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中国の同性愛カップル、命がけの裁判は何を残したか? 弁護士に聞く
LGBT(性的少数者)への偏見が根強い中国で、同性愛者のカップルが結婚を認めるよう訴えた裁判がありました。4月13日にあった判決は敗訴でしたが、同性愛がタブー視されている中国で波紋を広げました。裁判では何が争われたのか。今後の中国社会に与える影響は何か。担当弁護士に話を聞きました。
2015年6月23日、同性愛カップル孫文麟さん(男)と胡明亮さん(男)が湖南省の長沙市芙蓉区民政局で結婚を申し込みましたが、「結婚は男女しかできない」という理由で拒否されました。
孫さんは不服を申し立て、民政局を上訴しました。焦点は『中華人民共和国婚姻法』のなかにある「一夫一妻」の解釈です。孫さんと担当の石伏龍弁護士によると、一夫一妻は多夫多妻と対応する概念で、必ずしも男女を指しているわけでないと言います。「男男、女女、男女」すべてが夫妻になれて、結婚は基本的な人権であると指摘しました。
2016年1月に長沙市芙蓉区裁判所が訴えを受理しましたが、4月13日に敗訴の判決が下されました。しかし、石伏龍弁護士は、法廷で審議されたこと自体が歴史的な出来事だと強調。「現在の出来事一つ一つはやがて歴史になります」。
上海の大手新聞グループ「東方報業集団」に属する澎湃新聞の報道によると、4月13日の裁判では、記者を含めて、200人近くが傍聴しました。
またニュースの書き込み欄や、中国版ツイッター微博のコメント欄では、必ずしも同性恋愛や同性結婚を賛同しなくても、カミングアウトした2人の勇気にエールを送る人も少なくありません。
「彼らを太陽の下に立たせることだけ、同妻という暗雲を無くすことができる」
「ある言葉を引用します:『失敗だと知りながらも、未来の成功のために戦います』」
「正直に言うと、騙さず、同妻を作らずということだけでも、すごいことだと思います」
「尊敬すべき二人です。愛を尊重し、結婚と子宮を騙さない。よい人だ!もしあらゆるGayが勇敢で、原則とルールを守り、理解と支持する人が自然と増えるだろう」
「中国ではまだ同性結婚が法律で認められていません。多くの同性愛者は家族のために異性結婚をし、子供を産んだのですが、中国で初めての同性結婚の権利の試みです」
一方、中国社会では、同性愛者の結婚である「維権問題」とともに、同性愛者の妻たち(同妻)の問題も浮上しています。
青島大学医学院の張北川教授や上海大学社会学部の劉達臨教授の研究によると、中国における男性同性愛者は約2000万人いると推測されています。そして90%以上の男性同性愛者は、社会的なプレッシャーにより、異性結婚を選択します。結果、中国では少なくとも1600万の同性愛者家庭が存在し、1600万人の妻がいることになります。
ハルビン工業大学人文学院社会人類学の研究チームによると、同性愛者の妻つまり「同妻」たちは、9割以上夫からの肉体的な暴力を受けたり、あるいは無視されたりする精神的な暴力を受けていることが、明らかになっています。
「同妻」たちは無償で子孫を残す「伝宗接代」の道具になってしまい、弱い立場の同性愛者よりも、さらに弱い立場に立たされています。
多くの同性愛者はいまだにカミングアウトしにくい中国。一度、カミングアウトしたら、もう元の世界に戻れないためです。
中国政府は、同性愛に対して厳しい姿勢を取っています。2016年2月に若者の同性愛をテーマにした『上瘾』というネットドラマは、若者の間に一定の人気がありましたが、メディアを管理する「中国国家新聞出版広電総局」の規制により、国内での放送が禁止されました。
石伏龍弁護士によると、今後の裁判の行方は、まだ分からないそうです。しかし、二審の弁護を頼まれたら、担当したいそうです。
「たとえ彼らは今日の裁判を勝ったとしても、未来に勝つのは、必ず私たちです」
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