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2017年04月22日

「自殺ツーリズム」日本人も参加していた スイスの団体の考えは?

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ヨーロッパ各地へとつながるスイスのチューリヒ中央駅

ヨーロッパ各地へとつながるスイスのチューリヒ中央駅

出典: 朝日新聞社

 自殺幇助が法的に認められ、治癒の見込みのない重病者らをはじめとする「自殺ツーリスト」が世界中から訪れるスイス。外国人の自殺志願者を受け入れているスイスの団体「ディグニタス」への取材で、日本人1人と日本在住の外国人2人が、2015~2016年に自殺幇助を受けていたことがわかりました。

日本では有罪、海外では認められている国も

 ディグニタスがウェブサイト上で公表している統計資料によると、1998年から2016年までの間に計2328人が同団体の支援で自ら命を絶ちました。このうちスイス在住者は7.13%にとどまり、ドイツ(46.35%)や英国(15.34%)、フランス(11.04%)など、ほかの欧州諸国が多くを占めています。

 日本在住者は2014年まで0人でしたが、2015年に1人、2016年に2人が自殺幇助を受けたことが新たに判明しました。メールでの問い合わせに対して、ディグニタスは「3人のうち日本で生まれたのは1人だけです。あとの2人は日本生まれではなく、別の国籍でした」と回答。しかし、性別や年齢、病状、具体的な死亡の日時といった詳細は明らかにしませんでした。なお、日本に住む会員は24人おり、うち21人が日本人、3人が外国籍だとしています(4月7日現在)。

 外務省は、海外で事件・事故や災害などに巻き込まれた日本人の数を「海外邦人援護統計」にまとめています。2015年版の援護統計によると、海外で自殺・自殺未遂をした日本人は60人。うち46人が死亡しました。ただ、この数字はあくまでも在外公館などへの報告・通報をまとめたものに過ぎず、自殺ツーリズムの事例については「把握していない」(外務省海外邦人安全課)ということです。

スイス・ツバイジンメンのスキー場=2013年

スイス・ツバイジンメンのスキー場=2013年

出典: 朝日新聞社

 日本では刑法202条で自殺幇助が禁止されており、6カ月以上7年以下の懲役または禁錮が科されます。一方、海外では、スイス以外にも米オレゴン州やカリフォルニア州、カナダ、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクなどで医師による自殺幇助が認められています。

 日本医師会総合政策研究機構主任研究員の田中美穂さんのネット連載「終の選択 穏やかな死を探して」によると、スイスでは刑法115条で「利己的な動機」による自殺幇助が禁じられているものの、「苦しんでいる人を助けようという利他的な動機から他人の自殺を幇助することは法に触れない」と解釈されているそうです。

スイスへの「自殺ツーリスト」について伝える2014年8月の朝日新聞記事。この時点では「日本人はいなかった」と記載されている

スイスへの「自殺ツーリスト」について伝える2014年8月の朝日新聞記事。この時点では「日本人はいなかった」と記載されている

出典: 朝日新聞社

 スイスの連邦統計局によれば、2014年のスイス国内での自殺者は1028人で、このうち742人が幇助によるもの。さらに自殺幇助を受けた人のうち外国人の数は204人でした。スイスにはいくつかの自殺幇助団体がありますが、外国人を受け入れている団体は限られます。その一つがディグニタスです。

 ディグニタスへの入会に際して求められる前提条件は、「死に至る疾患」や「耐え難く制御不能な痛み」などを抱えていること。入会を認められ、各種の条件を満たせば、団体に協力する医師から致死量の薬物を処方され、自ら投与することで死を迎えることになります。ディグニタスではこうした自殺幇助以外に、会員へのカウンセリングや自殺防止活動、各国での自殺幇助の法制化支援などにも取り組んでいるということです。

「『自殺ツーリズム』は軽蔑的な言葉」

 「自殺ツーリズム」によって世界各国の人々がスイスを訪れる現状についてどう考えるのか。ディグニタスに質問を投げかけると、メールで以下のような返信がありました。

 「自殺ツーリズム」は軽蔑的な言葉です。重度の苦しみを抱えながら、自らの故郷でその苦しみを終わらせる自己決定を行う自由を持たず、海外への渡航を余儀なくされた人々にとって、不快なレッテルでしかありません。この言葉は無能なジャーナリストによって発明され、人生と人生の終わりに関する選択の自由に反対するエセ専門家だけが使っているものです。

 苦しみを抱えてディグニタスを目指す人たちのなかに、スイスの観光スポットを楽しもうという人はいません。そしてまた、人生を終えるためにスイスへ行こうと考える観光客もいないでしょう。ディグニタスへの渡航者と一般の観光客とでは、置かれている環境が違うのです。

 こうしたレッテル貼りは常に問題になりますが、もし名付けるのであれば「自由旅行」(freedom tourism)がより適切でしょう。学術的な正確性を期すなら、WHOでも使用されている「医療観光」(medical tourism)という記述が中立的です。ある自由を行使したいと考える人は、自らの故郷でそれが実現できない限り、その自由を手に入れることができる国を目指すことになります。

出典: ディグニタスからのメールより

万年雪をかぶった4千メートル級の山々と、白銀の氷河の世界が手軽に楽しめるディアボレッツァ氷河は、日本人にも人気の観光地だ=スイス南東部、2008年

万年雪をかぶった4千メートル級の山々と、白銀の氷河の世界が手軽に楽しめるディアボレッツァ氷河は、日本人にも人気の観光地だ=スイス南東部、2008年

出典: 朝日新聞社

安楽死の法制化「賛成」74%

 少し古いデータですが、2010年9~10月に実施された朝日新聞世論調査では、「自分が治る見込みのない末期がんなどの病気になって苦痛に耐えられなくなった場合、投薬などで『安楽死』が選べるとしたら、選びたいと思いますか。選びたくないと思いますか」という質問に対して、「選びたい」が70%、「選びたくない」が22%を占めました。

 また、「『安楽死』は現在の日本では法律で認められていません。『安楽死』を法律で認めることに賛成ですか。反対ですか」という問いには、74%が「賛成」、18%が「反対」と回答しています。

 医師らが行為の主体となる「積極的安楽死」と、最終的に患者自身が命を絶つ「自殺幇助」は異なる概念ですが、日本ではいずれも違法です。今回の事例を受け、法律や倫理、終末期医療などの領域でどういった議論が展開されるのか注目されます。

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