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台湾ラーメン「味仙」、東京上陸 「謎メニュー」には理由があった
「台湾ラーメン(アメリカン)」。誤植かと疑ってしまうメニューを掲げる台湾料理店が、東京・神田にあります。名古屋の激辛グルメ「台湾ラーメン」を生んだ「味仙」の、初の愛知県外の店舗です。オープンから約2カ月たっても店頭で質問が絶えないという、この謎メニューの正体を聞くと、意外とマニアックな世界が広がっていました。
平日の正午。ラーメン激戦区の東京・神田にある「郭政良 味仙 東京神田店」の前に、行列ができていました。幅3メートル、奥行き10メートルの小さな店舗の中では、20席が満席です。
入り口脇の券売機の先頭には「台湾ラーメン」のボタンが。さらに隣には「台湾ラーメン(アメリカン)」のボタンがあります。しかし「アメリカン」がなんなのか、説明書きが見当たりません。
一人で両方を頼むと恥ずかしいことになりそうだったので、二日に分けて、食べ比べました。
明らかに、辛さが違います。
台湾ラーメンは、中太麺のうえに、激辛の味付きミンチが乗っています。辛みが溶け出したスープには、輪切りの唐辛子もがっつり入っています。私は「CoCo壱番屋」で6辛のカレーを常食する辛い物好きですが、それでも台湾ラーメンの辛さはなかなかのもの。
麺とミンチをスープの中でよく混ぜて食べると、うまみと辛みが絶妙です。汗を吹き出しながらも、食べきってしまいました。
アメリカンでも入っている具材は同じ。しかし、辛みが和らいでいます。同店の林幸彦・サブマネージャーは「ミンチを丼に入れる際、アメリカンは穴つきのお玉を使っているんです。ミンチの辛い汁が入らないので、その分、辛みが和らいでいます」。
ちなみに「アメリカン」は、味が薄めの「アメリカンコーヒー」から拝借した呼び名とのこと。愛知の店舗では、通常より辛みが強い「イタリアン」も作っていますが、メニュー数を絞り込んでいる東京神田店では今のところ出していません。
一方、東京神田店には「台湾ラーメン(塩)」という珍しいメニューがあります。
本来しょうゆベースの台湾ラーメンのスープを、塩ベースに変えたもので、味がマイルドになっています。さらに辛みを抑えた「台湾ラーメン(塩)アメリカン」もあり、辛いのが得意でない人には一番おすすめだそうです。
ちゃんと覚えないと、券売機のボタンを押し間違えてしまいそうですが・・・。
この台湾ラーメン(塩)。愛知でも今池本店(名古屋市千種区)などで食べることはできず、「日進竹の山店」と「焼山店」の2店舗にしかありません。
なぜ、愛知でもあまりないメニューが、東京にあるのでしょうか。
実は、愛知と東京に計12店舗ある味仙は、5人兄妹で手分けして経営しています。そのため、少しずつ運営手法が異なるそうです。
台湾ラーメン(塩)は、東京神田店を経営する三男・郭政良氏が考案したオリジナルメニューのため、政良氏の経営店だけでしか食べられないのだそうです。
そもそも、名古屋グルメなのに、なぜ「台湾ラーメン」なのでしょうか。味仙は1960年創業です。それから10年ほどたった頃、台湾で食べられている「担仔(タンツー)麺」を、激辛にアレンジして出し始めたのが最初だと言います。「台湾人が作ったから台湾ラーメン」という理由で、名付けられたそうです。
「台湾ラーメン(アメリカン)」。一見、不可思議に見えるメニュー名にも、長い歴史がありました。
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