話題
同性婚の首相 パートナー男性に、ホワイトハウスが「残念な対応」
アメリカのドナルド・トランプ大統領が初参加したNATO(ナトー、北大西洋条約機構)の首脳会議。そのかたわらで撮影された1枚の記念写真が話題を集めています。メラニア・トランプさんをはじめ、各国首脳の夫人が並ぶなかに1人の男性。同性婚をするルクセンブルク首相のパートナーでした。その記念写真にホワイトハウスがとった「残念な対応」が話題になりました。
写っているのは前列左から、フランスのマクロン大統領の妻ブリジットさん、トルコのエルドアン大統領の妻エミネさん、そしてメラニアさんら。
後列のいちばん左にいるのが、ルクセンブルクのグザビエ・ベッテル首相(男性)の夫、ゴーティエ・デストネさんです。
ルクセンブルクはフランス・ベルギー・ドイツに囲まれた人口57万人の国で、ベッテル首相は44歳。
欧米メディアによると、デストネさんはベルギー生まれの建築家で、2010年からパートナーの関係にあるそうです。
ベッテルさんが首相になったのは2013年。それ以前からゲイであることを公表していたといいます。
「私にはただ一つの人生しかない。自分の人生を隠したくない」「人びとは、私がゲイだから、あるいはストレートだから、投票したわけではない」。
アメリカの新聞ロサンゼルス・タイムズは、ベッテル首相のそんな発言を紹介しています。
ベッテル首相のもと、ルクセンブルクは同性婚を合法化。2人は2015年、正式に結婚しました。
同性婚は、EU(欧州連合)の現役首脳では初めてのことです。
2人はローマ・カトリック教会(キリスト教)のフランシスコ法王から招待を受け、2017年3月にバチカンを訪れました。
キリスト教は歴史的に同性愛を「性の逸脱」ととらえ、最近は認める姿勢も広がってはいるものの、なお信者には根強い反発があります。
そんななか、法王の姿勢は同性愛の容認に向けた「強いメッセージ」と受け取られました。
ロサンゼルス・タイムズに対し、ルクセンブルクの20歳の女子学生は「首相のフェイスブックにはしょっちゅう2人の写真がアップされるけど、記事にも見出しにもならない。みんな良い意味で無関心……いまの社会のあらわれなんでしょうね」と話しています。
とは言え、国内では当たり前でも、一歩外へ出ればまた別の話。
世界中の報道陣が集まったNATO首脳会議で、女性の中に男性が1人でまざっている姿は注目を集め、各メディアでとりあげられました。
もっとも、「ファーストレディーならぬファーストジェントルマンだ」などと珍しがりつつ、同性愛への理解が深まりつつある世相を反映し、報道は好意的でした。
ルクセンブルクの首相は同性婚なので、ファースト・ハズバンドとしてNATO首脳会議の配偶者の集まりに出席。なお、ルクセンブルクの副首相兼経済大臣も同性婚。こうして新しい価値観が普通のことになっていく。 https://t.co/G6WR8Xavll
— Kazuto Suzuki (@KS_1013) 2017年5月26日
NATOの会議で各国首相のファーストレディたちが一堂に集まった場所に、ルクセンブルクの首相の配偶者が、「ファーストジェントルマン」として自然体で参加し、写真に収まっている。ちなみにルクセンブルク首相は同性婚である。 https://t.co/kM3ftx8TQB
— 森岡正博 (@Sukuitohananika) 2017年5月27日
ところが、思わぬ波紋が広がります。やったのはアメリカです。
ホワイトハウスの公式フェイスブックが、冒頭で紹介した「首脳夫人」10人の集合写真を投稿。
写っている全員の名前を1人ずつ列挙したのに、なぜかデストネさんの名前だけがありませんでした。
コメントは1000件を超え、「同性愛への嫌悪だ」「わざとなのか」と非難が相次ぎます。
後に修正され、デストネさんの名前も書き加えられました。
単なるケアレスミスだったのかもしれませんが、水を差す結果となってしまいました。
ちなみにヨーロッパには、アイスランドのシグルザルドッティル元首相(女性)、ベルギーのディルポ前首相(男性)、ドイツのベスターベレ元外相(男性、2016年に死去)、パリのドラノエ前市長(男性)など、同性愛を公言している政治家が少なくありません。
1/11枚