IT・科学
「ハンドスピナー」どんな効果が? 脳の専門家に聞いてみた…
「ハンドスピナー」って、最近よく聞きませんか。中心部分を指ではさんで羽をはじくと、手の中でくるくるくるくる回り続けるおもちゃです。アメリカ発で、どうやら世界的にブームになっているよう。でもぶっちゃけ「ただ回るだけ」です。「何が楽しいの?」と思う人もいるんじゃないでしょうか。日本の第一人者から、脳の専門家。そしてライバルになるかもしれないペン回しの達人まで、疑問をぶつけてきました。
まずは、日本での流行にいち早く反応している人に聞きに行きました。
山本さん
今春から海外製のハンドスピナーの仕入れ、販売をしている会社経営者の山本智也さん(33)=東京都=が解説してくれました。山本さんはこの夏、ハンドスピナーについて解説した本も出版するそうです。
このおもちゃ、開発された当初はまったくヒットしませんでした。それが昨年末ごろ、アメリカで「手持ちぶさたの解消にいい」と雑誌などで取り上げられると、突然ブームになったそうです。
アメリカでは授業中にくるくる回す子どもたちが続出して「ハンドスピナー禁止」のお触れを出す学校もあるくらいの人気ぶりだとか。いまはヨーロッパやアジアにも広がっています。
日本では、人気YouTuberがハンドスピナーで遊ぶ動画を配信するなどして、5月ごろからじわじわとハマる人が増えているようです。雑貨店や家電量販店のおもちゃコーナーなどで売られ始め、インターネットの通販サイトなどでも数多くの商品が並んでいます。
でも、回している様子を見ても、「え、それだけ?」という感じじゃないですか? いったい、なにがおもしろいのでしょう。
山本さん
実際に回してみると、ひっかかりなくスーっと回転し続けます。自動車などの機械の回転部分に使われて摩擦を減らす「ベアリング」という部品が使われているため、3分以上止まらずに回るものもあるそうです。
私もひとつ、買ってみました。回してみると、回転する動きが指に伝わってきて、たしかに、なんか気持ちいい。
ひょっとして、ハンドスピナーには回したくなってしまう医学的な効果があったりするのでしょうか? それなら、ハマってしまう理由にもなるのかも。
次は、専門家に聞きました。
手の動きと脳の関係を研究している国立精神・神経医療研究センターの関和彦部長(神経生理学)によると、「『集中力が増す』『ストレス解消になる』という宣伝がされることもあるようですが、ハンドスピナーにどんな効果があるのかは、まだはっきりとはしていません」。
ハンドスピナー自体が効果をもたらすかどうかはわからないとした上で、こんな風に話してくれました。
関さん
ハンドスピナーで遊ぶことにどんな効果があるのか、なぜくるくる回るだけのおもちゃにとりこになる人がいるのか。解明が待たれます。
ところで、ハンドスピナーは「次世代ペン回し」と呼ばれてもいるそうです。たしかに、「なんとなくやってしまう」感じが、似ているような。
もしかして、これからはペンではなくハンドスピナーを回すのが当たり前になるのでしょうか。そして、どっちがおもしろいのか……。
「プロ」のペン回しパフォーマーに話を聞いてみました。
2012年から大道芸やイベントなどのパフォーマンスとしてペン回しを披露しているKay(ケイ)さん(25)=神奈川県相模原市=は、ハンドスピナーのことは、どう見ているのでしょうか。
Kayさん
意外にも好感触です。ライバル出現と聞いて、6月には自分でもハンドスピナーを購入したそうです。
Kayさんによると、技を競い合う本格的なペン回しはここ10年ほどで盛んになっていて、2007年には世界大会も初めて開かれました。10秒ほどの技を組み合わせて動画として編集し、その動画の完成度で勝負します。
ペン回しに取り組んでいる人の8割くらいが中高生で、ほとんどの人がシャーペンやフェルトペンなどを分解してパーツをくっつけるなど、改造して手作りした専用のペンを使っているそうです。
Kayさん
最後はやっぱり、ペン回しへの自信をのぞかせました。
最初はよくわからなかったハンドスピナーのおもしろさ、いろんな人の話を聞いて、自分でもくるくる回しているうちに、なんとなーく感じられたような気がします。
私の机に置かれたハンドスピナーを見て、同僚や上司もこっそり(?)回していたようです。人が回しているのを見ると、ちょっとやってみたくなるおもちゃなのかもしれません。
まだまだ始まったばかりのハンドスピナーのブームは、今後どこまで広がるのか。気になる方はぜひ一度、回してみてはいかがでしょう?