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「逃げ恥」原作者が考える家事労働 「夫婦って本当に千差万別」

漫画「逃げるは恥だが役に立つ」(c)海野つなみ/講談社
漫画「逃げるは恥だが役に立つ」(c)海野つなみ/講談社

目次

 昨年、大ヒットしたドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS系)。家事を「仕事」ととらえ、就職として契約結婚したカップルを描き話題になりました。原作漫画の著者海野つなみさん(46)に、作品への思いを聞きました。(聞き手 朝日新聞文化くらし報道部記者・長富由希子)

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「時代にあった内容だった」

 ――大ヒットですね。

 時代にあった内容だったんだと思います。ドラマも、エピソードは微妙に違いますが、芯を通るものは原作と同じものを描いて下さった。

 ――家事労働もテーマです。

 結婚すると女性は家事を多く負担しがちです。「家事は女性がやるもの」とか、「夫を支えてあげたい」とか、いろいろな考えや気持ちがまざってそうなっていると思います。

 そこに「家事=仕事」という視点を入れると、2人職場で1人に比重がかかりすぎなのはおかしい、となり、わかりやすい、と思ったんです。

「逃げるは恥だが役に立つ」から(c)海野つなみ/講談社
「逃げるは恥だが役に立つ」から(c)海野つなみ/講談社

「家庭ごとに最適な方法がある」

 ――気持ちが通じ合い、プロポーズされ、「結婚で家事が無償になる」とモヤモヤする主人公に、見た人はどんな反応を?

 2通りありました。一つは、「結婚して家事でお金をもらおうなんてガメツイ」というもの。男性や年配の女性が多かったのですが、「自分たちは『家事=無償』でやってきて、何の問題もなかったのに、なんでお金の問題を持ち込むの?」という反応もありました。

 もう一つは「今までお金をもらっていた仕事が、結婚してタダになるのはおかしいよね」という反応です。

 ――どう感じましたか?

 おもしろいな、と。妻と夫、親と子どもで、意見が違うと「なんでそう思うの?」と話ができて、「そういう見方もあったのか」と発見につながることも。一番うれしいのは、作品で「家事観」や「結婚観」が変わったという声です。「見方」をちょっと変えるだけで、世界って本当にがらっと変わって見えます。それで、生きるのが少しでも楽になってくれたら、うれしいです。

 夫婦や家族って本当に千差万別。むしろ、一つの形を「これが正解」と、みんなが背負うとしんどい人が出る。「うちはこれでうまくいっている」とか、「人とは違うけど、うちはこうやってみよう」とか、家庭ごとに最適な方法があると思います。

「逃げるは恥だが役に立つ」第1巻(c)海野つなみ/講談社
「逃げるは恥だが役に立つ」第1巻(c)海野つなみ/講談社

「逃げることが必要な時もある」

 ――作品名はどこから?

 ハンガリーのことわざから付けました。恋愛でも仕事でも、生きていく上でいろんな場面で使える言葉だと思って。

 不安なら逃げることが必要な時もあり、でも残してきたものが大切であれば、息を整えてから戻ってくることも必要だと思います。


<逃げるは恥だが役に立つ>大学院卒なのに内定ゼロ。派遣切りにもあった無職の森山みくり(25)は、父の元部下で独身の会社員・津崎平匡(ひらまさ)(36)の家事代行として働き始める。みくりは「就職としての結婚」を平匡に持ちかけ、二人は契約結婚。やがて平匡と恋愛関係になり、プロポーズされたみくり。しかし、これまで有償だった家事が、結婚すれば無償になることにモヤモヤして――。
     ◇
 2012年に講談社の月刊女性漫画誌「Kiss」で連載開始。先月24日発売の2月号で最終回。単行本は17年3月に9巻が発売予定。ドラマは昨年10月から放送された(全11回)。登場人物たちがエンディングで踊る「恋ダンス」はケネディ駐日米大使らも踊る姿を動画サイトに投稿するなど、社会現象に。

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