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「いじめの過去…」言いふらされない?「4月のいじめ」のアドバイス
もしも、今、いじめに悩んでいる人がいたら。新学期がはじまる前に知っておいてほしいことがあります。進学やクラス替えで人間関係がリセットされる季節。4月という特別な時期をどう迎えればいいのか。いじめの「型」を月ごとに整理したユニークな本『いじめから脱出しよう!』を出版した玉聞伸啓さんに聞きました。
玉聞さんは、東大和市職員として働きながら、インターネットでいじめの相談を受けています。小学校の時はいじめる側、中学校の時はいじめられる側、その両方を経験しています。
玉聞さんのサイトには、これまでいじめに悩む人や家族ら60万以上が訪問しています。いじめの手口や、普通の人がいじめる側になるまでの分析、体験談や、いじめの対策など、様々な情報が掲載されています。
いじめの情報を発信しながら、メールでの相談にも応じてきました。
『いじめから脱出しよう!』は、月ごとにいじめの「型」を整理し、それに応じたアドバイスをまとめています。なかでも4月は進学などで人間関係が大きく変わる特別な月です。
玉聞さんは、いじめられていた人は「過去のこと言いふらされるのではないか? それによって、またいじめられてしまうのではないか?」。気にしてしまうと言います。
そんな不安に対して、玉聞さんは「おそれる必要はありません」と言い切ります。
「4月、進学などで人間関係がリセットされるのは、いじめる人間も同じ。だから、いじめも『ソロ活動』が多くなります」
「そんな時期に他人の悪口を言う人は、まわりから警戒され自滅します。言いふらそうとしても、長続きしません。相手にしないこと。これにつきます」
それでも、これまでいじめられた人にとって不安な時期であることも事実です。新しい環境でできる対策はないのでしょうか?
「話したことがない人と話すんです。無理に友だちにまでならなくていい。ちょっとした会話ができる人を作るだけでいいんです」
話し相手がいることで「いじめにくくなる」と言う玉聞さん。
「だって、会話をしているシーンだけだと、どこまで親しいかわからないでしょ。話し相手がもし親友だったら……と思うと、いじめなんてできません」
話し相手を作る。簡単そうですが、それだって苦手な人がいるかもしれません。
「本当にあいさつだけでいい。天気の話だけでいい。雨が降っていたら『傘持ってる?』とか。それだけでも、外から見たら会話をしている2人に見えますから」
玉聞さんによると、4月は、いじめる側もグループを作っていないので逃げやすく、注意もしやすいそうです。
「もし、いじめられても、グループでいじめられるより、つらくない。いじめが本格化する前にできることはたくさんあります」
LINEをきっかけにいじめがはじまることも少なくありません。最近では、入学前、すでにLINEでグループができあがっていることも珍しくありません。
玉聞さんは、よくある落とし穴として「つい、カッとなってしまう」ことを挙げます。
「LINEは、ずっと履歴が残ってしまいます。たとえその場で相手に謝っても、スクショをとられて拡散する。事情を知らない人は、その画面しか知らないから、うわさが一人歩きしてしまうことがあります」
玉聞さんは、2011年、ネットで応じてきたいじめの相談例をまとめた『いじめと戦おう!』(小学館)を出しています。
新著『いじめから脱出しよう!』(同)では、あらたに月ごとに、いじめの特徴をまとめました。その理由について「いじめの対策はスポーツと同じ」と説明します。
「試合前、相手のビデオを見て研究しますよね。いじめも同じです。時期によって変わるいじめの『型』を事前に把握し、いじめるの人間の考えがわかれば、冷静に対応できます」と玉聞さん。
「いじめる人間は、確実に大丈夫だと思わないといじめてきません。相手だって不安なんです」
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