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元ガオレンジャーが語る、ヒーロー道 「タバコも買い食いもやめた」
小さい頃、「戦隊もの」のヒーローに憧れを抱いた人も多いはず。一方で演じる役者は、そのイメージを守るためどんな努力をしていたのでしょうか。2001年に始まった21世紀最初の作品「百獣戦隊ガオレンジャー」で、リーダー役のガオレッド役で主演した金子昇さん(41)に聞きました。
ガオレンジャーは「オルグ」と呼ばれる悪と戦うヒーローです。金子昇さん演じる獅子走は、獣医師として活動していたある日、「パワーアニマル」という正義の野獣(動物型のロボットのような形をしています)に認められて、ヒーローとして活動を始めます。
ガオシルバー役として、朝ドラ「マッサン」に主演した玉山鉄二さんも出演していました。子どもだけでなく母親世代にまで人気は広がりました。
人気が出るにしたがって、放送開始直後はプライベートで金子さんを見つけたると寄ってきていた子どもたちの態度が変わってきたそうです。
「最終回に近づく頃になると、子どもたちが近寄らなくなりました。お母さんが声をかけてくれても、その後ろで震えて出てこない。崇拝というか、恐れ多いというか、そんな感覚だったんですかね」
そんな尊敬のまなざしで見つめる子どもたちを裏切るわけにはいきません。金子さんはヒーローのイメージを守るために気をつけることが増えていきます。
「駅までの道すがらアイスなんかを食べたくなるんですけど、買い食いは良くないなと我慢するようになりました」
「外でたばこも吸わなくなりました。飲食店では周りに大人しかいないことを確認して吸ってました。撮影が早めに終わって飲む時は、酔わないようにしてましたね。夜の7~8時だと、まだ塾帰りの子どもがいるかもしれないので」
日常の小さな行動についても、常に「子どもが見ている」という意識を持っていたという金子さん。
「子どもたちにマネされても嫌だし、がっかりさせたくないという思いからです。ガオレンジャーは僕にとっても大事だったので、その思いが自然とそうさせたのかもしれないですね」
このガオレッド役で広く顔を知られるようになった金子さん。ですが「ヒーローからのスタートは、逆にあとが苦しいかもしれない」と言います。
「ヒーローのイメージがついちゃうこともありますし、犯人役をやってもどう楽しんだらいいのかわからなくなる。勧善懲悪のドラマで、ヒーローはやっぱり楽しいですよ」
15年たったいまもガオレンジャーは「僕にとっては財産であり宝。それをなくしたら僕の半分くらいはなくなっちゃう感じ」と断言します。
このスーパー戦隊シリーズは今年40作品目を迎えました。作品ごとにカラーがありますが、ほかのヒーローと違うのは、合体するなど、メンバー全員の力を合わせないと使えない必殺技があること。
ガオレンジャーでも、ガオレッドがメンバーから信頼を得られず、チームが分裂しかけるピンチがありました。それでも最終的には仲直りして、力を合わせて戦う成長物語でもあるのです。
ガオレンジャーの金子さんや玉山さんを始め、スーパー戦隊シリーズ出身の俳優はたくさんいます。特にいま20代の人がはまったであろう時代には、スターを輩出しています。
「忍者戦隊カクレンジャー」(1994年放送開始)でニンジャブラックを演じたケイン・コスギさん。「超力戦隊オーレンジャー」(1995年放送開始)でオーピンク役だったさとう珠緒さん。「星獣戦隊ギンガマン」(1998年放送開始)では、照英さんがギンガブルー役でした。
戦隊ものから得たことの一つに、金子さんは俳優としての基礎があると言います。「ミスをしたらこっぴどく怒られました。撮影の現場を一から学び、どんな苦労があるのかも教えてもらいました」
そしてヒーロー出身者の特徴として「戦隊芝居」があります。「戦隊もの出身者はみんな普通のドラマをやると『戦隊芝居』って言われるんですよ。1年間やるので抜けないんですよね。体に染みついてる」
「例えば、普通に走って止まればいいのに、止まったら片方の肩を前に出して、肩を入れるんです(笑)。僕は戦隊ものが大好きで見ていたので、やりたくてしょうがなかった。今でもドラマの現場であえてやってますね。それが味になって楽しいかなって」
ガオレンジャーでの経験が今の金子さんを作っていると言っても過言ではありません。自身も小さい頃からヒーローものが大好きでした。
「仮面ライダーや戦隊もの、ウルトラマン。小学校の途中まではいつも見てました。戦隊ものはバトルフィーバーJの時代でしたね。上京してからも、バイトから朝方帰ってご飯を食べながら星獣戦隊ギンガマンを見てました」
今でも「ガオレンジャーが好きだった」と声をかけられると言います。ヒーローというイメージを一般の人はずっと持ち続けています。「ヒーローという肩書は一生ついてくるでしょうね。その肩書を裏切るようなことをしてはダメ。そういう意味では一生ヒーローかもしれないですね」
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