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2016年09月22日

貧困たたき「自分も経験…」当事者の思い 「報道にも違和感あった」

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東京・新宿であった「貧困たたき」に抗議するデモ=2016年8月27日

東京・新宿であった「貧困たたき」に抗議するデモ=2016年8月27日

 NHK「ニュース7」の子どもの貧困に関する報道が、ネットで「捏造(ねつぞう)では」と「炎上」しました。女子生徒が登壇したイベントに関わり、自らも貧困家庭で育った大学生、相馬美季さん(18)は「報道にも違和感があった」と語ります。ネットで批判を書き込まれた経験があるという相馬さん。当事者が考える「貧困」との向き合い方とは?(朝日新聞社会部記者・仲村和代)

「映画」「千円ランチ」に批判

 問題となったのは8月18日の「ニュース7」。神奈川県の「かながわ子どもの貧困対策会議」の一環として開かれたイベントでスピーチをした女子高校生に焦点を当て、自宅での取材などを交えて伝えたものでした。

 放送後、ネットには「自宅にアニメグッズがたくさんあり、散財してる」「冷房みたいなものが映っていた」と投稿が続々。女子生徒のものとされるツイッターの過去の投稿から、「何度も映画を見ている」「千円を超すランチを食べている」と指摘し、「これは貧困ではない」という批判が相次ぎました。学校や自宅をさらす書きこみもありました。

 女子生徒が参加したイベントのきっかけを作ったのが、神奈川県の大学生、相馬美季さん(18)。女子生徒への中傷は「明らかに行きすぎ」としつつ、報道にも違和感があったといいます。思いを聞きました。

「生活苦しいヤツは声あげろ」というメッセージを掲げて歩くデモ参加者=2016年8月27日

「生活苦しいヤツは声あげろ」というメッセージを掲げて歩くデモ参加者=2016年8月27日

「貧困対策会議」ができるまで

――会議に関わるきっかけを教えてください

 高校の時、様々な問題を話し合う会議に参加しました。テーマが子どもの貧困でした。年収でいうと122万円以下の世帯が「相対的貧困」にあたると知り、「あ、これ、うちのことだ」と思ったんです。

 別の子がアフリカの貧困について語った後、「うちは電気とガス止められたことがある」と話したら、みんなが驚いて。同世代にも全然理解されていなかった。そういう問題意識が「かながわ子どもの貧困対策会議」につながりました。

 イベントは、その中で若い世代が中心になって考えました。大人には話せなくても、同世代なら話せることもあるはず。自分たちができる支援を考えていこうという場でした。

2016年5月22日にあった「かながわ子どもの貧困対策会議」の初会合。大学生や高校生も出席し、積極的に発言した

2016年5月22日にあった「かながわ子どもの貧困対策会議」の初会合。大学生や高校生も出席し、積極的に発言した

実体験が一人歩き

――今回の「炎上」をどう受け止めましたか

 彼女のスピーチはとてもよかったと思います。でも、報道には違和感がありました。イベントの趣旨より「貧困当事者の女子高校生が語った」という話題性が強調されていた。

 私も、5月に報道されたことがあり、実体験を語った部分だけが強調されました。私は相対的貧困について理解してもらうために、わかりやすい例として自分の体験を話しますが、そこだけが一人歩きするのは嫌です。

 貧困家庭でも、高校生になればバイトができる。今の私の見た目で「ガスが止められた」という話だけを語っても、世間がイメージする「貧困」とは食い違ってしまう。相対的貧困は見えにくいからこそ、伝え方は大切です。

ネットで批判「仕方ない面あるけど…」

――自身が報道された際の反応はどうでしたか

 ネットには、批判も書かれました。自分と違うものを受け入れたくないという人はいるし、こういう活動に批判がくるのは、仕方ない面もあると思います。でも、報道を見て考えてくれたということでもある。「じゃあ、文化的生活って何?」と、議論のきっかけにもなります。

 ただ今回は、個人の否定。個人情報までさらすのは明らかに行きすぎです。

当事者として「違うな」と思うこと

――表に出るのをやめようとは思いませんでしたか

 怖いという思いはあるけど、萎縮しちゃうのもどうかと。福祉関係者、県の職員など、様々な人が発言をしているけど、当事者として「違うな」と思う面があった。

 例えば、学習支援や「子ども食堂」といった取り組みは確かに大事だけど、その場で勉強を教えて終わり、その日のご飯を食べて終わり、となっていることが多い。もっと継続的な支援につなげる必要があると思います。

 まず、その子が何をやりたいのか耳を傾ける。まだ考えられていないなら、身近な目標を一緒に見つける。みんな同じところをゴールにするのではなく、一人ひとりに応じたきめ細かい対応が必要だと思います。

貧困だから進学できないの?

――支援の乏しさが進学の機会を奪い、貧困が連鎖する現実もあります

 「貧困だから進学できない」という言い方には、違和感があります。実際は様々な制度があり、覚悟を決めれば進学はできるはず。できないとしたら、情報にアクセスできないとか、親が手続きをしたがらないとか、別の問題がある。一緒くたに「貧困だから」と説明すると、納得できない人はいると思います。

 私は中2の時、父を亡くしました。私は貼り紙をくまなく見るような性格で(笑)、学校で「あしなが育英会」の貼り紙を見つけて、担任に相談しました。母は外国人なので、日本語は読めませんが、手続きの時は横にいてはんこだけ押してもらいます。

奨学金の説明会で配布資料を読む大学生

奨学金の説明会で配布資料を読む大学生

出典: 朝日新聞

 スクールソーシャルワーカーを目指し、私立大学に通っています。受験前、「入学金がすぐに払えないかもしれないけどいいですか」と相談し、合格後に財務課の人と払う方法を一緒に考えました。

 返済型の奨学金ももらっているので、卒業後は15年かけ、月4万円ほどを返済していく計画です。返せない額ではないと思っています。友人も、給付金がもらえる学校を見つけて社会福祉士を目指しています。

 やる気があれば、やりたいことはできるんだということも、伝えていきたいです。

貧乏なのに進学した罰…〝30秒で泣ける漫画〟の作者が描く貧困問題
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「貧乏なのに進学した罰」(1)
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出典:作・吉谷光平
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