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「自由飲酒党」「おおさか生鮮の会」 デパ地下でガチ過ぎる総選挙

AKB総選挙よりアツく、参院選より激しく。大阪・梅田の阪神百貨店で「食品総選挙」が始まり、話題です。食品売り場の152店が5つのグループにわかれ、「自由飲酒党」「おおさか生鮮の会」など、ほんものの政党に似てるような、似てないような名前を掲げ、お客さんに支持を訴えています。ポスターも本格的で、政見放送もネットで配信。企画の狙いや党首らの意気込みを聞きました。(朝日新聞大阪本社社会部記者・寺尾佳恵)
参院選が公示された6月22日の午前10時、食品売り場がずらりと並ぶ阪神百貨店地下1階で、5人の党首(仕入れ担当者)らが最初の演説を始めました。
立候補したのは「自由飲酒党」「おおさか生鮮の会」「甘党にっぽん」「日本惣菜党」「スイーツで元気にする会」の5党。
「おおさか生鮮の会」の西本和也党首(40)は、活きの良さをPRします。「私たちのスローガンは〝マンネリ食卓に新鮮力〟でございます。魚、肉、野菜、果物など、日々食卓に並ぶ商品ばかりを取り扱っております。いままでの経験と目利きで培ってきた鮮度に自信を持っております。大阪・梅田から日本一の鮮度をお届けして参ります」
「スイーツで元気にする会」の石原竜太郎副代表(37)は、「スイーツ政策、待ったなし。この閉塞感のあるご時世、つらいとき、しんどいとき、甘いものを食べると笑顔になります。笑顔を届けるスイーツを用意しております。清き一票、いや、うまき一票をお願いします」と買い物客らに支持を訴えていました。
関西で最も熱気があるといわれる阪神百貨店梅田本店の地下食品売り場で「食品総選挙」が行われるのは2013年に続き2回目。総選挙が始まったことについて、「選挙管理委員会」の山口淳史委員長(37)は、「参院選やAKBの総選挙など色々な選挙があったので、一緒に食卓の話題に上ればとの思いで企画しました」と言います。
1回目のお客さんの評価は上々。「いままで知らなかった商品を知れた」「党首や売場の店員さんが、一生懸命選挙活動をしている姿は活気があってよかった」「大阪らしくて楽しめた。食卓の話題に上って、家族で盛り上がった」と好評だったので、2回目を企画したそうです。
1回目よりも知恵を絞り、工夫も凝らしました。1回目は「生鮮党」「惣菜党」「和菓子・銘店党」など堅苦しい印象の政党名でした。そこで2回目は、親しみやすい名前を考え、選挙ポスターや政見放送などもつくって、リアリティーを追求しました。
投票は簡単。阪神百貨店食品売り場の各店舗で配布している投票用紙に、それぞれの党に所属している店の名前や投票理由を書くだけ。投票した人が名前や住所を書いて応募すると、焼き菓子セットが当たります。
年齢に制限はなく、子どもからお年寄りまで投票できます。選挙権年齢が18歳以上に引き下げられたのを記念し、「大人への第1歩。選挙にも関心を持ってもらいたい」と18、19歳の投票者には鼻のケアの体験チケットが当たるダブルチャンスも用意しました。目標は投票率アップで、1回目の約8千票を上回ることをめざします。
1回目の総選挙で第1党となったのは、洋菓子売り場でした。その洋菓子売り場の流れを受け継ぐ「スイーツで元気にする会」が、AKB総選挙の指原莉乃さんと同様に2連覇を狙う一方、わずかの差で敗れて前回第2党に甘んじた「日本惣菜党」も激しく追い上げていて、火花を散らしています。
各党首らに総選挙の戦い方と意気込みを聞きました。
「スイーツで元気にする会」の石原竜太郎副代表(37) 一押し商品「セバスチャン・ブイエのタルトレット」
「疲れているとき、しんどいときに食べたらほっこりするのがスイーツ。一押しは圧倒的な人気を誇る、『クラブハリエ』のバームクーヘンではなく、あえてタルトレットにしました。フランスの伝統的なお菓子をセバスチャン・ブイエが現代風にアレンジし、色々な味が楽しめます。絶対に1位を守ります」
「日本惣菜党」の石原正人党首(42) 一押し商品「阪神名物いか焼き」
「日々忙しい方が多く、本格的な味を手軽に買えるお総菜のニーズは高まっています。名物のいか焼きはもちろん、『元祖ちょぼ焼き』のちょぼ焼きや『浪速のお好み亭』の野菜焼きなど、阪神梅田本店にしかない商品をアピールしたい。前回スイーツに負けたのが悔しいので、各店の人気商品を集め、総合力で勝ちにいきます」
「おおさか生鮮の会」の西本和也党首(40) 一押し商品「肉の匠いとうの国産黒毛和牛ステーキ切り落とし」
「魚、肉、野菜、果物、漬けもの、練り物、豆腐など、毎日新しいものをおすすめできるのが私たちの強みです。国産黒毛和牛ステーキには希少部位のミスジがゴロゴロ入っています。最近、若い人はあまり料理をしないようですが、選挙権も18歳に引き下げられたので、これを機に新たな層を取り込んでいきたいと思います」
「甘党にっぽん」の澤孝弥党首(29) 一押し商品「たねやのとらやき」
「普段甘いものを食べない〝無糖派〟層にPRしたい。昔に比べて甘さ控えめの商品が増えています。とらやきは『あん』を包む生地がふわふわなのが特徴です。和菓子は地味だと思われがちですが、まずは知ってもらい、第1党になって世界にアピールしたいです」
「自由飲酒党」の松井理志党首(40) 一押し商品「和洋酒売り場のワイン『シュマン ダンジェリ カベルネ ソーヴィニヨン』」
「党名に『酒』が入っていますが、和洋酒のほか、塩やしょうゆなどの調味料、コーヒー、紅茶、つくだ煮、ヨーグルトなどの銘店売り場でもあります。起きてから寝るまで、どこかでご堪能いただける商品をそろえています。幅広いカテゴリーを扱っているので、無党派層から特定の支持政党がある人までオールターゲットで挑みます」
ツイッターやフェイスブックには「食品総選挙も波乱の予感⁈ 1位がどこになるのか、ワクワクします」「大阪やなぁとは思うけど、自由飲酒党には飲酒権の18歳引き下げは反対だぞと言っておきたい(^◇^;)」「これはヤバいwww参院選どころじゃなくなったぞ、これは。自由飲酒党いいなあ。本家はアレだけども」といったコメントが。参院選以上に気になる人もいるようです。
ユーチューブでは政見放送を配信中(https://www.youtube.com/watch?v=wmUZ3WddI8c)。各党首らが、熱い思いを込めて書き上げた原稿をもとに、党の魅力をPRする気合の入れようです。
「国民の信ならぬ、食品の真を問いたい」と阪神百貨店の広報担当者。投票は参院選投開票日の7月10日まで受け付け、開票結果は7月中旬ごろに発表の予定です。
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