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悔しそうな発泡酒、説明文の真意は? メーカー「削除を予定」

「レモンビール」の缶に書かれた商品説明。「日本ではレモン果汁が入ったものは・・・」
「レモンビール」の缶に書かれた商品説明。「日本ではレモン果汁が入ったものは・・・」

目次

 飲み物の缶などに書かれている商品説明。普通は、メーカー名や原材料など見慣れた項目が並んでいます。ところが、ある発泡酒の説明が「なんだか悔しそう」と話題を呼んでいます。メーカーに真意を尋ねると、意外な展開が待っていました。

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「ビールと記載できない」

 その商品とは酒類輸入大手「日本ビール」が、販売している発泡酒「LEMON BEER(レモンビール)」です。米国生まれの商品で、レモンの風味がさわやか。飲食店向けを中心に、瓶や缶入りで販売されています。

 ツイッターで缶の写真とともに、「カッコ書きに悔しさが見える」と投稿があったのは7月下旬。投稿は約3万リツイートされる反響を呼んでいます。記者も買ってみると、話題になっている通り、缶の商品説明にこう書かれていました。

 「名称:発泡酒(日本ではレモン果汁が入ったものはビールと記載できない為)」

 確かに・・・

 「本当はビールと記載したいのに!」という思いを感じます。 

レモンビールの商品説明
レモンビールの商品説明

麦芽使用率を見ると

 ところが「おや?」と思いました。

 麦芽使用率の項目に「25%未満」と書いてあるのです。

 法律上、麦芽使用率が約67%を切ると、れっきとした発泡酒です。つまりレモン果汁の有無にかかわらず、発泡酒であることに変わりは無い商品ということになります。

麦芽使用率は「25%未満」と明記してある
麦芽使用率は「25%未満」と明記してある

メーカーに聞いてみた

 話題の説明文は、どんな経緯で載っているのでしょうか。日本ビールの広報担当者に聞きました。

――レモンビールの「商品説明」が話題です。

 私も投稿を見て、話題になっていることに驚きました。レモンビールは1995年から輸入を始めましたが、米国メーカーが廃業。現在は、日本ビールがレシピを買い取って、国内で製造しています。

 日本では、果汁などを入れると「ビール」ではなく「発泡酒」として販売しなくてはいけないと、法律で定められています。商品名には「ビール」と入っていますが、これは米国での歴史があるため国に許可されたものです。

――ただ、麦芽の使用率から見ても「発泡酒」のようです。

 はい。もともとは、麦芽使用率が高いビールにレモン果汁を加えた商品でした。

 しかし日本では、お酒にかかる税金が、麦芽の使用率で決まります。ビールと同じ使用率だと、ビールと同じ額(麦芽使用率の低い発泡酒の約1.6倍)を払わなくてはなりません。

レモンビール=日本ビールより画像提供
レモンビール=日本ビールより画像提供

迫られた「苦渋の決断」

――「発泡酒」として売らなくてはいけないのに、税金はビールと同じだけかかるわけですね。

 そこで本当はビールと同じ価格帯で販売したかったのですが、「発泡酒は安いお酒」というイメージが根強くあります。売り出すと「なぜ発泡酒なのに、価格がそんなに高いのか」というような声が多かったそうです。

 そこで、苦渋の決断をしました。

――と言いますと・・・

 「発泡酒」として買っていただけるよう値下げする必要がありました。それで採算を取るには、麦芽使用率を下げて、かかる税金を減らすしかありませんでした。

 これにより麦芽使用率の点から見ても、発泡酒の商品となりました。

――となると、悔しそうな説明文の真意は?

 麦芽使用率が高かった時期に「レモン果汁を入れると、日本ではビールとして販売できない」ことを、お伝えするものでした。

 今回社内で確認したところ、その時期に使っていた表記がそのまま残っていた、とのことです。まだ缶の在庫があるので、しばらくこのままかと思いますが、次の製缶でこの表記を削除する予定です。

地ビールが後押し

 意外にも、話題の表記は削除されることになりました。

 加えて実は、ビールをめぐる状況も大きく変わろうとしています。現在ビールの副原料に使えるのは、麦や米などに限られています。しかし2018年4月からは法改正で、果実や野菜、香辛料なども使えるようになります。

財務省の発表資料「酒税法等の改正」より
財務省の発表資料「酒税法等の改正」より

 財務省によると、全国に地ビールメーカーが生まれ、果実など地域の特産品を使った商品が次々登場。果汁などを含む輸入ビールの消費も、増えつつあることが、法改正を後押ししました。

 レモンビールも再び麦芽使用率を高めれば、法改正後には「ビール」として売る道が開けます。そのため、日本ビールは「使用率を高めた商品へのリニューアルを検討中」といいます。

 悔しそうな説明文の陰には、日本のビール事情が隠れていました。

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