「こちらは20年ほど前、私どもがオーダーを受けて制作したものです。昨年まで近くの霊園で墓前に設置されていました。墓じまいされることになり、ご遺族の方とお話しした上でうちの店に展示させていただくことになりました」

 建立されたのは2000年。バイク事故で息子を亡くした母親からの相談を受け、制作したといいます。

 故人が恋人以上に大切にしていたという愛車ZXR。ハンドルやホイールなど一部のパーツをのぞき、一つの石を切り出して造形。原寸大で再現し、カスタムステッカーに至るまで彫り込んであります。

 「亡くなられた時に乗ってらっしゃったバイクで、その後、友人たちが集まって『復元するんや』と汗を流していたそうです。その思いを聞いて、バイクのお墓づくりをすることになりました」

kawasaki「ZXR」を再現した石のモニュメント
kawasaki「ZXR」を再現した石のモニュメント 出典: 大阪石材提供

図面から自分たちで


 製作するにあたって同じような例がないかを調べ、北海道に白バイ形のものがあることがわかりました。写真を取り寄せたものの、今回のバイクと白バイでは作りが異なることから、あまり参考にならなかったそうです。

 より精巧なモニュメントにするため、バイクメーカーから設計図を取り寄せようと交渉しましたが、許可が得られませんでした。

 そこで、バイクの写真を撮って、それを図面に落とし込む作業をすることに。図面制作、2分の1スケールの粘土模型製作、石の加工といった工程を経て、受注から約1年後の2000年12月に遺族に引き渡されました。

 「私どもも出来る限りの技術を駆使して制作しました」と安達さんは言います。

kawasaki「ZXR」を再現した石のモニュメント
kawasaki「ZXR」を再現した石のモニュメント 出典: 大阪石材提供

「きっと喜んでくれてるやろなぁ」


 昨年、墓じまいの相談を受け、「このまま壊してしまうのであれば、うちに置かせてください」と依頼。12月から南大阪店に展示されています。

 毎月、数人ほどのバイク好きが「見学させてください」と店を訪れます。その精巧さに感心するだけでなく、「これに乗ってた人、相当なバイク好きだったんだろうね」と故人に思いをはせている姿を見かけるそうです。

 「故人やご遺族の思いをカタチにしたい、そんな思いで制作しました。私どもの技術だけでなく、故人のことを思い浮かべている姿を見るのはうれしいです。きっと喜んでくれてるやろなぁ、と思うと、この仕事やっててよかったなと思います」。安達さんはそう話します。

 ◇ ◇ ◇

 モニュメントは自由に見学できますが、できるだけ店の営業時間内に、一声かけてからにしてほしいとのことでした。

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