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秋田の「500歳野球」今年も超人たちが集結 ギバちゃんも登場
「500歳野球」をご存じですか? 敬老の日に合わせて秋田県大仙市で開催される大会で、1979年から続いています。オーバー500歳が条件で、若手を入れるとその分、ベテランを入れないとダメ。電卓片手にメンバー選びをする独特のルールです。「500歳野球は秋田が誇るスポーツ文化」。有名なあの俳優も、元気いっぱいにプレーしていました。(安藤嘉浩編集委員)
1番ショート柳葉―。
場内アナウンスとともに右打席に入るのは俳優の柳葉敏郎さん(55)です。「刈和野新和会」の背番号3。初球を打ったものの、ショートゴロに倒れました。一塁ベースを駆け抜けた後、苦笑いでベンチへ戻っていきます。
「毎週集まって練習してんだ。まあ、地元の飲み仲間だから、みんなでワイワイやるのが楽しいの」
柳葉さんは出身地でもある同市在住。この大会に出場するのは5回目だそうです。大会第2日(18日)の2回戦。三回の第2打席では右中間へ鮮やかな二塁打を放ち、二塁ベース上で満面の笑みを浮かべてガッツポーズをしました。
「笑顔のため、ケガをしないため、一生懸命やるんだ。500歳野球は秋田が誇るスポーツ文化。その仲間に入れさせてもらい、最高に幸せなんだよね」
この大会は出場選手9人の合計年齢が500歳以上でなければなりません。同市教育委員会の伊藤優俊・スポーツ振興課長によると「全員が55歳だと5歳足りない計算」になります。
50歳になる学年(今年は67年4月1日以前生まれ)から出場できますが、若い選手(49歳)を起用すれば、同時に年齢が高い選手も出場させなければならないので悩ましいです。ベンチでは電卓が必需品になります。
グラウンドは学童野球サイズ。投球板―本塁16メートル、塁間23メートルで、外野は両翼75メートル、中堅85メートルにネットフェンスを設置します。
「軟式野球だけど、けっこう本塁打も出る。うれしいんだ、これが」と伊藤久・神岡野球連盟会長(68)。旧神岡町(現大仙市)の職員として、大会創設時から運営に携わってきました。
職場、町内、旧友……。チームカラーは様々です。「平成クローバーズ」は審判仲間で結成されました。斎藤元三郎さん(70)は県野球協会の元審判部長。「この時だけは俺らもプレーヤー。俺らの試合は審判がやりにくいだろうけどな」と笑います。
今年は県内184チームが参加し、トーナメント方式で覇権を競いました。優勝するには5日間(17~21日)で最大8試合を戦うというハード日程です。
秋田県内には「550歳」「600歳」「650歳」といったカテゴリーの大会や、予備軍による「360歳野球」もあります。
「500歳野球」は県外にも広がっています。その代表が京都府です。夏の高校野球の前身である第1回全国中等学校優勝野球大会(1915年)の決勝で対戦した京都二中(鳥羽高が継承校)と秋田中(現秋田高)の交流がきっかけになったそうです。
そして来年7月には「500歳野球」の全国大会が初開催される予定です。大仙市では全国から出場チームを募集しています。
柳葉さんの「刈和野新和会」は「西仙北ク」に1―9で敗れ、2回戦で敗退しました。柳葉さんは最後まで大きな声を出して仲間を鼓舞し、相手チームと交流しました。
「同じ地元のチームでね。しょっちゅう練習試合もしてっから、みんな、よく知ってんだ」
試合が終わると、真っ先にグラウンド整備を始めました。最初から最後まで、実に楽しそうでした。
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