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2017年06月09日

『この世界の片隅に』は「うれしい成功例」 のんさん×山田洋次監督

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2人で山田洋次ミュージアムを訪ねた山田監督とのんさん(左)=東京都葛飾区、鬼室黎撮影

2人で山田洋次ミュージアムを訪ねた山田監督とのんさん(左)=東京都葛飾区、鬼室黎撮影

 「家族はつらいよ2」が公開中の山田洋次監督(85)と、「この世界の片隅に」で声優を務め、寅さんファンでもある俳優のんさん(23)。名監督と個性派女優が初対面し、世代を超えた異色の対談が実現しました。「この世界の片隅に」のヒットに山田監督は「珍しい成功例。映画人としてうれしい」と語り、寅さんが全盛だった時代の映画館についても話が広がりました。



【動画】のんさん×山田洋次監督による映画対談=佐藤正人、高橋敦撮影

重苦しい時代でも楽しく見られる映画

 のんさんが主人公・すずの声を担当したアニメ映画「この世界の片隅に」は、戦時中の広島を生きる女性の日常を丁寧に描いています。昨年11月に公開されると、口コミでジワジワと評判となり、異例のロングランヒットを記録中です。

 山田洋次監督「あの作品は本当に楽しく見られるね。だけど、描かれている時代の歴史は重く暗い。原爆も落ちる重い現実があるのを知りながら、つい笑ったり楽しく見ちゃったりするのが、あの映画の魅力じゃないかねぇ」

 「あの時代を描いて、深刻な映画を作るのはそんなに難しいことじゃない。だけど重苦しい時代を描きながら、大笑いするわけじゃないけどほほ笑ましく見てしまう。すずさんの姿をついニコニコしながら見ちゃう、というのはなかなかできない」

昨年11月からロングラン上映を続けている「この世界の片隅に」

昨年11月からロングラン上映を続けている「この世界の片隅に」

出典: ©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

苦労した映画のヒット、うれしい

 のん「映画館でご覧になったんですか?」

 山田「映画館で見ましたよ」

 のん「素朴な疑問なんですが、普通に映画館に行かれるんですか?」

 山田「そりゃあ行きますよ。今はDVDでもパソコンでも見られる時代だけども、僕たちが作る映画はやっぱり映画館で見てもらいたい。そういうつもりで映画を作ってきた。テレビのない時代に映画界に入りましたからね」

 「だから努力して映画館に行くようにしますよ。映画館で映画を見る習慣を失っちゃいけないと思っています。でもずいぶん長い間(上映を)やっていましたね。なかなか忙しくて見られなかったんだけど助かった」

 のん「ありがとうございます」

 山田「苦労してお金を集めて作った映画があんな形で大ヒットしていくっていうのは、僕たち映画人から言わせればとてもうれしいですよね。映画っていうのはそうであってほしいな、と。珍しい成功例じゃないんですかね」

山田洋次監督(右)と対談するのんさん=東京都葛飾区、鬼室黎撮影

山田洋次監督(右)と対談するのんさん=東京都葛飾区、鬼室黎撮影

ジワジワ反響、一体感生まれた

 山田「色々あの時代のこと、読んだり聞いたりしたでしょう? 僕なんかは少年時代で、知っていますからね。いちいちこう、『そうだったなぁ』という思いで見ました」

 のん「そうですね。その時代を考えながらというのは難しかったですけど、すずさんがああいう風に明るくしているおかげで『この世界の片隅に』という作品ができました」

 山田「僕はちょうどすずさんが小学校に入る頃に生まれたのかなぁ。あの映画でも一貫しているけど、おなかがすいたっていう記憶ね。おなかいっぱいご飯食べたってことはなかったんじゃないかな」

 「振り返ると悲惨な時代なんだけども、その中で楽しいことを見つけて懸命に生きていくということを人間はするわけ。あの主人公を見ていると、『ああ、頑張って生きなきゃいけないな』ってみんな思ったんじゃないのかな。本当に素晴らしい映画でしたね」

