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「それじゃ売れないんです」社内で激論 ビール泡立てグッズ開発秘話

「ビールアワー」という商品を知っていますか?

「ビールアワー 極泡ポータブル」を担当した中村友香さん(左)と担当課長の和田香織さん
「ビールアワー 極泡ポータブル」を担当した中村友香さん(左)と担当課長の和田香織さん

目次

 「ビールアワー」という商品を知っていますか? ビールを泡立てるグッズで、家庭でも手軽に本格的な味わいを楽しんでもらおうと、タカラトミーアーツが開発しました。2011年の発売開始以来、シリーズ累計85万個を販売したヒット商品で、花見シーズンに向けて新商品が先日投入されました。商品開発の裏話を担当者に聞きました。

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「ビールアワー 極泡ポータブル」でビールを泡立ててみると……
「ビールアワー 極泡ポータブル」でビールを泡立ててみると……

開花に合わせて発売前倒し


 「今年は開花が少し早くなりそう。3月末の発売を半月前倒しできませんか?」

 桜の開花予想を気にしていた営業担当者からの訴えを受けて、ビールアワーの新商品「極泡ポータブル」の発売日が3月16日に変更されました。

 商品開発を担当したライフ企画1課の中村友香さん(23)は「花見に向けてコンセプトから設計した商品なので、なんとか間に合わせようと必死で調整しました」と話します。

 シリーズ9作目となるこの商品。最もコンパクトな作りながら、これまでグラスでしか使えなかった超音波式を缶ビールでも使えるようにした点が売りで、モーター式と比べてよりきめ細かなおいしい泡を楽しめるといいます。

 「楽しいだけのオモチャじゃない。ちゃんとおいしい泡にこだわろう、と企画しました」と話す中村さんですが、発売までには同僚との対立や、こっそり行った小売店でのショックな出来事など、いくつかの「試練」がありました。

きめ細かな泡が売り
きめ細かな泡が売り

同僚との対立


 タカラとトミーが合併する以前の2000年、タカラから「レッツビアー」というビールサーバーを発売したことがありました。

 本物の雰囲気を疑似体験する「なんちゃってシリーズ」の一環として売り出したもので、当時の担当者が中村さんと同じ部署にいます。

 ビールアワーの新商品コンセプトを決める会議で、当時の担当者から「玩具メーカーらしく、ビールを楽しく飲めるということを前面に出すべきだ。レッツビアーはそれがウケた」と言われ、中村さんとチームのメンバーはこう反論したそうです。

 「競合がなかった当時は楽しいビールの商品ということで売れたかもしれません。でも今は状況が違います。ちゃんと実用性があっておいしさにこだわった商品でなければ売れないんです」

これが「ビールアワー 極泡ポータブル」
これが「ビールアワー 極泡ポータブル」

「オモチャのメーカーですからね」


 おいしさにこだわった商品を作りたい。そんな思いで競合他社の製品も扱っている小売店に向かい、社員であることを隠して商品の違いについて販売員に聞いてみました。

 「タカラトミーアーツさんはオモチャのメーカーですからね~。楽しい商品ですよ」

 販売員の言葉にショックを受けた中村さんでしたが、「それじゃ、本当においしいと言われる商品を作ってやる」という気になったそうです。

 花見の席でも使えるよう、缶ビールに取り付けられる商品にすることにし、モーター式よりもおいしい泡を作ることができる超音波式の採用を決めました。

 超音波を発生させるパーツの設置場所や、当たり具合などを何度も調整。パッキンの強度や、分解して洗いやすくするなど、細かな点まで気を使ったといいます。

 「歴代ビールアワーの担当者は、ほぼ女性です。担当課員に女性が多いということもありますが、ターゲットである30~40代男性の商品に、女性の視点を採り入れていることもヒットの要因かもしれません」

 こうした努力の積み重ねで、ビールメーカーがお客さんにプレゼントするサーバーなどのOEMも手がけるようになったそうです。

パーツを分解して注ぎ口の部分を丸洗いできる
パーツを分解して注ぎ口の部分を丸洗いできる

発売前から手応え


 今回の新作は、商談会での実演の評判も上々で、発売前の段階で問屋から追加注文が入るなど、手応えを感じているそうです。

 中村さんは「ぜひお花見の場所で、缶でそのまま飲むのと、ビールアワー極泡ポータブルを使って飲むのとで、飲み比べをしてください。違いがわかっていただけると思います」と話しています。

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