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鬼才・園子温監督「民放では絶対無理」ネット配信でやりたかったこと
映画界を中心に数々の問題作を送り出してきた鬼才・園子温監督。総監督・脚本を手がけたオリジナルドラマ「東京ヴァンパイアホテル」が、動画配信大手Amazonプライム・ビデオで6月16日から配信されています。映画でもテレビでもなく、ネット配信でやりたかったこととは――。園子温監督に聞きました。
ドラマ「東京ヴァンパイアホテル」は、夏帆さん、満島真之介さん、冨手麻妙さん、安達祐実さんらが出演し、1話約40分で全9話。地球の滅亡を図るヴァンパイア(吸血鬼)と人類の戦いを、過激なアクションを交えて描きます。
――ネット動画配信に初挑戦です
古い人間なので、音楽はレコードで聴いて、映画は映画館、レンタルビデオくらいが限界。配信のみとなると形態的にあまりに最新すぎて自分にはついていけない……と思いつつも、そういう時代になりつつあるんで、そういうものを受け入れていくという気持ちはありました。音楽なんか先にいっちゃってる。映画もそうなるはずですよね。
――なぜヴァンパイアを題材に?
自主映画をつくろうと最初にやったのが吸血鬼なんです。うまくいかなくて途中でやめちゃったんですけど。去年、ルーマニアの映画祭で園子温の特集上映があって。映画祭もさることながら、ヴァンパイアファンなのでルーマニアに行ってみたかった。
ドラキュラの城もあるし、観光というかロケハンをいっぱいした。ルーマニアで映画を撮りたい!と盛り上がって帰ってきて、箱根の富士屋ホテルで休憩して、こういう怪しい感じのホテルでオーナーも従業員も全員が吸血鬼で客の血を吸ってたら……という発想をもった。
そんな話をしていたら「アマゾンでどうだろう?」と。一風変わったオリジナルもの、グランドホテルのセットが立てられる予算がおりるというのはなかなかないんで、この際「アマゾンでやってみよう!」となりました。
――つまり、それだけ予算が大きかった、と
そんなに多くはないですけど、日本でやるならいま一番いいかな、と。普通に考えればいま一番ぜいたくにとれたかな、と思います。
――ドラマの冒頭で毎回、「当番組は、番組の性質上、観る方によっては一部不適切と感じる場合がございます。あらかじめご了承の上、お楽しみください」という注意が入りますね
ああいうのが入ってたほうが怖がらせる感じでいい。配信なので、暴力的なシーンとかの制約があまりなかった。民放テレビでは絶対無理だし、映画でもやっぱり厳しかったかもしれない。
低予算だったらやりたい放題やってもいいかもしれないけど、こういう予算がかかっているときは、色んな人が観るだろうということで。
――ルーマニアで撮影したシーンもあり、ドラキュラ伝説が残る城や地下道などミステリアスで壮大な映像が印象的です
ルーマニアの人ですらあまり知らない秘境、地下のものすごい場所を見つけて撮影に使えてよかった。ネット配信のいいところは、映画と違って全世界に配信されるので、映画館でみるよりも観る人がふんだんに広がる。今まで僕の映画を観ていない人も観る機会ができて、チャンスが大きくなる、それはすばらしい配信の威力。
――ドラマの舞台は2021年。五輪後の東京の風景や、核爆発で世界が滅びてしまう、という設定が妙にリアルでした
配信まではミサイル落ちないようにしてほしいな、と思ってました。時代のほうが後から合っちゃうことが多くて、「自殺サークル」って映画を撮ったときも、ネットで自殺仲間を募集するというのが映画が公開してから起きた。予言的なものがつくれるチカラなのか、何か感知するのか、そういうのはよくあるんですよね。
――カンヌ映画祭が映画館で公開されずネット上だけで配信される作品は来年以降はコンペティション部門への参加を認めないと発表するなど、ネット配信映画をめぐって議論が起きています
予算が半端ないけど映画館でかからないのと、予算がすごく少ないけど映画館でかかるのと、どっちがいい?ってアメリカ人に聞かれました。古い世代なので映画館でかかんないとな、と思ったけど、やっぱりでも予算があったほうがええんちゃうかな、って思って、「配信映画でいいっす」って答えました。
――日本の状況はどうでしょうか
まだそんなに。配信で映画を観る習慣ができてないんで。普及してないから映画を作るより予算がおりないかも。カンヌ(で今年のコンペに選ばれたNETFLIX)のポン・ジュノの映画は、制作費約50億円。そのくらいネット映画が今みんなにおすすめされている、向こうでは。
日本ではネットでやればやるほど、予算が出ない。観る人がまだそんなにいないから。役者も「ネットか」となるもんね。民放より一段低いモノっていう見方がまだ日本には根付いちゃっている。そこらへんがもうちょっと壊れてこないと。今のところ僕も他のメニュー見てしょぼいな、まだ駄目だな、と思っちゃうくらい日本のコンテンツはまだまだですね。
――またネット配信作品をつくりたい?
今回、民放テレビドラマでは絶対にできないことを、いっぱいやれた。規制が自由で、面白さだけを追求すればよかったので、そこは良かったな、と思っています。予算がすごければまたやりたい。世界的に出てきてますから、ネット配信映画はやってみたい。
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