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北海道新幹線に「小さなH5系」がひっそり登場 清掃機に託した思い
3月26日に開業した北海道新幹線。もう一つの「小さなH5系」がひっそりとデビューしていました。
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3月26日に開業した北海道新幹線。もう一つの「小さなH5系」がひっそりとデビューしていました。
3月26日に新青森―新函館北斗間で開業した北海道新幹線。淡いグリーンに紫色の帯が入った「H5系」車両が話題です。しかし、開業に合わせて新幹線の駅に「小さなH5系」がひっそりとデビューしていました。その正体は、新型車両の色を精巧に再現した床洗浄機とスイーパー(除塵機)。ツイッターでは「かわいい!」などと話題になっています。
26日に開業した新函館北斗・木古内・奥津軽いまべつ駅。この3駅にはそれぞれ床面を清掃するためのスイーパーと自動洗浄機が備え付けられています。目を引くのがその色。どちらもH5系と同じ色なのです。
ツイッターでは「物凄くかわいい。欲しい!」などと写真付きで紹介したつぶやきが2千件以上リツイートされました。
この清掃用機械は特注品なのでしょうか。導入の狙いは何でしょうか。関係する業者に取材しました。
3駅の清掃業務を受託しているは、JR北海道のグループ会社「北海道クリーン・システム」(札幌市)。同社によると、これはやはり通常の機械にJR北海道の許可を得て特別な塗装を施した特注品でした。
同社の担当者は「北海道新幹線の成功を願った取り組み」「お客様へのおもてなし」を導入理由に挙げます。さらに、この機械に利用客の視線が集まることで「接触事故を防ぐことができる」「従業員のモチベーションアップ、マンネリ化防止、緊張感の持続にもなる」と説明しています。
スイーパーと自動洗浄機の本来の色は白やグレーでした。これを北海道クリーン・システムからの依頼を受けて、H5系色に塗り直したのが、鉄道車両のヘッドマークや方向幕などを製造している「日本孔版LD」(旭川市)でした。
「かなり頑張って作りました。本当に大変な作業でした」。こう振り返るのは橋本将社長(57)。当初はフィルムを貼ることを考えていたそうですが、それはできませんでした。「清掃用の機械なので、汚れがつきにくい素材になっていました。フィルムを貼ろうとしてもはがれてしまう。諦めてスプレーガンで塗料を吹き付けることになったんですが、これも大変でした」
機械の外装は特殊な素材でできていて、塗料を何度塗ってもはじいてしまいます。東京のあるメーカーが開発したプライマー(下塗り用の塗料)を使ってようやく塗装ができました。「でもメタリックカラーでしたからね。塗装面はデコボコしていますし、塗る人によって色が違ってくるんですよ」
考えた結果、メタリック部分の塗装はプラモデル作りを得意とする若手の男性社員に一人で担当してもらうことに。紫色の帯は社員総出で仕上げました。橋本社長は「システマティックなことは何にもない、手作業の『匠の仕事』でした」。そしてこう語ります。
「3歳や5歳の子のなかには、大きな新幹線を見てもよくわからないという子がいるのではないでしょうか。もっと小さなこのH5系と同じ色の機械を見てくれると、車体がどういう色になっているのかよくわかってもらえると思います。そうしてこれからも新幹線に乗ってくれるのかなと期待しています」
北海道クリーン・システムの担当者は「清掃業界やビルメンテナンス業界の注目度アップ、地位向上につながれば」と話しています。
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