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伝統芸なのにインパクトありすぎ! 名古屋が誇る「しゃちほこ踊り」

ディープなお座敷芸「金のしゃちほこの踊り」=2014年撮影
ディープなお座敷芸「金のしゃちほこの踊り」=2014年撮影

目次

 「金のしゃちほこの踊り」をご存じですか。両手と顔を支点に倒立し、しゃちほこのように体を反るポーズを盛り込んだ名古屋お座敷の名物芸です。かなりアクロバティックな動きですが、地元では一般人が挑戦する企画も開かれ、成功者がおよそ9割に。この不思議な踊り、いったい何なの?

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40人が一斉にポーズ

 11月中旬、金のしゃちほこが後方にそびえる名古屋城二之丸広場(名古屋市中区)に、着物姿の女性約40人が集結しました。

 ゆったりとした曲にあわせて30秒ほど踊ると、クライマックスの「しゃちほこポーズ」。一斉に体を反り立てる壮観な光景に約300人の観光客が歓声をあげ、駆けつけた河村たかし市長もあおむけで両足をあげただけでできる奥の手「裏しゃちほこ」を披露しました。

 プロジェクトは、名古屋が誇る伝統文化・歴史の魅力発信を市民ぐるみでめざす「やっとかめ文化祭」(名古屋市などでつくる実行委員会主催)の一環で、今年で2回目の試みです。

 参加者は10~50代と幅広く、若い世代やリピーターの姿も目立ちます。本番までには2度の稽古があり、日本舞踊・西川流四世家元の西川千雅さんが指導。日本らしい所作などについても学びを深めました。

一斉に「金のしゃちほこ」を披露する参加者たち=11月12日、名古屋市中区の名古屋城、川津陽一撮影
一斉に「金のしゃちほこ」を披露する参加者たち=11月12日、名古屋市中区の名古屋城、川津陽一撮影

名古屋では「習得必須」

 しゃちほこの踊りが演じられるのは名古屋だけではありませんが、現在19人の芸舞妓(げいまいこ)が所属する名妓(めいぎ)連組合では「習得必須」。新人はまず、この稽古に励むという特別な位置づけの芸です。

 起源ははっきりしません。芸歴50年を超える大ベテランで組合長の金丸(きんまる)ねえさんは「私がこの世界に入ったとき、すでに先輩ねえさんがやっていた。遅くとも戦前にはあり、大正にもやっていたのでは」と話します。

 なぜ記録がとぼしいのでしょう。国際日本文化研究センターの井上章一教授は著書「名古屋と金シャチ」(2005年)で、この芸は脚さばきによっては裾がめくれ、「見えてしまう」危うさも狙っていると指摘。「助平な事象ほど歴史からは見すてられやすくなる」などと分析しています。

「金のしゃちほこの踊り」=2015年撮影
「金のしゃちほこの踊り」=2015年撮影

裏技「しゃちほこリング」

 金丸ねえさんが若いころは宴席の終盤に演じることが多かったそうですが、今は序盤に披露することも多いそう。わかりやすさとインパクトでメディアに取り上げられる機会も増え、知名度や客からの人気もかつてより高まっているようです。

 日本舞踊などの素養がまるでなくても大丈夫。西川さんは参加者に、手ぬぐいで結んだ「しゃちほこリング」にひじまで通すという裏技を伝授してくれました。

 大阪の元芸者から教わったといいます。両ひじが固定されることで「支柱」がしっかりする、という理屈。蹴り上げたり、腕力まかせに体を押し上げたりするのではなく、地面に手をつき、ひじのあたりに体重をのせながら遠めにおじぎするようなイメージで顔をつけば「おのずと下半身が浮く」感覚になるそう。

 体幹の筋力がある人は向いています。着物で帯をしめるとやりやすく、座布団を挟んでの練習を勧める声もあります。

手ぬぐいを結んで輪をつくり、腕に通すと、やりやすくなる
手ぬぐいを結んで輪をつくり、腕に通すと、やりやすくなる

両ひざあざだらけ…でも成功

 完成度を度外視すれば、すぐにできる人もいます。本番は初稽古から約1カ月後とあって、9割ほどが成功させていました。

 私は――。西川さんや同志の皆さんから温かいアドバイスもあり、一時は両ひざあざだらけで筋肉痛にも苦しみましたが、コツをつかみ、「リング」なしでもできるように。本番も成功しました。

「金のしゃちほこ」を披露する原知恵子記者=名古屋市中区、川津陽一撮影
「金のしゃちほこ」を披露する原知恵子記者=名古屋市中区、川津陽一撮影

 西川さんらの願いは「『ハードルが高い』と思われがちな伝統芸能を、しゃちほこの体験を入り口に身近に感じ、楽しんでもらうこと」だといいます。

 危険も伴うため、けがには細心の注意が必要ですが、「できる人が増え、名古屋で、はやってほしいです」と話しています。

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