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IT・科学

まとめサイトの盗用、どう対処? 弁護士「プロでなくても使用料」

まとめサイトの無断転載、法律で対処できる?
まとめサイトの無断転載、法律で対処できる?

目次

 一般ユーザーの投稿記事を載せる「まとめサイト」で問題化している記事の無断盗用。自分の文章や写真が盗用されたとき、どのような対応が考えられるのでしょうか。著作権法に詳しい、骨董通り法律事務所(東京・港区)の小林利明弁護士に話をうかがいました。

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引用するには「3条件」

――まとめサイトの記事は、あちこちのサイトの文章や画像を転載しているものが大半です。どんな法的根拠で可能になっているのですか?

 根拠となるのは著作権法です。この法律で大前提となるのが、他人の著作物を無断では使えないということです。

――まず前提として無断転載はダメと。

 はい。

 そのうえで条件付きで、著作権者の許可がなくても他人の著作物を「引用」することを認めています。その目的は、新しい創作・文化活動をサポートするためです。

 最高裁の判例によれば、公表された著作物を適法に「引用」するためには以下の3条件をすべて満たす必要があります。

(1)引用部分がカギ括弧や注釈などで、本文と明確に区分されている。

(2)本文の分量が引用部分を大きく上回るなど、本文が「主」、引用部分が「従」の関係になっている。ただし、量だけでなく質的にも「主従」の関係が必要。

(3)どこから引用したのか出典が明記されている。

「引用」について定めた著作権法の第32条
「引用」について定めた著作権法の第32条

出典を書くだけでは不十分

――そうなると、まとめサイトによくある、他サイトからの転載を組み合わせた記事は・・・

 オリジナルな「主」と言える部分が少なく(2)の主従関係が成立しない場合が多いでしょう。だとすると、適法な引用とは認められません。

――それは、転載元がいろいろなサイトに分散していても?

 はい。他人の著作物を寄せ集めただけならば「引用」とはいえないでしょう。

――大量の画像を転載して、一つ一つに出典を記載している記事もよくあります。

 出典さえ明記しておけば引用ができるという誤解も少なくないようですが、さきほどの条件の(1)と(2)もすべて満たさないと、適法な引用とは認められません。出典を記すだけでは、不十分です。

盗用への対応、選択肢は?

――自分の画像や記事がまとめサイトで盗用された場合、どのような対応が考えられるのでしょうか。

 その画像や記事が著作権法で保護されるものならば、法的措置を講じることができます。裁判もできますが、まずは書面やメール、問い合わせフォームから運営会社に、問題のページのリンクやスクリーンショットとともに、盗用で権利侵害されていることを伝えるという方法もあるでしょう。

――まとめサイトの中には、一般ユーザーが投稿できる「場の提供」をしているだけなので、記事の責任は問われないと主張している企業もあります。削除に応じてくれるのでしょうか?

 プロバイダー責任制限法の定めを念頭においた主張と思われます。動画投稿サイトで例えてみましょう。運営会社はユーザーが動画を投稿できるプラットフォームをつくっただけで、通常、個々の動画の内容に関わっていません。このような場合、投稿動画による権利侵害があっても、運営会社は原則として責任を問われません。

 ただ、同法には運営会社が権利侵害を知っているのに投稿を放置した場合や、会社自身が情報の発信者である場合は会社自身が責任を問われるという定めがあります。ですから、まとめサイトについても通報して削除を求めれば、運営会社が応じることも十分考えられます。

 運営会社自身がライターなどを雇って主体的につくった記事なら、運営会社が情報の発信者とされる場合もあるでしょう。この場合、運営会社に損害賠償を請求できます。まとめサイト運営会社としては、これらの点も踏まえた対応が必要になるでしょう。

権利侵害を知っているのに投稿を放置すれば、運営会社も責任を問われる=経済産業省の資料より
権利侵害を知っているのに投稿を放置すれば、運営会社も責任を問われる=経済産業省の資料より

使用料請求には手間と時間

――盗用された文章や画像の使用料請求はできませんか。

 盗用による損害賠償として使用料を請求することは著作権者の正当な権利といえ、一般ユーザーが投稿した記事により著作権を侵害された場合には、そのユーザーに対して請求することができます。ただその場合、まとめサイトの運営会社や通信会社を相手取り、ユーザー情報の開示を請求しなくてはならない場合が多く、手間と時間がかかります。

 しかし、運営会社の中には、記事や画像の削除依頼をした時点で、使用料などの支払いに応じる企業もあります。

プロでなくても使用料

――使用料とは具体的にいくらなのですか。

 運営会社の中には、プロの写真家や文筆家ではない人に対して、「与えた損害はゼロですね」と支払いを拒もうとする企業もあります。

――普段、文章や写真で稼いでいないでしょ、というわけですね。

 それでも使用料は請求できます。金額の算出手段はいくつかありますが、多いのが「ライセンス料相当額」を損害額とする方法です。具体的金額は法律上定められてはいませんが、たとえば音楽ならJASRAC、文芸作品なら日本文藝家協会など各分野に著作権管理事業者があります。

 自らはプロとして活動していない場合であっても、それらの団体が定める使用料規程は使用料の請求にあたり一応の参考にはなるかもしれません。

著作権管理事業者の例=文化庁「裁定の手引き」より
著作権管理事業者の例=文化庁「裁定の手引き」より

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