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会議室でペンライトふりふり 100万色を無線制御、男たちの美学

フリフラのペンライトタイプ。100万色の明るさを出せる
フリフラのペンライトタイプ。100万色の明るさを出せる

目次

 ライブの定番グッズ、ペンライトが、ものすごい進化を遂げています。ポキッと折って光らせるサイリウムに代わって、最近の主流は電池式のLEDペンライト。いまや主催者が観客のライトを一括制御できるようにまでなっています。

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会場を一瞬で星空に

 音楽記者という仕事柄、ライブに行くことが多いのですが、昨年の吉井和哉さんのライブ演出には度肝を抜かれました。

 会場入り口で一人ひとりに配られたのは、まるで変身ウォッチのようなリストバンド。「これ、何?」「スイッチ入れても、何もないよ?」。ざわつく周囲と同様、内心ドキドキしつつ手首に巻きました。

フリフラの光が会場を埋め尽くした、JUJUのライブ=2014年10月12日、さいたまスーパーアリーナ、photo by Masayuki Noda
フリフラの光が会場を埋め尽くした、JUJUのライブ=2014年10月12日、さいたまスーパーアリーナ、photo by Masayuki Noda

 変化が表れたのは、ラストの曲がサビに差しかかったとき。客席を埋めた5千人の手元が、一斉に青白く光り出しました。

 実はこれ、この日がツアーファイナルだった吉井さんとバンドメンバーへの、スタッフからのサプライズ。「STARLIGHT TOUR」というツアータイトルにかけて、会場を一瞬で満天の星へと様変わりさせたのです。

客席に虹、バンドロゴも

 後日、このとき使われたのが、「FreFlow(フリフラ)」という商品だとわかりました。

 光の色、明るさ、点滅のスピードを無線で制御する仕組みで、ペン型とリストバンド型の2種類。主催者側が貸し出したり、ツアーグッズとして2千円台で販売されたりしています。

 光は100万色、明るさは100段階……と言っても、ここまでくると肉眼ではわからないレベル。送信機から半径200メートル以内であれば、数の制限なくライトを制御できます。

 また、1台の送信機で10まで点灯パターンを制御できるので、会場を10のブロックに分けて、ブロックごとに制御することも可能。たとえば客席を虹色に染めたり、センターステージから同心円状にブロック分けしたり。バンドのロゴや国旗といった複雑な模様も描き出すことができます。

まるで工事現場の誘導棒…

 開発した「ソニーエンジニアリング」の串田秀明さんと、販売やコンサート会場での運用などを手がける「ソニー・ミュージックコミュニケーションズ」の関口博樹さんに話を聞きました。

フリフラ開発チームの2人。ソニーエンジニアリングの串田秀明さん(左)と、ソニー・ミュージックコミュニケーションズの関口博樹さん
フリフラ開発チームの2人。ソニーエンジニアリングの串田秀明さん(左)と、ソニー・ミュージックコミュニケーションズの関口博樹さん

――なぜフリフラの開発を?

串田 2010年ごろ、ソニーエンジニアリングで何か新しい商品ビジネスをやろうと、私を含め8人くらいが集められました。その中にアニソン好きなオタクと呼ばれる人間がいて。彼の「ペンライトが自動で動けばいいね」っていう発想がきっかけです。とはいえ、最初に関口さんのところに持っていった試作品は、ことごとく酷評されて……。

関口 デカすぎて、工事現場の誘導棒みたいでした(笑)

「制御なんかされたくねえ」

――2012年に、スマイレージのライブでテストをしたそうですね。

関口 最初は社員が100人くらい会議室に集まって、実験したんですよ。ライブの映像を映して、それに向かってみんなで振るっていう。ハタから見たら何ともすごい光景で(笑)。

アイドルやアニソンのライブでは、ペンライトが欠かせない応援グッズだ=2015年12月20日、別宮潤一撮影
アイドルやアニソンのライブでは、ペンライトが欠かせない応援グッズだ=2015年12月20日、別宮潤一撮影 出典: 朝日新聞

関口 スマイレージは確か、無料の新譜発表会でした。スマイレージのファンには、自分たちでいかにその曲に合わせてペンライトの色を変えるかっていう文化があるんです。ホームページで告知をすると、ツイッターに「制御なんかされたくねえ」という書き込みがあったり。でも、やってみるとおおむね好評でした。

――自分なりに応援したいファンにとっては、制御されたらたまらないでしょうね。

串田 ペンライトにはフリーモードっていうのがあって、制御していないときは自分で色を変えられるんですよ。

関口 MCのときは全部フリーにして、お客さんが自分で推しメンの色に変えることもできますし、無線制御されてないコンサートでは、普通のペンライトとして使えます。スマイレージのライブでも、あえてフリーの曲をつくったり、1曲の中でもフリーの時間と制御する時間を区切ったりしました。

西野カナの「with LOVE tour」では、フリフラのカラフルな光がライブを盛り上げた=2015年、永谷知也氏(WILL CREATIVE INC.)撮影
西野カナの「with LOVE tour」では、フリフラのカラフルな光がライブを盛り上げた=2015年、永谷知也氏(WILL CREATIVE INC.)撮影

――実際にフリフラが使われたコンサートには、どんなものがありますか。

関口 ツアーで最初にやったのは「いきものがかり」です。オープニングのカウントダウンに合わせて点滅させました。最初は白だけで、曲に入ったときにフルカラーで100万色使って。初日は涙が出るくらい感動しました。ポール・マッカートニーさんの武道館公演では、スタンドをユニオンジャックに、アリーナを日の丸にしましたね。

暗転できるのがすげぇ

――そうした演出には、正確なブロック分けや、1席1席にライトを置くという超アナログな作業が必要ですよね。

関口 そうですね。ただ、いまはもうちょっと違うこともやっています。NFC(非接触通信技術)ってありますよね。FeliCaとかSuicaとか。あれと同じようなことをやっています。光り方やブロックとか、いろんな情報が入ったシールを座席に張るんです。ペンライト側にもNFCのリーダーが入っていて、お客さんがペンライトでシールにタッチすると、情報がペンライトに書き込まれる。席置きだとブロック分けが一通りしかできないですけど、これだといろんな演出ができるようになります。

フリフラの光が会場を埋め尽くした、JUJUのライブ=2014年10月12日、さいたまスーパーアリーナ、photo by Masayuki Noda
フリフラの光が会場を埋め尽くした、JUJUのライブ=2014年10月12日、さいたまスーパーアリーナ、photo by Masayuki Noda

――アーティストは喜びそうですね。

関口 アーティストが送信機能がついたLEDライトを持って、手元のボタンを押すと、それに合わせて一斉に色が変わるということもできますよ。あと、普通のペンライトと違って制御できるので、暗転できるんです。「暗転できるのが一番すげーよ」って言われたことがあります(笑)。

――音楽ライブ以外にも用途がありそうです。

関口 企業のパーティーですかね。うちの会社では、ビンゴの代わりに使いました。「いま光ってるひとは当たりです」みたいな。社員の結婚式でも使ったことがあります。今後は半径200メートルより広い屋外のテーマパークでもやってみたいです。街コンもいいですね。

この記事は8月20日朝日新聞夕刊(一部地域21日朝刊)ココハツ面と連動して配信しました。

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