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国会議員「裏の勢力図」 たばこvs受動喫煙防止?仁義なき議連バトル

【たばこ】vs【受動喫煙防止】、【歌舞伎】vs【大相撲】、国会議員の「議連」を擬人化してみると…=グラフィック・米澤章憲
【たばこ】vs【受動喫煙防止】、【歌舞伎】vs【大相撲】、国会議員の「議連」を擬人化してみると…=グラフィック・米澤章憲

目次

 「政治家なんて、みんな同じでしょ?」。参院選だと言われても、いまいちローテンションなあなた。通な観察ポイントをご提案します。「議連」です。議員連盟の略で、国会議員の自主的な集まり。勉強会やサークルといった感じです。とある業界の応援だったり、支援者へのアピールだったり。どんな議連に入っているのかを見ると、議員一人ひとりの「顔」が見えてきました。面白い議連のご紹介を兼ねて、3番勝負を考えてみました。(朝日新聞記者 阪田隼人、原田朱美)

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【たばこ】vs【受動喫煙防止】

 吸う権利か、吸わされない権利か。一見対立する議連を見つけました。どちらも自民党の議員がつくったものです。どっちの力が強いのでしょう?

たばこ(会員数約280人)
受動喫煙防止(会員数約70人)

 数では、圧倒的にたばこ議連の勝ちでした。たばこ議連は、2013年に発足。目的は「零細かつ高齢化しているたばこ販売者の生活を守る」です。設立趣意書を読むと、たばこは「多大な財政貢献をなしている社会的に重要な消費財」と、自負心がチラリ。

たばこvs受動喫煙防止=グラフィック・米澤章憲
たばこvs受動喫煙防止=グラフィック・米澤章憲

 一方の受動喫煙防止議連は、11年に発足しました。健康被害の防止を掲げます。ある衆院議員は「たばこ議連はたばこ農家や財務省とつながりが深い議員、受動喫煙防止は医療とか厚生労働系の議員が多い」と解説します。同じ政党の議員でも、どの議連に参加するかで、その人の背景が出るんですね。

 議連は、ひとつの党の議員だけでつくるものと、複数党の議員が参加するものがあります。受動喫煙防止議連は、自民党のものとは別に、超党派版もあります(約60人)。二つの受動喫煙防止議連を単純に足すと、約130人。それでもたばこ議連の半分以下です。

実は五輪の一大課題

 実は、たばこは東京五輪の一大課題です。国際オリンピック委員会(IOC)は「たばこのない五輪」を目指しています。過去の開催国に比べ、日本は禁煙・分煙対策が遅れています。五輪で海外から多くの来訪者が予想されるなか、二つの議連はいま、受動喫煙防止策を決める法律をめぐり、まさに対決中です。

「公共施設では禁煙」を掲げる受動喫煙防止議連と、「禁煙ではなく分煙」を訴えるたばこ議連。お互いの主張を掲げ、どこで決着するのか調整中とのことです。さて、決着はどうなるでしょう?

【歌舞伎】vs【大相撲】

 伝統対決です。 大相撲は、かつて起きた八百長問題をきっかけに、「早期正常化を求める議連」として発足しました(11年)。その後、日本相撲協会の努力を受け、「発展を求める議連」に名前を改めました。現在の会員数は約80人。力士を激励するために、相撲部屋にも時々訪れているようです。

 歌舞伎振興議連は、14年に発足しました。会員数は相撲より少し多めの約100人。ただ、設立の背景は違います。歌舞伎では、かつての「タニマチ」も、いまは減ってしまったのだとか。議連は、「歌舞伎の支援役」を自負しています。こうした文化や産業の変化も、議連から透けて見えます。

大相撲vs歌舞伎=グラフィック・米澤章憲
大相撲vs歌舞伎=グラフィック・米澤章憲

【ゲートボール】vs【グラウンドゴルフ】

 シルバー界のエンタメ対決です。昔は、高齢者といえばゲートボールでした。議連もブームと同時に作られ、「数十年前からある」そうです。「議連杯」の大会まであります。現在会長を務める船田元衆院議員は、「大会に議員が顔を出し、トロフィーを渡すと参加者との距離が縮まる。政治活動の一環でもある」と話します。

 ただ、最近は競技人口が減っていて、合わせて議連の会員数も減少しています。一時期は100人ほど会員がいましたが、現在は約70人。日本ゲートボール連合も「何とか今、声かけて入ってもらうようにやっている」と気にしています。

ゲートボールvsグラウンドゴルフ=グラフィック・米澤章憲
ゲートボールvsグラウンドゴルフ=グラフィック・米澤章憲

 グラウンドゴルフの人気も、影響しているかもしれません。最近は「ゲートボールより楽しい」という高齢者も多いとか。議連の発起人は「支援者が『グラウンドゴルフが生きがい』だと言っていた。高齢者の応援になるかなと思って議連をつくった」そうです。ただ、「正直、特に要望されないし、課題もないので、活動はとほんどしていないです……」。

なのに、議連の会員数は増えています。わずか3年前の発足ですが、発足時の51人から、現在は125人と会員も急増中。さすが、議員の皆さんは高齢者の動向には敏感ですね。 

ざっと数百団体、全体像は謎

 議連は、ざっと数百団体あると言われています。 ボーイスカウト議連(165人)があれば、ガールスカウト議連(77人)もあります。一院制国会の実現を目指す議連(309人)や、中選挙区制復活を目指す議連(86人)は、議論がすっかり下火になったからか、最近はあまり活動していないそうです。

ガールスカウトvsボーイスカウト=グラフィック・米澤章憲
ガールスカウトvsボーイスカウト=グラフィック・米澤章憲

 こうして議連の種類や活動状況を見るだけでも、議員の活動がなんとなく見えてきます。ただ、議連は個々の議員が思い立ってつくるもので、今どんな議連がどのくらいあるのか、全体像は誰にもわかりません。ホームページで所属する議連を掲載する議員もいますが、全員ではありません。

中選挙区vs一院制=グラフィック・米澤章憲
中選挙区vs一院制=グラフィック・米澤章憲

今回、記者は個々の議連に取材をして、一部ですが政治家の「個性」をうかがい知ることができました。政党の枠組みから離れ、議員の個性が出やすいのが議連の良いところ。選挙の時、私たちは議員の個人名を書きます。オープンにしてくれると、もっと選びやすくなると思うんですけどね……。

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