連載
#15 AV出演強要問題
AV強要、SODトップの考えは? 「NG項目20個、事前にチェック」
AV出演強要の問題で揺れる中、AVメーカーは、どのような手順を踏んで撮影にのぞんでいるのか? 大手メーカー、SODクリエイトの野本義明社長(36)は女優に対し、出演内容は事前に確認し、撮影当日にも説明していると話す。監督の経験も長い野本社長に、現場の実情について聞いた。(朝日新聞経済部・高野真吾)
――野本さんは、会社HPで「AV女優出演問題」を「(会社の)トイレが少ない」「パソコンが壊れた」という社員からの「クレーム」と並列して記しています。違和感はありませんか?
「これはパブとしてやっていることです。一個の実例として、こういう大きな問題から、こういう小さなことまで、いっぱい来ていますというところで書いただけです」
――2004年の入社から昨年6月の社長就任まで、ずっとSODクリエイトでAVの制作に携わってきました。この間、本人の意に反する出演や撮影内容、販売方法などの問題を何か認識したことはありますか。
「僕が監督とか現場に行っている限りおいては、ないですね。もちろん、朝、(その日の撮影内容の)説明を絶対にします。事前にマネジャーさんとかにもし、カンメン(監督面接)もします。全部説明したうえで、いいものにしましょうと撮っていきます」
――野本さんは、先ほどと同じ会社HPで「入社3~4年目 高橋がなりのチーフADに選ばれる。SOD star 原紗央莉ちゃんのデビュー作を監督する」と書いています。ここで紹介されている原紗央莉さんはSODから多くの単体での作品を出していますが、現在、SODのホームページから彼女の単体作品を購入できません。理由を教えて下さい。
「これも他社の 配信先さんも下げていて、うちとしては直接の削除依頼などが 来ていないため、下げなくてもいいのですけど、習って下げたという所です。足並みをそろえるということで」
――他社に彼女から作品の削除依頼が来ていたということですか?
「ごめんなさい。そこは、僕は分からないです」
――例えば元タレントは出演強要被害があったと訴えたことで他社が作品を下げ、SODもそれに習っています。原さんに関しても、同じようなことがあったということになるのでしょうか。
「僕の中では強要はないとは思いますけど、原さんに関しては。ただし、業界で、よりよくしていくとくことで、足並みをそろえていくことが非常に僕は大事だなと思っています。1社、うちだけ、そんなのと言ってもしょうがない」
――野本さんは、過去に自分が監督するはずの作品で、予定していた撮影が当日や直前のキャンセルになったことはないのでしょうか。
「ほぼないですね。例えば人数モノで5人で撮る時、1人が風邪をひいてしまい、差し替え、違う女の子でということが、ほとんどです。もしピンだと、ちょっと風邪が悪いとか、生理が急にきちゃいましたという時は、撮影日をずらしましょうということで話が進みます」
――被害者支援団体が受けている相談では、出演者が撮影現場で、事前に言われていない行為を要求されることが数多くあるそうです。
「専属女優だと、必ず監督面接があります。その時に(初期段階の)台本と内容を一緒に話をし、これはできない、これはできると聞きながら、台本を固めます。当日も現場でこういう風に撮りましょうと説明している」
「大人数の時とかは、事前に台本をプロダクションに送って説明をしていただいている。当日、またプロデューサーや監督から説明差し上げているというところです」
――被害者支援団体は、女優本人の出身地や職業、学生の場合は所属するサークル名などをそのまま作品に使われ、やめてほしいとの主張を一切聞いてもらえず、販売後まもなく知人にバレてしまったケースがあると言っています。SODの作品でもあるとのことです。
「SODクリエイトではたぶんないと思うんですよ。女優さんの面接の時、まず色々と書いてもらいます。(AV女優としての)売りの出身地はもちろんありますし、これは(作品で)うたっていいのですかというのは確認します。現場でも確認します。撮り始めれば、それの設定で撮っていくので、本人が嫌だと言って頂ければ止めます」
「基本的には事前に全部確認します。特に設定のところは作品の性質上、すごく肝になってきます。例えば陸上をやっていました。現場で陸上ものを撮りましょう。私は陸上部出身と言っていいですとなった時、現場で違うと言われても、もう衣装とかもそれで用意しているので、それでは作品が撮れない。すごく事前に(丁寧に)確認しています」
――先ほど監督面接について教えてもらいましたが、他に出演者の意思の確認をする方法があれば教えて下さい
「面接の時には、『面接同意書』を書いて頂きます。現場では『出演同意書』を書いてもらいます。専属契約になると、さらに『販売同意書』を結ぶ三段階を経ています」
――その面接、出演、販売の三つの同意書は、クリエイトさんの内部で作られているのでしょうか? 定期的に見直し、女優の権利に配慮するような形で更新をしているのでしょうか。
「顧問弁護士さんと話をし、内部でつくっています。(見直しでは)パブとか大きいです。僕が(SODに)入った頃は、ネットとかそんなになかったし、媒体も増えてきた。そういう項目を増やしたり、見直したりしています。例えばうちが雑誌を発売し始めたならば、その雑誌はOKなのか。時代が変わるので、適時見直しています」
――出演女優は、事前にやりたくない行為を指定するNG項目があると聞いています。AVの撮影現場でのNG項目の順守はどのように担保しているのでしょうか。
「面接の時に、20項目ほどの細かいNG事項のOK、マルというのを記載してもらいます。それを守った中で、台本の行為を書いて、それを説明します」
――野本さんは、今後AV業界をどうしていきたいと考えていますか。
「よりよく残し、発展させたいという気持ちが一番強いです。(業界に)入った時から、その信念です。そのために、例えば朝日新聞さんから色々と指摘があったりすることは、直せばいい話で、身内がやっていることはちゃんと(外に向け)言えばいい」
「よりよい表現をするためには、女優さんは制作者の1人なので、ものすごく大事です。ものをつくる中に、女優さん、男優さん、監督、カメラマンさん、メイクさんがいます。女優さんを第一に考えて、よりよく発展できればいいなと考えています」
1/31枚