連載
#34 #令和の専業主婦
106万の壁撤廃、賛成の一方「年金引かれたら家計やっていけない」
「両立するのはとても難しいこと」

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#34 #令和の専業主婦
「両立するのはとても難しいこと」
パートなど短時間で働く人たちの「働き控え」につながっていた「年収106万円の壁」が、早ければ2026年10月にも撤廃され、賃金要件に関わらず厚生年金に加入することになります。当事者に意見を尋ねると、年金を「みんなで負担している感が生まれる」といった声がある一方、「年金が引かれたらやっていけない」という切実な声もありました。
現在、短時間で働く人たちが厚生年金に加入するには、①従業員51人以上の企業②週20時間以上働く③月額賃金8万8千円(年収約106万円)以上という条件がありました。
今回の制度改正で、①の企業規模の条件は2035年10月まで時間をかけてなくなります。
また、「年収106万円の壁」と呼ばれた③の賃金条件も2026年10月に撤廃されます。
厚生年金に加入することで、将来受け取れる年金額を増やすのがねらいだといいます。
この制度改正を、いまフルタイム以外の働き方をする人たちはどう思っているのでしょうか。
withnewsが運営している「#令和の専業主婦」企画のLINEでアンケートをとると、専業主婦・主夫が9人、パートタイムなどフルタイム以外で働く6人の計15人が答えてくれました。
今回の制度改正について、賛成か反対かを聞くと、賛成は8人、反対は6人(無回答1人)でした。
賛成の人からは、「安定した年金受け取りが期待できそう」など、将来的な年金受け取りに期待する声が集まりました。
短時間で働いているという40代の女性は「女性が平等に働けることは、社会に認められる第一歩」とします。他にも賛成の理由を「女性が自立できる」と答えた人がいました。
短時間で働いているという50代の女性は、「みんなで負担している感が生まれる」という一方で、「勤務先の理解は必要。うちの職場は、社会保険に極力入らなくてすむように調整してます。1円でも従業員にかかるコストを減らしたい職場です」と指摘します。
「反対」と答えた人からは、仕事と子育てなどの私生活とのバランスに苦慮する声が寄せられました。
短時間働いているという40代の女性は、自身の健康状態などから「時間的にも体力的にもパートで精一杯なのに、さらに年金が引かれたら家計はやっていけない」とします。
「子どもとの時間を削って労働時間を増やすしかないが、子どもの預け先がない」うえに、ベビーシッターなどの選択肢は金銭的な負担が大きいと訴えます。
専業主婦の40代は「パートとして働いている人は生活に足りない部分を埋めたいだけだからそこから取るのは国民の生活の現状を知らないと思う」といいます。
「将来もらえるかどうかわからない年金のために働いているわけではない」
厚生年金は加入者と会社側が折半して負担するものですが、そのことを心配する声もありました。
不定期で働く40代は「厚生年金は企業も負担しなければならないため、人件費が厳しいところだと時給を減らして賄う可能性が考えられる」といいます。
年収の壁問題をはじめとして、女性の働き方については様々な取り組みが進められています。
一方で、根強く「性別役割分業」が残っており、子育てや家事などケア役割を女性が主に担ったまま、労働力としても見なされ、求められる役割が増えていく状況だと感じる女性が多くいるのも事実です。
アンケートでは、「年収の壁や働き方、ワークライフバランスについて考えていること」も聞きました。
50代の専業主婦は「朝の起床から夜まで働き尽くしています」と答えました。
「パート勤めもしたこともありますが、もっと家族の協力を得ていたらいまもパートで働けていたのかな?専業主婦とは、無給の家政婦みたいに思えてなりません」と自問します。
「(家族から)協力を得られない中、これ以上働かないといけないのか?外で働きたいと思っていても現状から抜け出すこと、変わることに今は大変さを感じてます」
不定期で働く40代の女性は、小学校低学年の子どもが学校に行き渋るようになり、毎日登下校に付き添っているそうです。
子どもが学校に行っている数時間のあいだ、仕事をした際に子どもが体調不良になってしまいました。
「急に休みが取りづらく、働くことの難しさを改めて実感した」といい、いまは夫の休みの日に単発の仕事をしているそうです。
「子育ては片手間ではできない」という声や、子育てや介護、仕事とを「両立するのはとても難しいこと」といった役割の多さに悩む声も聞かれました。
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