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航空会社のCA、日本は女性ばかり 専門家「ここまで男性なしは異常」
海外系の航空会社では、男性のキャビンアテンダント(CA)が普通にいますが、全日空(ANA)や日本航空(JAL)は女性ばかり。ジェンダー法学の専門家は「男性がここまでいないのは異常」と評します。男性は採用していないのでしょうか? 各航空会社を取材しました。
7月上旬。ANAとJALの新卒CA採用試験の最終面接が、羽田空港内でありました。会場に向かうのは女子学生ばかり。JALを受けた女子学生(21)によると、「2人の男子学生がいました」という。一方、ANAを受けた女子学生(21)は「50人くらいましたが、男子はいませんでした。2次のときは2人いたんですけど……」と話しました。
ANAもJALも、採用の段階で「女性のみ」という項目はありません。
なのに、ANAは、前身の日ペリ航空が1955年に女性CA6人を初採用して以来、合併(58年)で全日空となってからも、男性をCAとして採用したことは1度もありません。ANA広報部は「CAとして活躍していただける方を選考した結果、現時点では日本人のCAとして採用したのは女性のみ」と説明します。
ANAの広報担当者によると、CAとして求める人物像は、「1日約1千便あるフライトで、チームメンバーと力を会わせて、国籍も年齢も目的も異なる一人一人のお客さまに安全で快適な空の旅を提供できる役割を担える人」。今年の就職戦線でも、CAの採用はすべて女性だったそうです。
ANAには現在、約7800人のCAがいるうち、男性は数十人。海外拠点の外国人男性や、総合職(現グローバルスタッフ職)で採用された社員が経験を積むために配置転換された人がいる程度です。
JALには以前から日本人の男性CAがいます。CA採用を始めた1951年の2年後に男性CAを10人採用。その後も採用を続けています。JALの広報担当者によると、求める人物像は「素直な心を大切にし、次もJALに乗りたいと思っていただけるサービスのできる人」だそうです。
かつては客室乗務員とは別に、総合職の客室系として募集があり、主に男性が受けていたそうです。応募が少ないため募集はなくなり、現在はCAに統一されました。今春、男性1人がCAとして採用されるなど、現在、世界にいる約5500人のうち、男性は外国人約60人を含め約70人。それでも、全体の約1%です。
今年5月、成田発ロサンゼルス行きのANA機で、泥酔した米国人男性客が暴れ、女性CAが止めに入る映像がBBCを通じて世界に流れました。女性CAの毅然とした態度が称賛されましたが、一方で指摘されたのが、「なぜ女性CAが対応しているの?」でした。海外の人からすると、こういう時こそ男性CAの出番、と見えるのでしょう。
女性CAばかりの状況について、ジェンダー法学が専門の三成美保・奈良女子大副学長は「男性がここまでいないのは異常です。CA職の基本は保安要員なのに、保安業務はめったに起こらないから、サービス業務が主に見えてしまうのです」と話します。
「客層のあり方も今は変わっていて、ビジネスの女性客も多く、家族連れも増えました。かつてのような男性客を想定した女性のCAという対応関係はもはや成り立っていません」と話したうえで、「問題は女性がやると必ず賃金が下がるのです。そこが大きな問題です」と指摘します。
公表されている昨年度のANAのCA職の初任給は月額17万7319円で、グローバルスタッフ職の月額21万6444円より低くなっています。JALも、CA職の月額は18万3千円で、業務企画職の22万3千円を下回っています。
CAの3人に1人が男性なのがエールフランスです。世界にいるCA職約1万4千人のうち男性が約4600人。キャリア10年の男性CA、ルノー・フォクトさん(32)は「お客様が快適に過せるようにお世話をすること、お客様が望んでいることを感じ取り、ご希望をきちんとお伺いすること。状況にすばやく対応すること。これらは男性でも女性でも変わりありません」と話します。
日本人男性でCAになりたい、と思う人もいます。
2013年にANAのCA職を受けたが書類選考で不合格となり、格安航空会社(LCC)の春秋航空日本でCAとなった日本人男性(23)は「ANAの男性CA職採用第1号になれたらという思いはありました。サービス面、安全面を考えたら、1フライトに1人は男性がいた方がいいと思います。日本のエアラインはなるチャンスが少ないのが残念」と話します。
元JALの国際線チーフパーサーで航空評論家の秀島一生さんも「機内の保安と権威を保つためには男女両方いた方がいい」と指摘しています。
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