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カミングアウトでグラビア断られた過去 同性婚タレントが怒りの叫び
レズビアンを公表し、同性婚挙式をしたタレントの一ノ瀬文香さん。カミングアウトしたことでグラビアを断れたことも。同性婚の法制化を目指し、活動を続けています。
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レズビアンを公表し、同性婚挙式をしたタレントの一ノ瀬文香さん。カミングアウトしたことでグラビアを断れたことも。同性婚の法制化を目指し、活動を続けています。
国内の7.6%を占めるとされるLGBTなど性的少数者の人たち(電通ダイバーシティ・ラボ調べ)。東京都渋谷区などが同性カップルを「パートナー」と認める制度が昨年から始まるなど、理解が広まってきていますが、法的に同性婚はまだ認められていません。レズビアンを公表し、芸能人同士で初の同性婚挙式をしたタレントの一ノ瀬文香さん(35)。カミングアウトしたことでグラビアを断れたこともあったそうです。現在、同性婚の法制化を目指し、多くの人に関心を持ってもらえるよう活動を続けています。
「日本は差別がアメリカとは違って、分かりにくい形で出ているんですよね。裏で悪口を言われる、学校だと先生がいない所で『オカマ』だと笑われる。陰湿で目に見えにくいからこそ、『じゃあないものにしよう』となる。だから同性婚の法制化が進みにくい」
2月末に東京・新宿2丁目のゲイバーで開かれた一ノ瀬さんの自叙伝「ビアン婚。」の出版を記念するトークイベント。一ノ瀬さんは、ゲイバーを強制捜査した警察にゲイが抵抗し、暴動に発展した1969年のストーンウォール事件を引き合いに、同性婚をめぐる日米の差を語りました。
事件後、アメリカでは同性愛者の権利獲得を求める運動が各地に拡大。昨年6月、連邦最高裁が同性婚を容認する初の判断を出しました。
日本の自治体でも、同性カップルを公的に「パートナー」と認める動きは出てきています。東京都渋谷区では昨年、全国初の同性パートナーシップ条例が成立。区が発行した証明書をもつ同性カップルは家族用の区営住宅に入居できたり、不動産会社で家族として住居を借りたりできようになりました。世田谷区や三重県伊賀市でも同性カップルを認める制度が誕生しています。
しかし、同性婚の法制化には慎重論もあり、実現していません。一ノ瀬さんは昨年4月、女優兼ダンサーの杉森茜さん(29)と結婚式を挙げましたが、提出した婚姻届は受理されませんでした。その理由は「女性同士を当事者とする本件婚姻届は、不適法であるから、受理することはできない」というものでした。
結婚関係が法的に認められていないので、同性カップルは一部の行政サービスを受けるのが難しいのが現状です。税の配偶者控除を受ける▽相続権を得る▽遺族年金の受給者になる――などといった権利は認められていません。
一ノ瀬さんは「同性愛者は好きになった相手が同性だったというだけ。それなのに法律、社会の方が差別をするっていうことが間違っている」。アメリカで同性婚実現を推進する団体「Freedom to Marry 」代表のエバン・ウォルフソン弁護士は、一ノ瀬さんとの対談で「国がLGBTの人たちを差別しているのは明確。陰で差別をしている人たちを無くしていくことは時間がかかりますが、政府と法律は差別のない方に味方すべきです」と話します。
一ノ瀬さんは、2009年にレズビアンをカミングアウト。テレビ出演や各地での講演会を通じて、LGBTの人たちが抱える問題を訴え、多様性が認められる社会を目指しています。今回、自叙伝を出版したのもその一環です。
レズビアンを公表後、「カミングアウト」を理由にグラビア撮影の仕事を何回か断られたという一ノ瀬さん。「自分でも想定はしていたけど、やっぱり残念だった」。それでも、「レズビアンを公表しても、求められるようになろう」と仕事の原動力にしていったと振り返ります。
「上から言われたことを受け入れなきゃいけない文化が日本には昔からある。私はそれがすごく間違っていることだと思っているので、同性愛者やトランスジェンダーの人たちも含めた社会全体が幸せに暮らしていけるよう、一人ひとりが自分の頭で考えてほしい」
こう話す一ノ瀬さんは、婚姻届が不受理になった後、杉森さんとともに同性婚法制化を政府や国会に勧告するよう日本弁護士連合会(日弁連)に人権救済を申し立てました。「同性婚ができないのは憲法の法の下の平等に反する」と主張しています。
人権救済を支援する弁護団によると、申し立てには現在、同性愛者などの人たち457人が参加しています。一ノ瀬さんは、「裁判という形を取る前に、まず同性婚について世の中で議論していきたい。その議論が、法制化へと自然につながればいいなと思っています」と話しました。
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