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ド派手サックス奏者の武勇伝 ギャラ120円、大食い、池ポチャ…

ジャズサックス奏者のユッコ・ミラーさん
ジャズサックス奏者のユッコ・ミラーさん 出典: 朝日新聞

目次

 ジャズサックス奏者ユッコ・ミラーが、いろんな意味でとんがってる。ルックスもさることながら、「東急ミラクル線」に乗って「わりと近い星」からやってきたという設定が、いつかの「○○こりん」を彷彿させるような……。一方のプレーはというと、アバンギャルドでカッコイイ。何よりも、自ら道を切り開くひたむきさが、元気をくれるんです。

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「ミラクル星から来た5歳」

――9月にメジャーデビューしました。プロ活動自体は19歳で始めたそうですが、いま何歳なんですか?

ユッコ・ミラーさん

ん? あ、5歳です。

――ごっ…?

ユッコ・ミラーさん

ミラクル星から来た5歳です。

――出たーっ(笑)

ユッコ・ミラーさん

 ミラクル星は地球より時間の流れがゆっくりなんですよ。だから5歳なんです。

――その設定って自分で決めているんですか?

ユッコ・ミラーさん

 よく事務所にやらされてるとか言われますけど、一切なくて、事務所に所属する前からあるんですよ。設定というよりも、本当のことなんです。
ユッコ・ミラーさん。自称「ミラクル星生まれの5歳」
ユッコ・ミラーさん。自称「ミラクル星生まれの5歳」 出典: 朝日新聞

初めてのギャラは120円

――サックスを始めたきっかけは?

ユッコ・ミラーさん

 (※ここからは、なぜか地球での年齢ベース)
 高1のとき、友達が吹奏楽部に入りたいって言ってたので、半分嫌々ついていきました。中学のときも剣道とかやってたけど、自分だけの特技みたいなものが何もなかったので、ずっと探してはいたんです。それがサックスと出会って、音を出した瞬間、「これが自分の武器だ!」みたいな衝撃が走って。プロになりたいって思いました。

――それまで音楽は?

ユッコ・ミラーさん

 3歳からピアノをやってたけど、好きではなかったですね。やらされてる感がすごいあったんで。

――サックスは嫌にならなかった

ユッコ・ミラーさん

 サックスって、表現をコントロールできるすごい楽器だと思います。それを演奏するのが楽しくって、ひたすらうまくなりたかった。できないことがあると悔しくて。練習して、気づけば10時間経ってたってこともザラにありました。

――10時間!?

ユッコ・ミラーさん

 学校の警備員さんが、朝6時にならないとカギを開けてくれないんですよ。で、6時から8時20分くらいのホームルームまで音楽室で練習して、早弁して、昼休みにまた30分練習して。放課後は部活が終わったら、路上ライブをやっていました。

 私、三重県出身なんですけど、伊勢の田舎なんで、ライブハウスも、ジャズクラブもないんです。でも、将来プロになるために、何か活動を始めないとって思ってて。なので高2から、伊勢市駅でひとりで吹いてました。

――反応はどうでしたか?

ユッコ・ミラーさん

 最初はみんな通り過ぎていくだけだったけど、毎日やってると、近くの工事現場のおじさんが来てくれるようになって。「これでジュースでも買いなよ」って、120円くれたんです。もう、すっごいうれしくて。これがギャラだ!みたいな(笑)。記念すべき最初にもらったお金って感じで、ずっと取ってあります。

あの大物に「レッスン・プリーズ!」

――エリック・マリエンサルが師匠なんですよね? 彼が参加していた「チック・コリア・エレクトリックバンド」は、フュージョン界の伝説です

ユッコ・ミラーさん

 高3で、CDを聞いて、この人に習いたい!って思いました。

 チャンスを狙ってたときに、楽器屋さんで「エリック・マリエンサル来日」って書いてあるポスターを見て、コンサートの主催者に電話をかけたんです。「エリックに個人レッスンを受けたいんだけど」って。楽器屋さんにプロモーターの番号も聞いて電話したけど、両方に断られました。

 でも諦めずにコンサート当日、会場の近くで待機してたら本人が現れて、「レッスン・プリーズ!」って直接言いました。それからは来日するたびに教えてくれて、「もう弟子って名乗っていいよ」って言ってもらいました。

――まさに「当たって砕けろ」ですね

ユッコ・ミラーさん

 ほかにも、世界3大ジャズビッグバンドの一つに「グレン・ミラー・オーケストラ」っていうバンドがあるんですけど、高3のとき、伊勢でコンサートをやったんです。チャンスだ!と思って、出待ちして、彼らの前で吹きまくりました(笑)。そしたら、「明日からツアーに参加しないか」って言ってくれて。でも、「明日は学校があるから行けません」って断りました。

――えーっ、もったいない!

