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ついに国も認めた「Kawaii」 文化交流使、増田セバスチャンの野望

文化交流使指名書交付式であいさつする増田セバスチャンさん(右端)。同じく文化交流使に選ばれた音楽家の大友良英さんを前に、「あこがれのアーティストである大友さんとまさか肩を並べるようなことになるとは本当に思わなかった」=17日、東京・霞が関
文化交流使指名書交付式であいさつする増田セバスチャンさん(右端)。同じく文化交流使に選ばれた音楽家の大友良英さんを前に、「あこがれのアーティストである大友さんとまさか肩を並べるようなことになるとは本当に思わなかった」=17日、東京・霞が関

目次

「原宿Kawaii文化」の伝道師として知られる増田セバスチャンさん(46)。海外でも知られる「Kawaii」ですが、「表面だけの派手なものではビジネスができなくなった」と言います。それでも「危機感は全く抱いていない」という増田さん。「Kawaii」の歴史と未来について聞きました。

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「Kawaii」は哲学、自分だけの小宇宙

――そもそも「Kawaii」とは何なのでしょう?

 自分だけの小さな宇宙を作る、そこは誰にも踏み込ませない小さな世界、というのが僕の定義です。

 なので、100万人いれば100万通りのKawaiiがある。それはカラフルじゃなくて、白とか黒とかでも良いし、その人が愛でている物がすべてKawaiiなんですね。

 それを認め合う、あなたの世界観を認める、ということが、今の地球全体を含めて平和になるんじゃないかなと。相手の自由を認めるということはすごい概念。それを僕はKawaiiというものを通して、世界に言っていきたいというのがありますね。

増田さんが手がけた「KAWAII MONSTER CAFE HARAJUKU」=東京都渋谷区
増田さんが手がけた「KAWAII MONSTER CAFE HARAJUKU」=東京都渋谷区

――これからのKawaiiとは?

 Kawaiiという言葉がメジャーになって、Kawaiiを使えば何かビジネスができるんじゃないかって世間が盛り上がった時期があるんです。でも、Kawaiiというのは哲学であり概念であるので、そこのスピリッツがごそっと抜け落ちた、表面的なものは消費されてしまいます。

 今の時期というのは、一旦消費が終わっただけ。今、表面だけの派手なものではビジネスができなくなった、ということ。

 若い人たちは、それを理屈ではなく、肌感覚で、「これは我々に必要な思想なんだ」っていうのが分かっている。表面的なものだとしたら、ここまで世界中に広がっていないですよ。その奥に哲学なり思想なりがあるからこそ、世界の裏側にいる人たちまで熱狂させられるんです。

自身の作品の前で話す増田セバスチャンさん=2016年8月19日、青森県三沢市中央3丁目
自身の作品の前で話す増田セバスチャンさん=2016年8月19日、青森県三沢市中央3丁目 出典: 朝日新聞

「Kawaii」の旗手、文化交流使に

――2017年度の文化交流使に選ばれました。

 まだ歴史の浅い「Kawaii」という日本のポップカルチャーから国の代表を派遣する、というのは、大胆な決定だったと思います。僕自身はこの文化は、戦後の少女文化からの流れがあると考えていますが、日本独自の文化だと世界に認識されてからは20年程度だと思います。

 僕も手弁当で海外を回った実感として、和太鼓や歌舞伎、能などはみんな既に知っていて、何を日本に求めているかと言ったら、今の日本を知りたい、という意見が多かったんですね。その中で僕みたいなポジションの人間が求められた結果なのかなと思います。

文化庁文化交流使のページ
増田セバスチャンさん(右奥)ら2017年度の文化交流使5人と、宮田亮平・文化庁長官(中央手前)=17日、東京・霞が関
増田セバスチャンさん(右奥)ら2017年度の文化交流使5人と、宮田亮平・文化庁長官(中央手前)=17日、東京・霞が関

「Kawaii」で地域再生を

――文化交流使として、何をするんですか?

 ニューヨークではある大学で日本文化研究の臨時教授のような形で日本文化に興味がある人たちと交流します。一方で昼間は僕が英語を勉強して、日本語で話している内容を英語に置き換えて話せるような訓練も積もうと思っています。

 僕は常々、物を作るというのは、言葉をビジュアル化することと考えています。Kawaiiというものの根本をこれからどうやって世界に発信していくか、というところも含めて、言葉を作っていきたいんです。

俳優の森山未来さんも2013年度の文化交流使を務めたことで知られる
俳優の森山未来さんも2013年度の文化交流使を務めたことで知られる 出典: 朝日新聞

 オランダでは現地のアーティストと交流をしながら一つの作品を作り、展覧会までやる。ということを考えています。アムステルダムの元造船所跡地で、荒廃した土地にアートが入ってカフェができたり、今、すごく盛り上がっている場所があります。それは、日本の現状に近いところもあるのかなと。

 例えば、東日本大震災で荒廃した地域にアートが入って、また新しい街に生まれ変わる。その前例のような形で、そこと交流しながら物を作れないかと。

 「Kawaiiとはこういうものですよ」と伝える形ではなく、地域の人と交わってやっていく。日本、そして世界のポップカルチャーを育てていく、というのが今回の目的ですね。

アムステルダムの運河沿いの街並み=2009年10月
アムステルダムの運河沿いの街並み=2009年10月 出典: 朝日新聞

――文化交流使の経験を生かして、将来的にやっていきたいことはありますか?

 とりあえず自分の中では、2020年までを一つの境にして、そこまでやらなきゃいけないことを一つずつやっていこうと思います。その後は、もちろん原宿、Kawaiiというコンテクストでいろんな表現をしていきますけれども、最終的にやりたいのは僕、最初のキャリアである舞台表現なんですね。

 舞台というか、人がその場で体験できるもの。今、音楽もダウンロードできるし、いろんなものがネットでできるが、一つだけダウンロードできないものがあるな、と思ったら、「体験」なんです。

 現時点では言えませんが、そういったその場に来ないと体験ができないような、僕にしかできないスペシャルなショーが、見せられるんじゃないかなと思っていますね。

取材に答える増田セバスチャンさん=東京・原宿
取材に答える増田セバスチャンさん=東京・原宿

増田セバスチャン(ますだ・せばすちゃん)

アーティスト、アートディレクター。
1970年生まれ。演劇・現代美術の世界で活動した後、1995年にショップ「6%DOKIDOKI」を原宿にオープン。きゃりーぱみゅぱみゅ「PONPONPON」MV美術、「KAWAII MONSTER CAFE」のプロデュースなど、原宿のKawaii文化をコンテクストに作品を制作。現在、2020年に向けたアートプロジェクト「TIME AFTER TIME CAPSULE」を展開中。

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