お金と仕事
3年で辞める若者のホンネ ~ネガティブ早期離職者のリアル~
新卒入社後3年以内で3割が退職するという「3年3割問題」は若者叩きの格好の材料として使われるネタですが、実はこの状況は20年前から変わっておらず、今の40代の方も若者のことは笑えません。

新卒入社後3年以内で3割が退職するという「3年3割問題」は若者叩きの格好の材料として使われるネタですが、実はこの状況は20年前から変わっておらず、今の40代の方も若者のことは笑えません。そもそも3年で3割辞めるのは悪いことなのかという点についても、様々な意見があります。

私が早期離職白書をつくる過程で3年以内で辞めた方100名以上にインタビューをしてわかってきたのは、退職には「ネガティブな退職」と「ポジティブな退職」があること。そして、3年以内で退職した方の約7割はネガティブな退職であるという事実です。
ネガティブな退職とは、退職した企業に対する満足度アンケートで「不満」「どちらかと言えば不満」と回答した方を指します。そのため、インタビュー時には「私はポジティブな理由で辞めました」と言っている人でも、前職に不満があればネガティブ退職という可能性もあります。
今回は、そんなネガティブ退職の方々の本音をいくつかご紹介します。
●専修大学卒業後、中堅の証券株式会社に就職。1年2か月で退職し、無職期間を経て、現在はITベンチャーで働くS氏(男性)
体育会系の雰囲気と、お客さんの損を考えずに売る営業スタイルが変われば辞めてなかったと思いますが、企業としてそれは難しいと思います。ああいうスタイルで大きくなってきた会社だと思うので、会社が改善されればというよりも結局は自分の問題です。
むしろ、自分が就職活動をもっとまじめにやっていれば良かったと思っています。体育会系の雰囲気というのは入社前から聞いていたけど、高校まで野球部で体育会の経験もあったので、それと同じ程度だと思ってなめてました。
●学習院大学卒業後、大手地銀に就職。抑うつ状態になり1年2か月で退職。現在はアルバイト。(女性)
(休職制度は?)利用しませんでした。3日くらい会社を休んだあと、支店長に呼ばれて“形式的に”「大丈夫?」と聞かれましたが、遠回しに退職を勧められました。それ以前にも副支店長から「そんなんじゃクビにされちゃうよ」と何度か言われていたので、退職を決意しました。そもそも、休職制度があることなんか知らなかったですし。

●明治大学卒業後、ベンチャーの就活・採用支援会社に就職。1年5か月で退職後、アルバイトなどを経て現在はフリーランス。(女性)
今思うと、就職活動の際の自己アピールの段階から間違っていました。私はゼミで地域活性に関するプロジェクトのリーダーなんかをやっていて、就職活動の際はリーダーシップや統率力をアピールしてました。でも、実際は風呂敷を広げてまず行動するタイプの人間で、プロジェクトマネジメントなんかで要求される、段取り力や調整力等の細かい点は苦手だったんです。
また、当時たまたま会社が3年連続の赤字のタイミングで、給与が下がっていました。人事考課では「頑張りは認めるけど、メインの事務面でミスがあるのは一人前ではない」と言われてしまいました。1年目の冬、終電を逃してタクシーで帰宅した後、自宅で大泣きするということもありました。
●慶応大学卒業後、大手メーカーの営業職として就職。3年ぴったりで外資系に転職したF氏(男性)
転職するにしても、1年で辞めてしまうと次の会社は見つからないと思いました。だから「とりあえず3年はやってみよう」という感じです。転職活動は転職サイトに登録しながら細々やっている感じでしたね。
人間関係は問題なかったです。社風も好きだし、居心地も良かった。ただ、尊敬できる上司はいませんでした。1年目がやっているのと同じ仕事を5年目、10年目の先輩達がやっているのを見ていましたから。
パワハラに近いような扱いを受けた人もいれば、人間関係は良好だったけど「尊敬できる上司がいない」という理由で退職しているケースもありました。一言で「ネガティブ退職」と言っても理由は様々です。
また、一つの特徴として、インタビューをしていると「お金」を一番の理由に挙げた人は一人もいませんでした。給料やお金の問題が離職率に影響しないとは思いませんが、あくまでそれは複数の要素のうちの一つに過ぎません。「給料上げればいいんだろ」などという安易な考えでは早期離職はなくならないのです。
【ライター:井上洋市朗】