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映画館、声を出しても立ち上がってもOK 上映会イベント開いた理由

上映中は「怖くない音量」、照明も少し明るめに。

上映のあった映画館前での光景=主催者提供
上映のあった映画館前での光景=主催者提供

目次

知的障害や発達障害のある子どもたちやその家族にも映画を楽しんでもらおうという上映会が開かれました。上映中に子どもが立ち上がったり、声を出したりしても、互いに「あたたかい気持ち」で鑑賞できるよう開かれたイベント。なぜこのような取り組みを始めたのか、主催者に経緯を聴きました。

あいさつタイム、音量小さく…

昨年12月、イオンシネマ板橋(東京)で開かれたのは、「パウ・パトロール」のスピンオフ・シリーズとなる映画「ラブル&クルー IN シアター」の上映会でした。

発達障害や知的障害のある子どもとその家族など35人が楽しみました。
上映会の受付前には、保育士資格を持つスタッフなどが配置され、子どもたちとハイタッチしたりトイレに案内するなど、和気あいあいとした雰囲気でした。

イベントの担当者によると、上映前には、近くの家族同士で1分間の「あいさつ」タイムを設けて、参加者同士の交流もあったそうです。

上映中は、事前にチェックした「怖くない音量」に設定したり、暗い場所が苦手な子どものために会場内の照明も少し明るめにしたりしました。通常の映画館では「予告編」が流されている時の明るさだといいます。

今回のイベントの仕掛け人のひとりであるイオンファンタジーの圓藤(えんどう)芙美さんは「最初は泣いていた子も、上映中にはお母さんと顔を見合わせて笑うなど、楽しんでいる様子が感じられました」と話します。

上映前後にはキャラクターと記念撮影をする風景も=主催者提供
上映前後にはキャラクターと記念撮影をする風景も=主催者提供

遊び場で、障害のある家族向けの「あったかタイム」

「イオンファンタジー」は、大型ショッピングセンター内の児童向け遊戯施設を運営しています。グループ内の会社で映画館を運営する「イオンエンターテイメント」に声をかけて、イベントが実現しました。

イオンファンタジーには、障害のある子どもが「他の子どもに近づきすぎてしまう」「おもちゃを投げてしまう」といった特性から、「他のお客さんからの視線が気になる」といった家族の声が寄せられることがあったといいます。

社内には、障害のある子どもたちへの取り組みを考えるプロジェクトチームがあります。そこでも同様の声があがりました。

そこで同社では、昨年から障害特性のある子どもとその家族が周りの目を気にせずプレイグラウンドで遊べる時間帯「あったかタイム」を不定期で開催。基本的には、プロジェクトチームのメンバーがいる店舗で実施しています。

中でも、11月23日の「世界こどもの日」にあわせてプレイグラウンドが無料開放される日には、当日の数時間、対象店舗で「あったかタイム」を実施。2025年は千葉県内の8店舗で実施しましたが、他府県に住む人から「自分の地域でもやってほしい」という意見が届いたそうです。

障害の有無にかかわらず、映画でわくわく

イオンファンタジーの圓藤さんは「『あったかタイム』へのニーズがあるのかは、いまのところさぐりさぐり」といいます。

「子どもに障害があっても気にせずプレイグラウンドに入れるという方もいれば、入りにくいと思っている方もいると思っています。入りにくいと思っている方々の背中を押せるのではないかという仮説をもとに、いまは実験中です」

プレイグラウンドでの「あったかタイム」は手探りですが、社内からは「『あったかタイム』のような空間は、映画館にも需要があるのではないか」という指摘がありました。

圓藤さんは「確かに映画館では『静かにしましょう』といったルールが強くて、出かける先としては、遊び場よりさらにハードルが高いと思いました」といいます。
圓藤さんは3月、グループ内で映画館運営を手がける「イオンエンターテイメント」に声をかけます。

イオンエンターテイメントでは、元々子ども向けの施策「映画館デビュー」として、子どもが怖がらない音量や明るさで上映する回を実施していました。

イオンエンターテイメントの後藤亮子さんは、「『映画館デビュー』の延長線上で、『ぜひ一緒にやりましょう』という感じでした」と話します。
3月から準備を始め、7月に第1回を開催、12月に第2回を開催しました。

「障害の有無に関わらず、映画がもたらす感動やわくわくを共創できるような環境ができればいいと思いました」

イオンエンターテイメントでも事務局を立ち上げ、上映会開催に向けて準備を進めていったが、後藤さんは「考えないといけないことが多々あり、不安があった」と振り返ります。

館内での様子=主催者提供
館内での様子=主催者提供

先駆者のもとに視察

両社は、イベントの実施にあたり、障害のある子どもたちへの映画上映を数多く手がけている団体へ視察に行き、工夫すべき点などを教えてもらったといいます。

今回、上映前に周囲とのあいさつ時間を設けたのも、その団体のやり方にならったといいます。

圓藤さんは「あいさつをすることで、子どもが上映中に大きな声を出したとしても『さっき挨拶した人だね』と他人事ではなくなるなど、『ご近所理解』のきっかけを作れると感じました。上映中の音量や明るさは、これまでイオンエンターテイメントが手がけてきた子ども向けの上映会のノウハウを生かしました」。

上映後のアンケートでは、「真っ暗にならず、安心して見ることができた」「スタッフのサポートが手厚かった」「声を出しても大丈夫だったのがよかった」などといった感想があったといいます。

「誰でも気兼ねなく楽しめる環境を」

圓藤さんは「どういう状況で映画を楽しみたいか、というニーズは自由であっていい。様々なニーズに対応できる上映ができればいい」と話します。

後藤さんも「誰でも気兼ねなく映画を楽しめる環境を提供していきたいとと考えていますし、そうした環境を、自分に合った形で選べることも大切だと思います」と話しています。

今後も実験を重ね、同様の取り組みを全国に拡大していくことも検討しているといいます。

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