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塩村都議が語った、議会の「セクハラ体質」 あれから3年、変化は?
塩村文夏都議が東京都議会の議場で浴びた「セクハラやじ」の問題から約3年。初の女性都知事・小池百合子氏が率いる「都民ファーストの会」も、多くの女性の候補を擁立する見込みです。「学級崩壊状態の中でのセクハラ発言」だったというやじ。女性議員の立ち位置は変わったのでしょうか? 7月2日投開票の都議選を前に国政転身のため1期で都議会を去る塩村氏に聞ききました。
――2014年のセクハラやじ問題は大きく取り上げられて、やじを発したと名乗り出た議員が謝罪しましたけども、3年経って、議会の女性の立ち位置といったことは何か変わったと言えるでしょうか?
セクハラやじはなくなりましたね。「怒られちゃったからやっちゃいけない」「すごいしっぺ返しが来るからやっちゃいけない」というレベルですけど、言い続けていくことによってなくなりますから、最初のステップだと思えばしょうがない。
ちょうど安倍首相が「女性の活躍」を掲げていた時ですから、ハラスメントをなくそうという認識も加速度的に進んでいったと思います。
ただ、あのとき、都議会に「男女共同参画社会推進議員連盟」が復活して「何がセクハラなのか」を学んでいくことになったので、こちらもそれ以上の追及を踏みとどまったんですが、発足時の総会では会長が「結婚したらどうだと、平場なら僕だって言う」と報道陣に発言して批判されましたし、次に開かれたのは1年後。議題は「女性の活躍」で、セクハラの話は誰も触れない。
もう1回開かれたときのテーマは女性アスリートの話。本当に反省してる様子はないというのがそこでわかりましたね。理事にも入っていないから、意見も言えないですし、結局、あのときにお願いしたハラスメントの勉強はないまま、都議会は終わっていくという形になりますね。
――あの時、注目浴びる中で、足を引っ張るようなことも言われましたか。
かなりありましたよ。まず「議員なんだから我慢しろ」ですね。でも、あれは一言だけじゃないです。何十分にもわたってゲラゲラ笑われて、学級崩壊状態の中でのセクハラ発言と不規則発言ですから。
大会派が1人の新人をそうやって扱うことを、当然のことだと言っている人がいる。日常に置き換えれば、転校生が来てあいさつしているのに、みんなで笑ってはやして、全然違うことを言ってちゃかす。そんなことを注意できない社会になっちゃいますから。
かなり保守的な女性たちからも、10代や20代前半の頃の話をされて「昔アイドルしてたからそんなこと言われてもいいだろう」と言われましたね。今は40歳に近くなっている私の考えも大きく変わっていますし、何度も過去の経歴については謝罪をさせて頂いてもいます。「だから言っていい」という意見は違うと思います。反省は考慮されない世界です。
――名乗り出て謝罪した議員も、再び都議選に立候補します。
会派を離脱しましたが、自民党を離党したわけでもないですし、1年たったらまた戻っています。最大会派であればたくさん人材がいるはずですから、きちんと選考しなおしてほしかったなと思いますね。ただ、やじを言ったのは1人だけではないので、1人だけ制裁を受けるのも問題はありますが。
――今度の都議選では、都民ファーストの会が女性候補を大勢擁立する予定です。政治経験のない女性議員が増えることも予想されます。先輩として何か言うことがありますか?
そもそも会派の人数が違いますから、私とは全然違う好待遇を受けるでしょう。ただ、「私は都民の代表なんだ」と議会で威張るのではなくて、目線を常に都民に置いて活動することを忘れてほしくないと思います。
やっぱりこの世界、いきなり「先生」と呼ばれて、言葉だけは丁寧にちやほやされますから。だからといっていい気になってはいけないし、行政と持ちつ持たれつになってもいけない。民間で仕事されていた方でも、肩書や地位があって、上から目線になっていた方もいたかもしれない。
経験はしっかり生かしつつも、こぼれ落ちる人たちを支えるために、皆さんから税金をとって分配していく仕事が政治ですから、そこを絶対忘れてもらいたくない。
数が増えればいいってもんじゃない。これまでのように、男性の政策を女性の言葉にしてのし上がっていく女性議員が増えてほしいわけではない。女性の政治家を増やすというのは、今の政治に足りない目線を補うのが役目だと思うんです。
例えば待機児童の問題など、男性には分かってもらえなかった。それができる人が女性リーダーであるべきで、すごく重要な役割なんです。
女性活躍というより、自分活躍のために議員になろうと思ってる人がいるような気がします。自分が輝くのは重要かもしれませんが、それ以上に、みんなが活躍できるようにすることが重要です。
私たちが受け取ってる報酬の原資は税金ですから、納めている人たちみんながある種、平均的に活躍できるような世の中になってほしい。そこが心配なところではあります。
――この4年間は知事が3人入れ替わり、塩村さんのやじの問題、築地市場の問題と、都議会や東京都が大きく注目されました。
議員と行政と首長の関係が健全かつ適正化されない限り、最終的に都民の皆さんが損をする形になっていると思うんです。
一強の議会になっているので、その会派の反対にあうと何も動かなくなるから、知事も議会を気にしすぎて配慮があったと思うし、議会側も知事を動かせると思っていたと思われる節が多々ありました。
知事が3人も変わったのは異常でした。今は大騒ぎしていることが、10年後に考えて、本当にプラスになっているだろうか。逆に大したことないようでも、しっかり騒いでおかないと後々に損することになることもありますから、都民の代表として私たち議員がきっちり判断していかないといけないんですが、やっぱり選挙があるので、パフォーマンスに走りがちだったりします。
騒がれているから注目するのでは判断を誤りがちだと思います。舛添前知事の件は、私は、本質から遠ざかっている所で大騒ぎしているような気もします。職員を動かすとか、混乱に伴うコスト面でかなりの損失が出ています。知事選を1回することもそう。民主主義のコストとはこういうとなんだろうけど、もう少し高尚であったほうがいいと思います。
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しおむら・あやか 1978年生まれ、広島県出身。タレントや放送作家などを経て、2013年の都議選で世田谷区選挙区から旧みんなの党公認で初当選。現在は1人会派「東京みんなの改革」所属。次期衆院選に民進党公認で立候補することが決まっており、今回の都議選には出馬しない。
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