ユッコ・ミラーさん

 でも、何年か経って正式に依頼をいただいて、今年の来日ツアーへのゲスト出演が決定したんです。テレビでこのエピソードを話したら、グレン・ミラーの招聘(しょうへい)元の人が見てくれてたみたいで。

――去年、女性サックス奏者の第一人者、キャンディ・ダルファーとも共演してますけど、それは?

ユッコ・ミラーさん

 サイン会のときに、サックスを構えた状態でCDを渡しました。そしたら「ちょっと吹いてみて」って言ってくれて。ちょっとじゃなくて、いっぱい吹いてアピールしたら、「明日のライブに呼びたい」って言ってくれて、即決です。もう夢の世界にいるような、ふわふわした感じでしたね。
ユッコ・ミラーに翌日のライブ出演をオファーした、キャンディ・ダルファー
ユッコ・ミラーに翌日のライブ出演をオファーした、キャンディ・ダルファー 出典:REUTERS

――すごいバイタリティーですね

ユッコ・ミラーさん

 私から言えば、普通なんですよ。チャンスを逃したくないというか、もったいないと思って。後悔したら嫌じゃないですか。

「SASUKE」で池ポチャ

――芸名の「ミラー」ってグレン・ミラーからとったんですか?

ユッコ・ミラーさん

 ミラクル星のミラーです。ミラクルっていう響きが好きなのと、奇跡を起こしまくるために地球にやってきたんで。

――ミラクル星ってどこにあるんですか?

ユッコ・ミラーさん

 わりと地球の近くに。「とうみら線」っていって東急ミラクル線に乗って、20分くらいです。

――そのキャラ、ぶっちゃけ奇抜さを狙っていません?

ユッコ・ミラーさん

 全然ないです。別に目立ちたいわけじゃなくて、結果的に「あ、目立ってるわ」みたいな。

――参加型スポーツ番組「SASUKE」にも出てますよね

ユッコ・ミラーさん

 試しに応募したら受かっちゃった。そのときは、スタート前にサックスを吹きまくりました。最初のロングジャンプはクリアしたけど、次の丸太にしがみつくアトラクションで池に落ちちゃって。
ユッコ・ミラーさんは、「SASUKE」に出演したことも
ユッコ・ミラーさんは、「SASUKE」に出演したことも 出典: 朝日新聞

――体張ってますねえ

ユッコ・ミラーさん

 「元祖!大食い王決定戦」にも出ました。私、打ち上げでめちゃくちゃ食べるんですよ。それをたまたま番組関係の人が見てて、出ることになったんです。テレビには映れたんですけど、予選でアウトっていう。いやもう、すごすぎるんですよ、みなさん。

――やっぱ目立ちたいんじゃ……?

ユッコ・ミラーさん

 違うんですよ。なんか、「ジャズ=ジャズクラブ」とか、「ジャズ=ライブハウス」とか、そういうものをぶっ壊したいと思って。そこだけでやってたら、音楽ファンとかジャズファンにしか浸透しないから。

――おお!

ユッコ・ミラーさん

 このいでたちも、私が趣味でやってるというか、好きだからやってるだけで。プレーのことはやっぱり、エリックが言ったことを大事にしてます。


――エリックが言ったこと?

ユッコ・ミラーさん

 「ユッコにしかできない音楽を追求していけ」みたいに言われて、衝撃を受けました。私なりに「こういう風に表現したい」っていうこだわりがあっても、日本だと「それ、よくないよ」って言ってくる人がいるんですよ。みんなと同じような、誰かに似ているようなところを押し付けてくるというか。
 でも、私がそれをやりたいと思わなければ、いくらすごい人の言うことでも無視って感じで(笑)。そうしないと、自分の個性が消えちゃうじゃないですか。だから、自分にしかできない音楽を大事にしています。

 本名大西由希子(おおにし・ゆきこ)。今年9月、アルバム「YUCCO MILLER」でメジャーデビュー。現在、リリース記念の全国ツアー中。11月から「グレン・ミラー・オーケストラ」の日本ツアーにゲスト出演する。

この記事は10月29日朝日新聞夕刊(一部地域30日朝刊)ココハツ面と連動して配信しました。

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