連載
#16 AV出演強要問題
AV強要、SODトップに聞く「業界も脇が甘かった」「今をチャンスに」
出演強要問題で揺れるAV業界。もし出演女優が、撮影を拒否したら、どのような対応を取るのか? 大手AVメーカーである制作会社SODクリエイトと、販売会社「ソフト・オン・デマンド」のトップは「嫌だと言われたら、撮影はしません」と説明する一方、「業界にも甘いところがあった」と語る。業界の実情について、トップの考えを聞いた。(朝日新聞経済部・高野真吾)
SODクリエイトは、WILL(元CA)、プレステージと並び、AVメーカーの3強の一つとされる。テレビ番組「¥マネーの虎」で名をはせた、高橋がなり氏が株主をつとめる。
この1年ほど記者が取材した多くのAV業界関係者が、業界改革に向けた「キーマン」として高橋氏の名前を挙げた。 4月に高橋氏に取材を申し込んだが実現せず、高橋氏が社長に指名した野本氏がインタビューに応じた。
野本氏は日大卒業後の2004年に入社し、16年6月の社長就任まで、SODクリエイトでAVの制作に携わってきた。監督作品だけでも100本を超え、AD時代を含め、無数の撮影現場をこなしてきたという。
――AVへの出演を拒否した女性が所属プロダクションから2460万円の違約金などを請求された訴訟で、東京地裁は15年9月に棄却の判決を出しました。この裁判を起こした元女優は、SODからデビューし作品が出ています。
「基本的にお答えできません」
「一般的にうちが取っているスタンスとして話してよろしいですか? 女優さんが現場で嫌だと言われたら、撮影はしません。(出演強要の)被害者を出さないようにというのが会社の方針です」
「その(撮影)後、やっぱなかったことにしてくれ、作品を取り下げてくれという時は、即座に(他社での配信・販売を含むSODの)全チャネルで販売、配信を止めます。回収は自社で行います。回収費用は多いときは1千万円にものぼるのですが、クリエイトが負担しています。女優さんに違約金を請求することはしません」
――女優ではなく、プロダクションに対してはどうなのでしょうか。
「基本的には(回収費用やその他の経費は)うちが払っています。何も一個も撮影していないとなれば、出演料だけは返して下さいということはあります。すごい昔の話だと、スタジオ代は半分ずつにしましょうと折り合いをつけていた時もありますが、今はクリエイトが全部負担します」
――昨年、強要被害を訴えた元タレントの女性も、先の元女優と同じくSODからデビューしました。彼女は現場で泣き、撮影を長時間拒んだと取材に答えています。監督は当時、SODの社員監督でした。
「彼女の撮影に関しては、もちろん撮る前に監督面接という形で、内容を監督、プロデューサー、プロダクションと話しています。実際に現場の撮影になった時、彼女が言っているとおりに、『今日は脱げません、できません』という話になりました」
「うちとしても、『できません』と言われたら、無理に撮ることはない。作品の内容としてもいいものにはならないので、彼女が納得しない、嫌なのであればということで、撮影はばらしました(中止しました)」
――それは、1回目の都内での撮影ですよね。
「そうですね。ばらして、本当にやりたい、続けたいと本人が納得しているのであれば、うちは撮りますよということを(元タレント側に)お伝えしました」
「後日、『撮ります』ということになったので、撮影に至りました。彼女の有名指向が強かったので、夢のお手伝いで海外のイベントに参加させるとか、AV以外の雑誌にプロモーションをかけるというスタンスを取りました」
――2回目は山中湖(山梨県)に連れて行かれ、実際の作品となったビデオを撮影されました。その時も、彼女は長時間抵抗し、出たくないと言ったけど、無理やりに撮られたと話しています。
「僕は1回目で、そういう話をして、2回目で納得して来て頂いて、時間はかかったかもしれないけど、合意の元でちゃんと撮ったと認識しています」
――この元タレントのDVDは「SOD公式サイト」で検索しても、全く出てきません。同時期に活躍された女優さんは、普通に販売されています。削除されている理由は?
「他社の配信先さんも下げていますので、うちも同じような方針で下げているということだけです」
――他社さんが下げている理由は?
「こういう問題になって、彼女がそういう文面で言っているのであれば、そこまで無理して発売する必要はないので、気持ちをくんでということです」
――こういう問題とは?
「(AV出演強要を訴える)インタビューに答えたりしているというところです。」
――AV出演強要問題は昨年来、社会問題化し、政府は4月を被害防止月間としました。この5月には今後の取り組みをまとめました。
「強化月間となったのは、業界にも脇が甘いところがありました。今、こうやって(社会問題として)取り上げて頂いていることで、業界が一個にまとまり、よりよくしていこうという環境になっています。すごく嬉しいです」
「僕は(日大入学前の)浪人時代に、AV女優さんのインタビュー集を読んで、すごく感銘を受け、頑張っている人たちを応援したいと本気で思い、この業界に入ってきました。業界をよりよくしていくチャンスだと思っています」
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