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安保会議で存在感ゼロの日本、専門家が喝!「大国の自覚と威厳を」
6月初旬にシンガポールで開かれた「アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)」。日本の外交・安全保障にとって最大のテーマの一つ、「対中国政策」が、会議での大きな焦点となりました。アジア太平洋地域で存在感を高める中国にどう向き合えばいいのか――。日本からは稲田朋美防衛相が演説をしましたが、会議に参加した日米関係が専門の神戸大学大学院・簑原俊洋教授は、「存在感は、皆無だった」と辛口の評価。「日本は大国としての自覚と威厳を持ってほしい」と指摘します。(朝日新聞政治部記者・園田耕司、松井望美)
米国やアジアから防衛担当閣僚、政府高官、専門家らが集まった今年のシャングリラ・ダイアローグ(英国際戦略研究所主催、朝日新聞社など後援)。「ルールに基づく地域秩序の擁護」と題して演説した稲田防衛相は、「東シナ海と南シナ海で既存の国際法秩序とは相いれない独自の主張に基づく、一方的な現状変更の試みが継続している」と述べ、名指しを避けながらも中国の海洋進出を批判しました。
会議では、中国が進出を強める南シナ海の問題が話題となり、参加した東南アジア諸国のメンバーからは、日米両国への期待感があったと、簑原教授は解説します。では、日本はそうした期待に応えられたのでしょうか。簑原教授の見方は厳しいものでした。
「残念ながら、世界第3位の経済大国としての日本の存在感は、皆無だったと思います。稲田朋美防衛相の演説は英語が聞き取りにくく、また演説冒頭で、フランスとオーストラリアの女性国防大臣との共通項として、我々はともに『グッド・ルッキング(見た目が美しい)』だと大きな笑みで自信たっぷりに言い放ちました。このときの会場からの失笑は、痛々しいものでした」
日本はどうすればいいのか。簑原教授は、こう指摘しました。
「私が日本に期待するのは、もっと価値観のある骨太の外交を展開して欲しいということです」
「『リベラルな秩序と民主主義は大切であり、法の支配をないがしろにする力による現状変更は認められない』と主張するなら、例えば、対中国政策だけでなく対ロシア政策でも一貫性が担保されなければ、理念は喪失します。しかし、日本のロシア外交を見ると、日本は小国であるかのように振る舞い、自らの狭い国益をひたすら追求しているかのように見えます」
「加えて、北朝鮮が弾道ミサイルを撃つたびに、日本の政権幹部たちがテレビカメラの前に立ち、『断じて許せない。断固として抗議する』と繰り返し言っていますが、すごみがありません」
「北朝鮮を含め、周囲の諸国は毎度おなじみの決まり文句、すなわちジェスチャーでしかないと捉えています。日本は大国として自覚と威厳を示し、安全保障政策に対して、よりリアリズム(現実味)を持つ『シリアス・パワー』としての振る舞いを示して欲しい。そう思っています」
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