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「奨学金1億円」中国の私立校が話題に 「おれの年収より多い…」
「奨学金の総額1億円」。中国の浙江省にある私立の中学(日本の高校にあたる)「蒼南県樹人中学」の奨学金の額が、現地で話題を集めています。ネット上では「仕事を辞めて入り直したい」「おれの年収より高い」といった意見が飛び交う事態に。この「蒼南県樹人中学」、どんな学校なのか? 巨額の奨学金の目的は? 学校に取材しました。
中国の学校は基本的に公立です。最近では私立の学校も増えていますが、国からの補助金はなく、学校の運営や教員の給与などはすべて学費で賄っています。そのため、学費は公立より高くなります。一般的に私立の学校に進学校は少なく、「お金持ちの子どもの『受け皿』」というイメージが根強いのが実情です。
学校にとって、大学の進学率は重要です。名門大学への進学率は高校のブランドと直結します。政府が指定する公立の「重点学校」になると大学進学率は80%を超え、人気も高くなります。大学進学率をあげるためには優秀な生徒を集めることが大事になってきます。
話題の「蒼南県樹人中学」は浙江省温州市にあります。1995年に設立した比較的新しい私立学校です。
温州は沿岸部にあり農地が少なく、そのため商売をするため海外に出る人が多い土地柄です。中国では「温州商人」の街として有名で、「お金持ちの町」というイメージがあります。そんな土地にある「蒼南県樹人中学」では、ブランド力を高めるため、優秀な教員集めに力を入れてきました。
2016年の教員募集では、次のような待遇が示されています。
・一般教員の年収:12~25万元(約200~400万円)
・担任教員の年収:14~28万元(約230~430万円)
・食事と宿舎は無料
・有給旅行は年に2回
・冬休み(旧正月)の帰省の往復交通費を学校が負担
・教員子女の入学を認める
中国の平均年収は4万元(64万円)であることを考えると、かなりの好待遇であると言えます。
そして今回、「蒼南県樹人中学」が支給した奨学金は、全部で800万元(約1.3億円)に達しました。成績によって、10万元(約160万円)、5万元(約80万円)、4万元(約64万円)、3万元(約48万円)、2万元(約32万円)のランクを用意しています。
県内で上位1300人の生徒は10万元、1800人までなら5万元、2300人だと4万元となり、3300人でも2万元がもらえます。
今年は239人の学生に奨学金が支給されました。
巨額の奨学金に対して、中国版ツイッターの「微博」などでは、様々な意見が投稿されました。
「さすが温州、お金持ち!」
「10万元の奨学金は、いまの年収よりも高い…もう一回中学校に入り直したい」
「もし早く知っておけば、私も樹人学校に入ったのに」
「10万元?!!ウソ!昔、北京大に合格した時でも、1万元の奨励金しかもらえなかった…」
「800万元は広告費としてもそれなりの価値がありそう。無名な高校が瞬く間に、有名高校になったんだし」
「貧しくて優秀な学生にとってはいいことだ!」
巨額の奨学金の狙いについて、蒼南県樹人中学の蒋永洪校長に聞きました。
蒋校長は「今回の主な目的は、勤勉な学生を奨励するためです。そして、優秀な学生を集めるためでもあります」と説明します。
これまでも、200万元(約3千万円)の奨学金を用意してたそうですが「今年は成績がいい学生が増えたため、800万元近くに膨れあがりました」と蒋校長は言います。
最近は、奨学金の効果も現れており、蒼南県樹人中学の大学進学率もだいぶ上がっているそうです。
ちなみに、800万元の奨学金は、学校の理事長である林元洲さんが、所有していた不動産を売却して工面したそうです。
蒋校長は「今後は、今年のような大金の用意は難しいですが、奨学金は続けていきたいです」と話しています。
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