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ベトナム、驚きの「インスタント麺大国」 人気は“かやくマシマシ”
ベトナムは世界屈指の即席麺大国です。最近は、経済成長で豊かな中間層が増えた結果、これまで売れていた袋麺からカップ麺に人気がシフトしています。ベトナムの国民的インスタント麺として有名な「ハオハオ」は、日系企業の製品。市場の変化が激しい中、ベトナムでは国民食「フォー」をはじめとしたベトナム料理風の麺のみならず、キムチ入りラーメンやうどんなど、ユニークな商品が売られています。
世界ラーメン協会(World Instant Noodles Association)によると、ベトナムでの即席麺の総需要は世界で4番目の多さです。2015年は48億食と、世界の総需要の5%を占めたそうです。人口は約9170万人(15年)で、1人あたり年間50食以上食べた計算になります。
ちなみに、1位は中国(香港を含む)で、404億3千万食。2位のインドネシアは132億食で、3位の日本は55億4千万食でした。
現地の即席麺市場では、日本の食品メーカーが高いシェアを占めています。シェア5割超を誇るのが、エースコック(本社・大阪)の現地法人であるエースコックベトナムです。
同社は7月、新たなカップ麺「ハンディハオハオ」を売り始めました。これまでよりも肉や野菜などのかやくの量と質を充実させています。価格は8千ドン(約36円)と、3500ドン(約16円)程度の袋麺の倍以上します。最大の都市ホーチミンや首都ハノイなどの都市部で売り始め、10月からは販売網を全国に広げるそうです。
ベトナムの南部に位置するホーチミン。その中心部から車で40分ほどの工業団地に、エースコックベトナムの「ホーチミン第2工場」はあります。
建屋に入ると、麺を揚げる油と魚醬の香りが漂っていました。三つある製造ラインのうち、一つがカップ麺専用です。このラインではハンディハオハオなどのカップ麺を、年間で最大1億8千万食つくる能力があるそうです。
来年には、ベトナム北部にも新たなカップ麺の製造ラインをつくるそうです。
エースコックベトナムの主力商品は、2000年に発売した袋麺の「ハオハオ」です。ベトナムに進出した1995年ごろ、市場で売られていたのはタイ料理の「トムヤンクン」味などがほとんどで、必ずしもベトナム人の好みにあったものではなかったそうです。現地風の味付けにしたハオハオを売り出したところ、大ヒットしました。
いまでは「ハオハオを知らない人はいない」といわれるほど浸透していて、国内で売れる即席麺の三分の一を占めるそうです。
国内の即席麺総需要は13年にピークの52億食を記録した後、2年続けて減りました。ベトナムでは年5~6%台の経済成長が続いていて、国民1人当たりのGDP(国内総生産)は15年前の5倍に伸びました。都市部を中心に中間層が増え、食の好みも多様化しました。
ファストフード店やコンビニエンスストアが続々とでき、生活スタイルは一変。その結果、即席麺も、袋麺より手軽に食べられるカップ麺の需要が伸びつつあるそうです。
エースコックベトナムの梶原潤一社長は「ホーチミンでは、袋麺よりもカップ麺が売れる店が出てきた。これまでは考えられなかったことだ」と話しました。同社は17年中に、即席麺に占めるカップ麺の販売比率を現在の2%から5%に高める計画を掲げています。
ライバル各社も、味や具材にこだわったカップ麺を売り込んでいます。日清食品ホールディングスは7月に、日本でも親しまれている「カップヌードル」を現地で発売しました。価格は約1万2千~1万5千ドン(約55~68円)と高いですが、中間層向けに需要を掘り起こす狙いです。
韓国や現地のメーカーも、カップ麺を相次いで売り出しています。
ホーチミンやハノイにあるスーパーやコンビニエンスストアを訪ねると、多種多様なカップ麺が棚を埋めていました。
日本貿易振興機構(ジェトロ)ハノイ事務所の川田敦相所長は「ベトナムはいまも人口が増え、農村部も豊かになりつつある。消費を拡大するチャンスはある」と指摘します。環太平洋経済連携協定(TPP)にも参加しており、発効すれば即席麺の輸出拠点になる可能性もありそうです。
エースコックベトナムはいまも米麺などを、北米や欧州など世界40カ国以上に輸出しています。買っているのは、主にベトナム系の移民だそうです。
同社は今後3年で、売り上げに占める輸出の割合を今の8%から20%に高める方針です。欧米を中心にヘルシーな印象をもたれている米麺の売り込みを強化し、移民以外にもファンを増やす考えです。
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