 のん「ジワジワと反響が広がって。見ている方が映画を宣伝してくださる一体感もあっておもしろかったです」

山田洋次監督と対談するのんさん=鬼室黎撮影

山田洋次監督と対談するのんさん=鬼室黎撮影

寅さん、不思議な感じが魅力

 のん「『男はつらいよ』は(BSの)『土曜は寅さん』でずっと拝見していて。英語の先生と感想を言い合いながら楽しませていただいています」

 山田「お若いのに。あなたが生まれる前から作っている映画ですよ」

 のん「寅さんの魅力は、見る度に『やだもうこの人!』って思えるのに、やっぱり寅さんが好き!って同時に思えるのが不思議な感じで」

2人で山田洋次ミュージアムを訪ねた山田監督とのんさん(右)=東京都葛飾区、鬼室黎撮影

2人で山田洋次ミュージアムを訪ねた山田監督とのんさん(右)=東京都葛飾区、鬼室黎撮影

人間的な価値観、寅にはある

 山田「その『やだな』っていうのはどういうことなんだろう?」

 のん「例えば、すごいとぼけたり、人にあたったりしないとお家に入れないとか、好きな人に会いに行く時に照れちゃって誰かに絡んでからじゃないと出かけられない時とか」

 山田「行儀が悪いし良識がないから、トンチンカンなことを言って困らせたり怒らせたりするけども、人間として大事なことをきちんと理解できる感性が寅さんにはある。社会的立場とか権力とか地位とか、そういう価値観が彼にはないから」

 「そういう人がいることによって大騒ぎが巻き起こり、それをどうやっておさめるかっていうことを繰り返す中で、人と人とのつながりがだんだん深まっていくんじゃないかね。映画館で見たわけじゃないんだよね?」

 のん「そうですね、映画館で見てみたい!」

のんさんと対談する山田洋次監督=鬼室黎撮影

のんさんと対談する山田洋次監督=鬼室黎撮影

今の映画館は不満

 山田「30~40年前ですけど、寅さんを上映している映画館ってのはものすごく騒々しかった。上映中にみんなワーワー、色んなこと言ってゲラゲラよく笑う。『そうだそうだ』『いいぞ』『何してんだ社長、早く出てこい』とか叫んだり。本当ににぎやかだったね」

 「僕は、ああいう風に映画って見てもらいたいと思っているんです。いまどきの映画館は不満ですよ。最初に『お静かに』とか『他人の迷惑になることはしてはいけません』とか。面白かったら笑って、隣の人としゃべって仲良くなることが映画の喜びじゃないですかね。寅さんの時代は、映画館に活気があふれてたね」

 のん「そういう雰囲気体験したことないですね。楽しそう」

2人で山田洋次ミュージアムを訪ねた山田監督とのんさん(右)=東京都葛飾区、鬼室黎撮影

2人で山田洋次ミュージアムを訪ねた山田監督とのんさん(右)=東京都葛飾区、鬼室黎撮影

おとなしい日本人、映画館の静けさにも

 山田「映画館にたくさんの人がいた時代は幸せだったと思うなぁ。なんだか日本人は今、おとなしくなっちゃっているんじゃないかね。僕らが学生時代ってのはもっとみんな騒々しかったなぁ。すぐ文句言ったし、抗議したし」

 のん「監督も?」

 山田「そうよ。今みたいな、共謀罪がどうのこうのなんて時代は、毎晩デモで国会に行って、勉強なんか放り出してデモばっかりやってた時代ですね。今の学生はちょっと鈍感だと思うなあ」

 「どんな社会であるべきかと真剣に考えなきゃいけないはずだし、それで政府が間違っていると思ったら抗議しないといけないし。それは人民の権利。そういうことを今はしなくなってきているというのは、映画館の静けさにまで影響しているな、と思えてしょうがないね」

山田洋次監督(右)と対談するのんさん=東京都葛飾区、鬼室黎撮影

山田洋次監督(右)と対談するのんさん=東京都葛飾区、鬼室黎撮影

山田洋次監督とのんさん、世代を超えたスペシャル対談が実現
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2人で山田洋次ミュージアムを訪ねた山田監督とのんさん(右)=東京都葛飾区、鬼室黎撮影
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