お金と仕事
鴻海会長、関羽の大ファンだった 謎の金色マフラーにのぞく素顔
シャープを買収する台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業を一代で築き上げた、郭台銘(テリー・ゴウ)会長。経営者としての実力だけでなく、あるファッションアイテムにも注目が集まっています。スーツの上からのぞく金色のマフラーです。そこには郭会長の生い立ちと思いが秘められていました……。
マフラーをよく見ると、「忠義仁勇」と「関公故里」の文字が見られます。
「関公」とは、三国志でおなじみの関羽のことです。関羽は山西省出身で、中国ではその忠義が語り継がれており、民間では敬称として「関公」と呼ばれるほど慕われています。歴代の皇帝から庇護を受け、各地でに「関帝廟」が建てられ、神として信仰されています。
郭会長は1950年に台湾に生まれましたが、両親は山西省から来た「外省人」です。つまり、関羽と同じ出身地である「同郷」。そして、会長は関羽の大ファンであることも有名です。
2008年に再婚した際、結婚の日を関羽の誕生日である7月26日に選んでいます。また、2013年には鴻海が1億台湾ドル(現在のレートで約3.4億円)以上をかけて、山西省の祖廟の関羽像を台湾に迎え入れ、3週間ほど巡遊させています。
金色のマフラーには関羽が大きく関係しています。マフラーの謎を、台湾と中国大陸の「関公」精神を普及している団体に聞きました。
台湾関公文化協会の紹介によると、関羽は財神でもあり、金運アップという意味で、金色が経営者などに愛用する人が少なくないそうです。
山西省の世界関公文化博覧会執行事務総長・閻林甫さんは、この金色マフラーは2013年の関羽像の台湾巡回と関係していると指摘します。巡回の際、関帝祖廟から関羽像を迎えるために、いろいろな儀式が行われました。その時の儀式のシンボルの一つが金色のマフラーだったのです。
金色や黄色のマフラーは、中華民族の共同祖先である黄帝、炎帝を祭る際にも使われています。閻さんによると、関羽はすでに神格され、「関帝」と呼ばれているため、金色のマフラーが使われたようです。
通常、祭祀活動の金色マフラーは「関公故里」の文字しかありません。今回のシャープとの晩餐会で、鴻海の郭会長がシャープの高橋興三社長にかけた金色のマフラーには「忠義仁勇」の文字が書かれていたと報道されています。
閻さんは、ここに会長の思いを読み取ることができると言います。
「企業の成功には信仰が不可欠。会長は関羽精神の『忠義と誠信』をもって、シャープの再建と鴻海のグローバル戦略展開に挑みたいという意図があるのではないか」
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