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靴下を45年間とめ続ける「ソックタッチ」 その波瀾万丈な歴史とは?
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一昔前は「紺ソ」、そのまた前はルーズソックス。靴下がずり落ちないように、多くの女子中高生たちが使っていた「ソックタッチ」。なんとこの商品、45年前からあるんです。プチソックスと呼ばれる短い靴下が流行しているいまは、知らない人も多いかもしれません。ソックタッチをつくるメーカー「白元アース」(東京)の担当者に歴史を聞きました。第3次ソックタッチブームも、近いかも?(朝日新聞記者・船崎桜)
靴下の一番上を1センチほど折り返して地肌にのりのように塗って戻し、少し押さえておくとぴたっとくっつく優れもの。「忘れたときに、友達と貸し借りしてた」「お小遣いで買えず、液体のりを代わりに使って悲惨なことに…」。みなさん、懐かしい青春がよみがえりませんか。
白元アースで約14年間、ソックタッチを担当しているマーケティング戦略部課長補佐の竹内陽子さんによると、ソックタッチが生まれたのは1972年。前身となる会社の創業者の男性が、当時中学生だったお孫さんから「靴下が落ちてこなければいいのに」と言われたことをきっかけに、考案したといいます。
ミニスカートが日本に上陸した70年代、若い女性たちが好んではいたのはハイソックスでした。当時は、ポロシャツにミニスカートにハイソックスという「ハマトラ(横浜トラディショナルの略)ファッション」が大ブーム。
長い靴下が落ちてこないようにきっちりとめられるソックタッチはすぐに人気商品になり、年間1千万本も売れたこともあったそうです。
80年代になると、ふくらはぎ丈の靴下を何回か折りたたんではく「三つ折りソックス」が流行り始め、第1次ブームは終わりを迎えます。ソックタッチは、廃番にまで追い込まれました。
しかしその約10年後の1994年、ルーズソックスの大流行にあわせて、復活。第2次ブームがやってきます。
竹内さん
倉庫に眠っていた在庫を売り出しましたが、あっという間になくなり、すぐに製造を再開。ピンク、青、黄3色のおなじみのパッケージに生まれ変わり、多いときには年間800万本が売れました。
その後は、2000年代に入るとハイソックスがよくはかれるようになりました。紺のハイソックス、略して「紺ソ」をとめるために、ソックタッチは使われ続けました。
学生時代にソックタッチを使っていた女性が大人になってからも使い続けたり、会社員の男性で「座ったときにスーツと靴下の間に肌が見えるのがかっこわるい」と言って使う人もいたりするそうです。
2017年の今、街中を歩く女子中高生の足元は、足首ほどの短い紺や黒の靴下が多くなっています。それを伸ばさずに「くしゅくしゅ」させてはくのがおしゃれ、という人もいるようです。
そうなると、なかなかソックタッチの出番はなさそうですね・・・。昨年春には、3色のパッケージのうち黄色がなくなり、2色になりました。
竹内さん
竹内さん、余裕の笑顔です。
ソックタッチは白元アースでしか製造しておらず、競合する商品も出てきていないため、「必需品」として親子2代、3代にわたって代々使われているのではないか、とのことでした。
時代の流行に乗って、存在感をはなってきたソックタッチ。いつ第3次ブームが来るか、楽しみです。
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