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SNS時代こそ手書き 必殺「ボールペントーク」の文具ソムリエール
文具ソムリエールとしてメディアでその魅力を紹介する菅未里さんは「SNS時代だからこそ手書きのひと手間感がいいんです」と力説します。菅さんに職場の人間関係から恋愛にまで使える文具の魅力を聞きました。
――SNSやメールが主流になり、手書きをする機会が減りつつあります
「減っているからこそ、価値がどんどん上がっているんです。メールで済む話をあえて手書きにすることで、一手間かけた感じが昔よりもある。相手に与える印象が違います」
――恋愛にも役立つそうですね
「わたしは中学時代、気になる子がみんなとは違う消しゴムを使っていたので、同じのを買って、『一緒のだね、こっちの方がいいよね』って声をかけたんです。そのあと、手書きで文通していました。すれ違いざまにサッって(笑)」
――文通いいですね
「今だったら付箋(ふせん)です。付箋を2枚はがして上の方だけメッセージを書いておく。1枚残っていると、それに返事を書いてくれる(笑)。『付箋文通』です」
「手紙だと重いってなることもあるけど、付箋はほどほどに書けばいいじゃないですか。種類がたくさんあって、値段も350円前後だからバリエーションよく使えます」
――たとえ返事が来なくても付箋なら傷つかないですね
「そう。うっかり付けちゃっただけだから。気持ちとしては(笑)上司にも使えます」
「『2枚付いてたよ』って戻されるかもしれないけど、そういうときは『すみませーん、あ、よかったらそれ使ってくださいよ』ってプレゼントする」
――さっそく明日から使えそうです
「文房具は機能性も大事ですが、私は感性の面からもお勧めをご提案したいと思っているんです。ワインを勧めるソムリエのように、五感を使って文房具の楽しさに触れてほしいなと。女性なので『文具ソムリエール』です」
――仕事だと書く文字も気になります
「社会人になると、お礼状とか万年筆で書きなさいって言われることもありますね。でも、あえて買うのもねって」
「そういうときにお勧めなのが『ペチットワン』(パイロット、税込み216円)。長さが10センチちょっとで幅も取らないし、引き出しにポンと。書き味は本当の万年筆です。インクがサラサラッとしていて紙にしみこみやすい。カートリッジ式なので、インクの取り換えもできます」
――こだわると、気持ちが伝わりそうです
「気になるお取引先に贈り物をするときは『レーステープ』(フォーワテック・ジャパン、税別1000円)もいいですよ。普通の茶封筒でもこれで封をするとかわいくなる」
「この間も郵便局のお姉さんに『なにこれ?なんですか?』って聞かれたんですよ。ドヤ顔になってしまいました(笑)。量も結構あるので、惜しまずつかってほしい。貼ってあるだけでテンションが上がります」
――菅さんは文房具に助けられた人生だったそうですね
「もともと人と話すのが苦手なタイプだったんです。そこをどうクリアするかなんですが、よく人のボールペンを観察しては話し掛けていました」
「例えば、ジェットストリームを使っている人がいたら『私も使っているんですよ』、みたいな。ロフトにはオリジナル柄(『ジェットストリームbyLoFt』三菱鉛筆、税別150円)が出ていて、しずくの柄とか、かわいいんですよ。『これ限定の柄なんですよ』と言うのもいいかもしれません」
――最初の切り口としていいですね
「ちょっと距離が縮まったら、『はたらく忍者スタンプ』(こどものかお、税込み540円)はどうでしょう。連絡事項を書いたメモの横に押して『ご確認下さい』と。「なにこれ?」ってなるでしょう?」
「ボールペンという王道から始まって、こういうジョークみたいなので少しずつ砕けた感じを出していく(笑)」
「『有名人のつぶやき付箋』(日本ホールマーク、税込み410円)もお勧めです。モナ・リザやムンクの叫びなど7種類もある。男女問わず職場の幅広い層に受け入れられるかな」
――ところで、これはコーヒー?
「そう見えますよね?実はこれ、『コーヒーノート』(クロニクルブックス、税込み1,296円)というメモなんです。紙コップの外側についてくる、やけど防止の段ボール。これを外して、中のメモを一枚ずつはがして使います」
「机の上に置いておけば『いったいこれはなんなんだ?』って面白がってもらえるし、存在感があるからメモが見つからないってこともないですよ」
――意外性がうけそうです
「『Camino』(キョクトウ・アソシエイツ、A5サイズ税込み378円)というノートもいいですよ。学生さんや新社会人はお金がそんなにない。でも、ちょっと格好はつけたい。なんならステキだねって思われたいですよね」
「このノートは色によって表紙の感触が違う。ちょっと高そうでかっこいい。ピンクは着物みたいなさわり心地です。でも、見た目の割に350円(税別)と安いんです。『この服、実はユニクロ』みたいな感じです。『350円に見えないね』っていう展開を期待して」
――新しい環境で頑張りすぎて落ち込むこともあります
「ご紹介するのは『暮らしのキロク』(キングジム、税込み486円)っていう付箋の『DREAM』バージョン。例えば、『資格試験に受かって、この仕事をしたい』って目標を書いて、手帳に貼ってめげそうなときにチラッと見る(笑)好きな人や尊敬する人に『応援メッセージをお願いします』と言ってMEMOの部分に書いてもらうのもいい」
――活用の幅が広いですね
「文房具は種類や使い方で結構性格が出るんですよ。筆圧の強い人はペンの根元を持つので、気張っているのかな、とか。まぁ、そこまで心理分析しなくてもいいのですけど(笑)」
「服や髪は褒めてセクハラになる可能性があるけれど、文房具はまずならない。『私も使っているんだよ』『おしゃれですね』でもいい、文房具を通して距離をちょっとずつ、ちょっとずつ縮めていって、会話に花を咲かせていただけたらと思います」
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菅 未里(かん・みさと)大学卒業後、雑貨店に就職し、ステーショナリー担当に。現在は、文具ソムリエールとしてテレビや雑誌で文房具の紹介、執筆などの活動をしている。毎日の生活がちょっと楽しくなる文房具を紹介するウェブサイト「STATIONARY RESTAURANT」も運営中。著書に『文具に恋して。』(洋泉社)、『毎日が楽しくなるきらめき文房具』(KADOKAWA)など。
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