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中国のスパコン「神威太湖之光」 漢字の意味を調べてみたら…
6月20日、中国のスパコン「神威太湖之光」が世界1位に選ばれました。中国の「国産CPU」が日本やアメリカを抜いたニュースは、注目を集めました。ところで、この「神威太湖之光」という名前。何やら勢いのある漢字が使われていますが、どんな意味なのでしょう? これまでの中国製スパコンの名前をたどってみました。
「神威太湖之光」の開発にも携わった清華大学地球系統科学研究センターによると、世界1位となった「神威太湖之光」の名前は「神威」「太湖」「之光」の3つに分けられます。
「神威」はスパコンのブランド名で、英訳すると「Sunway」になります。NECで言えば「PC98シリーズ」の「PC98」、アップル社でい言えば「Mac Proシリーズ」の「Mac Pro」のようなものです。
「太湖之光」はスパコンの名前で、「太湖」は、スパコンが開発された場所、江蘇省無錫市にある有名な湖の名前に由来します。「太湖」につけられた「之光」は、スパコンに希望が託されていることや、「Sunway(太陽の道)」の名前も連想されるそうです。
ちなみに「神威太湖之光」が1分間で計算できる能力は、全世界の72億人が電卓で同時に32年間の計算する量に匹敵するそうです。
中国の初代スパコンの名前は「銀河」です。日本語の「天の川」を意味します。中国のコンピューター開発の歴史は1950年代から始まります。当初はソ連から技術を学んでいました。1975年と1977年には、中央政府からの指示によって、中国国防科学技術大学などでスパコンの研究がスタートしました。
1983年12月4日、ついに初代スパコン「銀河1号」が長沙市で誕生します。初代は1秒に1億回以上の計算が可能でした(「神威太湖之光」は9京3000兆回)。その後も銀河シリーズは「銀河2号」「銀河3号」と進化し、10倍単位でスピードアップしていきました。
2003年11月、レノボが主体で開発した「深騰シリーズ」の「深騰6800」スパコンが、1秒に4.1万億回の計算スピードを記録。世界14位にランクインします。「深騰」はDeep Computerの「深い」と上昇の意味の「騰」の組み合わせで、レノボの総裁もその命名にかかわったそうです。「深騰シリーズ」の誕生によって、中国のスパコンは初めて世界から認知されるようになったと言われています。
その後、深セン市にある深センスパコンセンターで「曙光シリーズ」が開発されます。2010年には「曙光星雲」が、1秒に1000万億回を超えるスピードを記録し、世界2位になります。
「曙光」という名前は、日本語で「朝の光、暁の光」を意味します。
そして、2010年11月、中国国防科学技術大学と天津浜海新区で開発された「天河シリーズ」の「天河一号」が世界一に輝きます。
2013年6月には、広東省広州市スパコンセンターで開発された「天河二号」が世界1位になり、2016年6月まで6連覇を達成しました。
ただし、「天河二号」のCPUはIntel社に頼っていました。2015年にアメリカが中国への輸出を厳しく制限すると、中国は国産CPUの開発を強化します。
そして、今年6月、純国産のCPUを積んだ「神威太湖之光」が1位になります。国産スパコンの世界1位獲得は、輸出規制が産んだ結果でもあったのです。
ちなみに日本は、文部科学省が「京」の後継機となる「ポスト京」の2020年度の運用開始を目指しています。
総事業費は1300億円で、目標の計算速度は京の100倍ですが、「世界一」は狙わず省エネや使い勝手を重視する方針です。
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